20 / 28
第ニ章: 生徒会選挙
第19話: 差出人不明の手紙
しおりを挟む柏崎さんとの第一回ミーティングの翌日。いつも通りの目覚ましのアラームで目が覚める。
今日はまだ水曜日。やっと週の半分が終わったと言えるだろうが、ここ最近の時間の経ちがとてつもなく長いものに感じる。というのも生徒会選挙の手伝いを行うと言ってから変に充実した生活になってしまっている気がする。お金の出費も激しいのだ。
学校の準備を足早に進めていつもより気持ち早めに家を出る。今日の放課後には空き教室で行う生徒会選挙の参加メンバーの顔合わせがあるため、朝はその準備を柏崎さんと行うことになっている。というのは昨日の夜遅くに柏崎さんから来たメールにあった情報で正直すっぽかしてやろうかなとか思ったが、喫茶店でのお金を返してくれるそうだったのでやむなく行ってやることにしたのだ。
対して急な変更にも関わらず朝の待ち合わせの時間を早めてくれた紫ノ宮さんはマジ天使である。彼女の住まいのマンションの前ではもう既に彼女は立って待っていた。あくびをしながら眠そうにしている彼女を見てホントに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「紫ノ宮さんおはよう。悪いね付き合わせちゃって。」
「おはようございます。いえ、柊くんのほうが大変そうだもん。」
「なんて優しいんだ紫ノ宮さん。目から水が…。」
「泣いてるの!?」
「いやこれあくびしたときに出てきたやつ。」
「またからかったなー!柊くんのバカぁ!」
彼女は頬を赤く染め、軽く手を握るとポカポカと俺の肩を叩く。こういうしぐさが可愛いからついついからかっちゃうんだよね。絶妙に肩が痛いのは昨日モカさんに肩握り潰されそうになったからだろう。
紫ノ宮さんと冗談を言いつつ、いつもより時間の早い通学路を歩いていく。少し早いだけなのに人はほとんどいない通学路にホントに今日は学校あんの?とまで不安になる。なかったらこの上なく嬉しい。だって生徒会選挙の顔合わせの必要性が見出せないんだもん。
いつもなら生徒会の人たちが義務的に挨拶をしてくれる校門前にも人はほんの数人しかいない。さすがに媚びを売るために生徒会に入り、こき使われるのは人生に一回の高校生活を無駄にするのと同等のことであると思ってしまっている俺の思考はなかなか払拭されない。
だから柏崎さんが一年間生徒会で過ごしてきたという事実は尊敬に値する。彼女は彼女なりに頑張って努力しているのは分かる。ただときどき抜けてて心配になることはあるが…俺を強引に振り回す行動力を生徒会全体に向けることさえできれば生徒会は引っ張っていけると部外者の俺からしても確信が持てる。
そして下駄箱に来ると俺の上履きの上にそっと一枚の便せんが置かれているのが遠目に分かる。これってまさか…いやいやこんな原始的な方法で呼び出しなんてされる訳無いでしょ。今や携帯で呼び出せる時代なのよ?
それを見た紫ノ宮さんは口を抑えて青い顔をする。ラブいレターじゃないと思うよ。第一、俺のことが好きってかなり物好きよ?あ。ごめん紫ノ宮さん。
「柊くんに殺害予告!?」
「嫉妬してくれたのかなっていう俺の幸せ妄想返してくれる?」
手に取ってその手紙を見ると差出人は書かれておらず、書かれていたのは待ち合わせ場所でもなく。今回の選挙に関するお願いのようなものだった。
紫ノ宮さんは横から覗き込みながらその内容を不安そうに口にする。どこか丁寧な口調で書かれたその内容は常識のある人からの差し出しで間違いなさそうだった。
「えっと…『柏崎紗菜子を生徒会選挙の会長戦に出させないでください。これは彼女のためにもやめるべきだと思います。彼女に本気で協力してあげるつもりなら、どうか彼女が傷付く前に止めてあげてくれませんか。彼女はそんなに強い人じゃない…お願いします。あなたにしか頼めないことです。』だって。」
「なんだよ…それ。せっかく一歩を踏み出したっていうのに…柏崎さんの努力を否定すんのかよ…。」
「とにかくこれを書いたのが誰であったとしても本人には黙っておいた方がいいよね。」
「ああ。知ったら絶対迷いが生まれちゃうだろうし…。ただこれを書いた人も悪い人に思えない。根拠は無いけど悪意は感じない文面に思わないか?」
「そうだね…でも私は二年生で三年生を差し置いて会長を狙うって時点で面白く思わない人もきっと居ると思う。そういうのはきっと無くならないと思う。これ預かっても良いかな?」
「良いけどどうするの?」
「恭介くんなら情報通だからきっと誰が書いたか分かるかもしれないよ。」
「いや。さすがのアイツも筆跡鑑定みたいなことは出来ないと思うんだけど?」
「差出人はとりあえず私が調べてみるから柊くんは柏崎さんに何があっても守れるようにしてあげて。」
「いや…でも。」
「差出人に話を聞いてみる必要はあると思う。でも柊くんが動いたら柏崎さんは一人で戦うことになっちゃうから…横に味方が一人居てくれるってだけで結構心強いんだよ?」
紫ノ宮さんは桜色の髪をふわりと揺らしてはにかみ笑いを浮かべる。彼女のその言葉には重みがあって思わず背中を押される。今回は差出人探しは任せることになっちゃいそうだけど彼女は彼女なりに協力したいと思ってくれている。その好意は受け取ってあげたい。
そのまま教室で待つ柏崎さんのもとに足を運ぶ。迷うことなく俺は今まで通りに柏崎さんのサポートを続ければいい。俺は平然を装い、柏崎さんに声をかけたのだった。
「おはよう柏崎さん。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる