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第ニ章: 生徒会選挙
第18話: 柏崎陣営作戦会議
しおりを挟む午後の授業が全て終わり放課後に共に選挙に向けた話し合いの約束のある柏崎さんの元へと足を運ぶ。彼女もすぐに準備を済ませ、共に喫茶店のある街を目指して行くことにする。
校門の前まで来たとき彼女は少しあたりを見回してため息をつく。何か落ち着かない様子がこちらにも伝わってくる。根は真面目だからこういう下校時に寄り道とかしたこと無いのかな。
「柏崎さん寄り道とかしたことないでしょ?」
「あるよ!あるもん。ただ凪沙以外とは初めてだけど…。凛音くんはよくしてそうな口ぶりだね?」
「乃愛や恭介とは良く遊んでるかな。」
「莉奈っちとはどうなの?」
「最近、付き…その質問の意図はなんなん?」
柏崎さんは小悪魔っぽく笑いながらこちらを見つめてくる。危うくボロをこぼすところだった。いやもしかするともう勘付かれたかもしれない。この笑いはそういうことだろうか。
こうして校門を出て住宅路地を進んでいく。柏崎さんは俺の後をそっとついて来ている。少し不安そうだけど気にして振り返ると小悪魔っぽい頬笑みが返される。
街に出ると安定に人は多い。どこも人だかりが出来ていてとてもこの雰囲気は好きにはなれない。
一方、柏崎さんは周りの店に目を輝かせてあっちこっちを忙しそうに見ている。なんか田舎から出てきた子みたいな動きしてるけどこれはこれで新鮮だから放っておこう。ついでに鼻で笑ってやろう。
するとこちらの視線に気付いたのか、彼女はそっと自分のバックを俺の背中に軽くぶつけてくる。すかさず反撃喰らうとは思わなかった。
そんな柏崎さんを誘導して喫茶アザレアまで足を運ぶ。喫茶店を目にした柏崎さんは感嘆の声を上げながらお店を見て、こちらを見て目を輝かせる。尊敬の目を向けられている。
そっと店の扉を開くとそこには店長の百目木モカが暇そうにカウンター席の椅子に腰をかけてのんびりしていた。来店をお知らせする鈴の音色でこちらに振り返ると店長は微笑みながら俺を見る。その後、柏崎さんに視線を向けると店長は俺の元に来て肩を掴む。
「お客様、当店での浮気はご遠慮ください。」
やっべ、この姉さん力強ぉ…肩の骨割れる!!
「違いますって!生徒会選挙の話し合いにここを使おうって話になってて!!」
「凛音くんこんなに素敵な彼女さんまでいたの…どうも柏崎紗菜子です。紫ノ宮さんとは同じクラスで凛音くんとは生徒会選挙攻略の協力関係にあるだけで付き合って無いですよー!」
「話拗らせそうだから黙っててね柏崎さん。」
なんとか店長さんの誤解を解き、膨れる柏崎さんを席に座らせて向かいの席に俺も座る。メニューをオーダーして、ぼーっとしている俺に対して柏崎さんは数枚のプリントの資料を差し出す。
内容はアンケートのようになっていて案の定、誓約のようなものには空欄が出来ている。これをどうしろと?
