君と見た空は一つの星しか見えなくて

黒百合

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第ニ章: 生徒会選挙

第19話: 差出人不明の手紙

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 柏崎さんとの第一回ミーティングの翌日。いつも通りの目覚ましのアラームで目が覚める。
今日はまだ水曜日。やっと週の半分が終わったと言えるだろうが、ここ最近の時間の経ちがとてつもなく長いものに感じる。というのも生徒会選挙の手伝いを行うと言ってから変に充実した生活になってしまっている気がする。お金の出費も激しいのだ。
 学校の準備を足早に進めていつもより気持ち早めに家を出る。今日の放課後には空き教室で行う生徒会選挙の参加メンバーの顔合わせがあるため、朝はその準備を柏崎さんと行うことになっている。というのは昨日の夜遅くに柏崎さんから来たメールにあった情報で正直すっぽかしてやろうかなとか思ったが、喫茶店でのお金を返してくれるそうだったのでやむなく行ってやることにしたのだ。
 対して急な変更にも関わらず朝の待ち合わせの時間を早めてくれた紫ノ宮さんはマジ天使である。彼女の住まいのマンションの前ではもう既に彼女は立って待っていた。あくびをしながら眠そうにしている彼女を見てホントに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「紫ノ宮さんおはよう。悪いね付き合わせちゃって。」
「おはようございます。いえ、柊くんのほうが大変そうだもん。」
「なんて優しいんだ紫ノ宮さん。目から水が…。」
「泣いてるの!?」
「いやこれあくびしたときに出てきたやつ。」
「またからかったなー!柊くんのバカぁ!」

 彼女は頬を赤く染め、軽く手を握るとポカポカと俺の肩を叩く。こういうしぐさが可愛いからついついからかっちゃうんだよね。絶妙に肩が痛いのは昨日モカさんに肩握り潰されそうになったからだろう。
 紫ノ宮さんと冗談を言いつつ、いつもより時間の早い通学路を歩いていく。少し早いだけなのに人はほとんどいない通学路にホントに今日は学校あんの?とまで不安になる。なかったらこの上なく嬉しい。だって生徒会選挙の顔合わせの必要性が見出せないんだもん。
 いつもなら生徒会の人たちが義務的に挨拶をしてくれる校門前にも人はほんの数人しかいない。さすがに媚びを売るために生徒会に入り、こき使われるのは人生に一回の高校生活を無駄にするのと同等のことであると思ってしまっている俺の思考はなかなか払拭されない。
 だから柏崎さんが一年間生徒会で過ごしてきたという事実は尊敬に値する。彼女は彼女なりに頑張って努力しているのは分かる。ただときどき抜けてて心配になることはあるが…俺を強引に振り回す行動力を生徒会全体に向けることさえできれば生徒会は引っ張っていけると部外者の俺からしても確信が持てる。
 そして下駄箱に来ると俺の上履きの上にそっと一枚の便せんが置かれているのが遠目に分かる。これってまさか…いやいやこんな原始的な方法で呼び出しなんてされる訳無いでしょ。今や携帯で呼び出せる時代なのよ?
 それを見た紫ノ宮さんは口を抑えて青い顔をする。ラブいレターじゃないと思うよ。第一、俺のことが好きってかなり物好きよ?あ。ごめん紫ノ宮さん。

「柊くんに殺害予告!?」
「嫉妬してくれたのかなっていう俺の幸せ妄想返してくれる?」

 手に取ってその手紙を見ると差出人は書かれておらず、書かれていたのは待ち合わせ場所でもなく。今回の選挙に関するお願いのようなものだった。
 紫ノ宮さんは横から覗き込みながらその内容を不安そうに口にする。どこか丁寧な口調で書かれたその内容は常識のある人からの差し出しで間違いなさそうだった。

「えっと…『柏崎紗菜子を生徒会選挙の会長戦に出させないでください。これは彼女のためにもやめるべきだと思います。彼女に本気で協力してあげるつもりなら、どうか彼女が傷付く前に止めてあげてくれませんか。彼女はそんなに強い人じゃない…お願いします。あなたにしか頼めないことです。』だって。」
「なんだよ…それ。せっかく一歩を踏み出したっていうのに…柏崎さんの努力を否定すんのかよ…。」
「とにかくこれを書いたのが誰であったとしても本人には黙っておいた方がいいよね。」
「ああ。知ったら絶対迷いが生まれちゃうだろうし…。ただこれを書いた人も悪い人に思えない。根拠は無いけど悪意は感じない文面に思わないか?」
「そうだね…でも私は二年生で三年生を差し置いて会長を狙うって時点で面白く思わない人もきっと居ると思う。そういうのはきっと無くならないと思う。これ預かっても良いかな?」
「良いけどどうするの?」
「恭介くんなら情報通だからきっと誰が書いたか分かるかもしれないよ。」
「いや。さすがのアイツも筆跡鑑定みたいなことは出来ないと思うんだけど?」
「差出人はとりあえず私が調べてみるから柊くんは柏崎さんに何があっても守れるようにしてあげて。」
「いや…でも。」
「差出人に話を聞いてみる必要はあると思う。でも柊くんが動いたら柏崎さんは一人で戦うことになっちゃうから…横に味方が一人居てくれるってだけで結構心強いんだよ?」

 紫ノ宮さんは桜色の髪をふわりと揺らしてはにかみ笑いを浮かべる。彼女のその言葉には重みがあって思わず背中を押される。今回は差出人探しは任せることになっちゃいそうだけど彼女は彼女なりに協力したいと思ってくれている。その好意は受け取ってあげたい。
 そのまま教室で待つ柏崎さんのもとに足を運ぶ。迷うことなく俺は今まで通りに柏崎さんのサポートを続ければいい。俺は平然を装い、柏崎さんに声をかけたのだった。

「おはよう柏崎さん。」
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