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序章
第2話: 『魔法』と『手首のナンバーズ』
しおりを挟む母との面会を終えて自宅に帰宅したとき、部屋の壁掛け時計は20時20分を指し示していた。病院の面会時間は限界でも19時までのため、ひなみはそこから晩御飯の材料を買いにスーパーに行ってから帰宅するのが日課になっている。
「やっべ…思ったより遅くなっちゃったなぁ。」
マンションの6階に住むひなみは重たい買い物袋を持って、長い階段をわざわざ登っていかないと自分の部屋まではたどり着けない。買い物袋をドサッと玄関に下ろすとローファーを脱ぎ捨て、廊下を渡ってリビングの電気をつける。
「んー。やっぱ家が一番落ち着くわ。よっしゃ晩御飯作るかなー。」
玄関に下ろした買い物袋をキッチンまで引きずりながら運んで持ち上げる。メニューはささっと食べられるうどんにするべく、買ってきたネギをまな板の上で少し大きめに切って鶏肉と一緒に鍋にいれて煮込む。
「麺つゆで下味付けてっと…。ん?つむぎからメッセだ。今日の夜ご飯何食べてんの…か。『何ちゃって鳥なんばんうどんだよー』と。やっべ…うどん茹でないと…。」
出来上がった完成品と一緒に撮った自撮りをつむぎにトークに送信して、遅い晩御飯を取る。我ながら料理が出来るあたしはすごいと思う。きっと未来は立派なお嫁さんになるんだよね!うん。彼氏いない歴イコール年齢だけどもね。
ご飯を食べ終え、洗い物を済ませて休憩するためにリビングのソファーの上に転がって軽く伸びをする。そのとき自分の指に付いて外れない金属の輪が目に止まる。
「よく見たらあたしに似合ってんなーこの指輪。なんか取れなくても良いような気がしてきたなー。いやポリスっちに届けるよ?このまんまじゃ泥棒みたいじゃんね…あたし。」
独り言を言いながら、目線を指から腕に持っていくとなんか薄っすらと黒の文字で数字が刻まれているのが分かる。えっ…こんなのあたし書いたっけ?
「なんて書いてんだろ…13…かな?つむぎがマッキーペンソーで書いたんかな?まー意味分からないからいっか。風呂入れば落ちるっしょ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ひなみはシャワーを浴びながら自分の腕を見ながら焦っていた。
「嘘だ…なんで落ちないのー!結構ガチで擦ったよ?なんで…油性!?油性か。」
今すべてが解決した。正直何にも解決してないけど油性はマジで強いからダメ。腕に数字書いてるとか意味分からなすぎな子でしょ。あー何とかして隠したいなー。
「あ、そうじゃん。つむぎの腕にも明日数字書いたろ。」
この日は結局のところ、あたしは指輪よりも腕に書かれた謎の数字が気になってしまい夜しか眠れなかった。そして翌日・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
朝起きて伸びをしながら、壁掛け時計の時刻に目をやる。寝ぼけたまま目を擦りながら見た壁掛け時計の時刻は朝の8時25分。ん?嘘だよね。学校8時45分からだったような!?
「やばい遅刻する!!」
慌てて服を脱ぎ捨て、洗面台で顔を洗う。走って自分の部屋まで戻り、ハンガーにかかった制服を羽織って、スカートをよろけながら履く。制服につけるリボンは片手に、化粧ポーチは学校カバンに放り込んでマンションの扉から飛び出す。
「鍵閉めてっと…つむぎに電話っと!!もしもしつむぎ?」
『ひなみ。駅で待ってんだけどまだー?』
「起こしてよ!つむぎ!何で起こしてくれなかったのー!」
『は?いや私、お前の目覚まし時計じゃないんよ。』
「冷たい!!」
『いや遅刻覚悟でひなみのこと待ってるだけ私優しくない?』
「優しい!優しい!あ!駅着くよ!うわっぷ!」
走ったまま人に衝突して顔を上げると、そこには呆れた顔でつむぎが立っていた。
「前見て歩けし。ほら行くよ。」
「おはよーつむぎ!」
「はいはい。あの電車乗らないと完全に遅刻だよ。」
「やば、走ろう!つむぎ!」
「ひなみのことだからそう言うと思ったよ。」
そういうと、つむぎはダッシュで改札を抜けると階段を降りていく。え。はっや。つむぎちゃん足早すぎない?取り残された感すごいんだけど…。
「つむぎー待ってよ!早すぎるでしょ!!飛び乗るのは出来ればしたくないしな…時間が止まってくれればいいのになっ!」
そのとき、ひなみは周りの景色が止まったように感じた。駅のホームに向かう階段の最後の一段。そこで振り返ると風で舞った葉っぱが宙にとどまっていた。時が止まっているということだろうか。
「おー。つむぎが電車の前で止まってる…。んじゃ先に乗っておこっと。」
次の瞬間、時が動き出したのか前に向かって進んできてるつむぎと衝突した。
「痛っ!え…なんでひなみ。私の後ろに居らんかった?」
「ふっふっふー。見くびってもらっては困るなーつむぎ。」
「なんかウザ。」
「イタタタ…ほっぺつねらないで!!!!」
そして電車のドアが閉まり無事に駅を後にした。そのとき、つむぎはあたしの手首の数字を見て不思議そうに笑いを浮かべた。
「何その数字、『12』ってどういう意味よ。」
「つむぎさー。昨日あたしの腕に油性のマッキーでこれ書いたっしょ?え?12…。」
「書かねぇよ。私は幼稚園児か。」
「なんで…昨日は13だったような…。」
「ひなみ?」
「ううん。何でもない!」
このときはこのカウントの意味をあたしは分かっていなかった。これがゼロになったとき、まさかあんなことになるなんて予想すらしていなかったんだ。
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