「凛音くんにも誓約考えて欲しいんだよね。ほら私だけだと視野が狭くなっちゃうし?」
「だと思ったが第一お前そんな言い訳する前にホントに考えたか?」
彼女は数秒黙ると舌をちょっと出して笑う。あっコイツマジで何も考えてないやつだ。ため息をついて申し訳なさそうに笑う彼女に言葉をかける。
「生徒会で一年間やったなら嘘でもなんか無いのかよ。」
「そんなのじゃ勝ち抜けないと思って…ありきたりなのは消していったら無くなっちゃって。」
「例えば?」
「あー…えへへ。」
「考えてないなお前。そんなの何でもいいんじゃないのか?」
「そういう凛音くんはなんか思い付いたの?」
「俺が生徒会長になったら全校の女子のスカート丈をあと数センチ短くする。」
「最低。女子みんな敵に回るよ!」
「冗談だ。でも大体の男子は全員味方するぞ。」
「そんな博打はしません。凛音くんも考えてないじゃん。」
「いやお前には言われたくないから。」
お互いに顔を合わせてため息をつく。名案は転がってないものか。
そんな中、頼んでいた飲み物が席まで運ばれてくる。店長はもの珍しそうにプリントを覗き込んで静かな口調で柏崎さんに話しかける。
「生徒会選挙か。私のときは学校の不満とかをヒントに誓約を作ったなー。」
「ってことは店長さんは生徒会選挙に出たことあるんですか?」
「うん。母校は君たちと同じだしね。生徒会長やったこともあるよ。」
さらっと驚愕の真実。この人、確かにお店の経営してるし頭は良いんだろうとは思っていたが。
店長さんの口にした言葉を柏崎さんは復唱しながら思考を巡らせているようだ。根は真面目なんだろうな。なんかいろいろ残念なのは分かったんだけども。
「学校の不満。私はあんまり気にしたこと無いかな。」
「いや柏崎ちゃんが分からなくても不満しか無さそうな男子が目の前にいるじゃないの。」
ちょっと店長さん。俺だって学校生活満足に過ごしてますよ。担任の理不尽なチョップを受けたり、強引な部長に振り回されたり、乃愛をからかっただけで本人から強烈なお仕置きを受けます。あれ、不満しかなくない?
「それなら力になれんこともないぞ。柏崎さん。」
「ホント!不満聞かせて!」
「そんなに楽しそうに不満聞くヤツいる?」
彼女は顔に満面の笑みを浮かべながら俺の口からこぼす学校の不満を聞きいれる。学校の設備不良などやさまざまなものが上がったがどれも決定打に欠けるというのがそれでもの現状であった。お互いに頭を抱えて意見を絞っていくが決まったのは案外シンプルな意見だった。
「学校施設の自由利用?こんなので良いの凛音くん?」
「屋上の立ち入り禁止とかいろいろ制限が厳しすぎるだろ?そこを自由にすればデメリットもあるだろうけど実現はかなり現実的な案になる。自由をもう少し尊重すれば近寄りがたい生徒会がフレンドリーな生徒会になるだろ?そしたら生徒会に興味を持ってくれる人も増えるかもしれんし。」
「うーん。屋上は無理でも『フレンドリーな生徒会』っていうキャッチコピーは強く出れるかも知れないね。それで進めていこうか凛音くん!」
柏崎さんはそういうと時計を見て立ち上がる。どこかへ行く用事でもあるのだろうか。
「凛音くんごめん。私これから凪沙のお見舞いに行かなきゃだから。」
「なるほど。じゃあ今日はここまでにしようか。」
「ありがとう。私一人だったらここまで来てなかったかもしれない。」
「そういうのは勝ってからにしましょう。今は出来ることを少しずつやっていくだけです。」
「それもそうだね。じゃあまた明日。凛音くん!」
「おう。」
そういうと彼女は手を軽く振りながら喫茶店を後にして行った。
あれ…アイツ地味に会計俺に押し付けてね?仕方なく彼女の分の飲み物代も会計で出してため息。
根は真面目で、どこか適当で憎めない同級生。柏崎紗菜子との生徒会選挙への共闘はまだ始まったばかりであった。その裏で一つの想いが動いていることにはまだ俺らは気付いていなかったのである。
「ねぇ柊くん。」
後ろから店長のモカさんに声をかけられて振り返る。笑顔で高額メニューを指差してニッコリしている。
「百目木スペシャルはいかが?」
「ご馳走さまでした。」
喫茶店のドアを閉めて出て行く。誰がぼったくりパフェなんて頼むものか。
追記、紫ノ宮さんから後日聞いた話によると百目木スペシャルはクソ不味いらしい。
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