FLY HIGH

真山マロウ

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邂逅

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 頭のすみずみ、それらしき影を探す。お店のお客さんは大半が女性で、男性は記憶に残りやすい。だったら学校関係? でも、これだけ印象的な見た目なら、どこで会ったとしても忘れなさそうだけど。

「……すみません」

 ともかく謝っておく。そのくらい自分の脳みそに自信がない。

「ぼくこそ、ごめん。悠乃に恩返しがしたかっただけなんだ」
「へっ? 恩返し?」

 予想外の単語であっけにとられる。その人は、風になびく春の野花のように優しくほころんだ。





(なんだったんだ、いったい……)

 休憩後、仕事に戻っても、さっきのことが頭から離れない。

『恩返しがしたかっただけ』

 やわらかな声と、まろみのある笑顔がよみがえる。けど突然そんなこと言われても、なんのことだか。そもそも、あの人にだって心あたりがない。

 ここ数か月をふり返る。大学は授業にでて帰るだけ。サークル等にも所属してなくて友達ゼロ。なのに、あの人は私のことを知っていた。もしかして、もっと昔の知りあい? 高校? 中学? 小学? 幼稚園……より以前は、ほとんどなんにも覚えてないけど。

 いずれにしても、どんなトラブルがあるかわからない世の中だ、用心しておくに越したことはない。と、気をひきしめた次の日の休憩中、またもや同じように彼が現れた。

「もしかして学生さんですか」

 どこで会いましたっけ、とストレートにきくのは失礼すぎると思い、遠まわしに探りをいれる。

「違うよ」
「じゃあ、このあたりで働いてるとかですか」
「違うよ」
「うちのお店のお客さま……じゃないですよね?」
「うん、違う。それより、そんなにかしこまらないで。もっと気楽にしてよ」

 賛成。同年代っぽいし、そのほうが私も肩がこらなくていい。

 敬語がとり払われると「嬉しいな。なんだか友達みたいだ」と彼の口角が持ちあがった。昨日も今日も、この人はよく笑う。そして、その笑顔を見るにつけ、どうしても悪い人には思えない。しかも、しまいには「悠乃の役に立ちたいんだ。たとえば夢を叶える手伝いとか」とまで言いだす始末。

 てか、夢て。

「そうだ、名前」

 なんて答えればいいのかわからなくて、話をそらす。

「すごい申し訳ないけど、教えてもらっていいかな」

 自分が忘れてるだけかもしれないくせに、ずうずうしく要求。すると今しがたまで晴れやかだった表情が嘘みたいに、さっと曇った。

「ぼくの名前は……」

 目を泳がせて言いよどんだあと、ぽつん。

「シロ」
「えっ、シロ?」
「……うん。シロ」
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