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第ニ章: 生徒会選挙
第17話: 運命共同体
しおりを挟む紫ノ宮さんに連れられて行った喫茶アザレアに行った翌日。朝から眠気を堪えられずに下駄箱であくびをしながら上履きを履く。一人で登校していたときに比べて彼女と登校し始めてからは少し朝も遅めになったため助かっている。はずだが眠いのだ。
これもいつもと変わらない日常だなぁと幸せを噛みしめていると今正直、顔をあまり合わせたくない少女とばったり教室の前で遭遇してしまう。厄介扱いして申し訳ないけどこの子のおかげで昨日は散々頭を使わせられたのだからな。
「りんりん!おはよ!って何でそんな嫌そうな顔するの!?」
「あーすいません。顔に出てました?」
「否定してよね!りんりんそういう所だぞ!」
頬を膨らませ、あからさまに膨れてる態度を取るあざとい柏崎さんを放置し紫ノ宮さんと教室へ入る。それでも柏崎さんは諦めることなくついてくる。ここまでついて来られると何となく分かるのだ。こいつが面倒ごとを持ってきてそうなのは…。
「ちょっとりんりんに折り入ってお願いがあるんだけど…。いいかな?」
「嫌と言っても聞かせるおつもりでしょう?」
かばんを机に置いてついて来ている彼女の方を見る。バレたかと言わんばかりに少し萎らしくなった態度をしながら深く頭を下げる。何、なんかフラれたみたいなんだけど…。
そして顔を上げると申し訳なさそうに笑って彼女はお願いを口にする。
「今日実は選挙の取材があるんだけど。りんりんも私の応援演説者だからインタビューに出席しなきゃいけなくなっちゃって…。」
「柏崎さんちょっと待ってくれない?」
「どうしたの?」
何が疑問なのと言った表情を浮かべる彼女に対して焦りを感じていた。
俺は応援演説をするとは言っていない。だが昨日小淵沢は確かに言っていたのだ。応援演説するんだってな。と。俺が知らないうちに何かが動いている。まさかとは思うがコイツ…。
「応援演説者って本人の了解なく登録することって可能なのか?」
「いやそれはないよ。でも小淵沢先生が知っているのは私が伝えたからだよ。」
「まだ取り消しは出来るのか!?」
「とりあえず今日は強引にでも連行しろって上からの指示だから、りんりんごめんね。」
すると廊下に複数人の人間が立ち止まる。腕には緑色の腕章を着けている。それだけでその一帯が何者なのかと何をされるか悟る。これは連行される流れだ。
咄嗟に逃げ場を探すが二つの扉からは既にその一帯が入って来ており、教室の中に後退させられる。ここで捕まる訳には…。しかし咄嗟の俺の行動を読んだのか柏崎さんは俺の腕を捕まえる。
「協力して…りんりん!」
「紫ノ宮さん…俺はもうダメだ。強く生きるんだよ…。」
そのとき柏崎さんに腕を引っ張られて引きずられる俺の前に来たのは、呆れた顔を浮かべた乃愛だった。
「何その永遠の別れみたいなクソ芝居。莉奈困ってるからやめろ柊。」
救世主の登場に期待したのも束の間、廊下に待機していた複数人の生徒会メンバーが俺の左右から腕を掴む。なんか本格的に容疑者扱いじゃない?俺。
乃愛は俺を見るなりプッと吹き出しながら莉奈に話しかける。
「なんかアレちょっと面白いね莉奈。」
「乃愛ァ!!」
悲痛な叫びも届かず自由を奪われた俺は柏崎さんの後に続き廊下を歩かされる。後ろには緑色の腕章をつけた連中が居るので逃げられずさすがに諦めるしかない。
黙って廊下を歩くこと数分、いよいよ奴らの城とも言える一室『生徒会室』の目の前まで来る。柏崎さんは扉を開いて俺を中に招き入れる。そこにはカメラを首からぶら下げた人と選挙管理委員会の方がマイクを持って待っていた。
俺は柏崎さんとともにパイプ椅子に横並びに座らせられ、マイクを持った選挙管理委員に向き合う。落ち着いた態度の選挙管理委員の方はマイクをこちらに向けて話し出す。
「今回会長に立候補した柏崎さんと応援演説者の柊さんですね。今回の選挙に置ける意気込みをお聞かせください。まずは柊さん。なぜ柏崎さんを会長にしようと思ったんですか?」
苦手なアドリブだ。だが何かしら答えようとしたとき、言葉に詰まった。
俺…柏崎さんのこと知らない。学年二位で…大人しいって印象があって…。どう答える…ここで彼女を落とすような発言は出来ない。そうしたら当たり障りのない答えをするしか…。
「あー。彼女は積極的な一面も兼ね備えています。きっとこの学校をより良く引っ張っていける。そう思ったので彼女の応援演説を行うことになりました。…えっと…まだなんか必要ですか柏崎さん?」
「あ。うん。大丈夫…。」
最後の一言を彼女に小声で振ったが彼女に先ほどまでの気迫はない。彼女の膝の上に置かれた彼女の手は微かに震えている。そのときハッと昨日の紫ノ宮さんの発言が脳裏をよぎった。柏崎さんは日ごろは静かな性格。それが本当なら彼女はやはり積極的には接することが難しいのかもしれない。
選挙管理委員の方はメモを取って今度は柏崎さんのほうに質問を飛ばそうとする。こんな調子ではインタビューで転び、会長になるなど夢のまた夢になってしまう。
ぶっちゃけ俺にだけ横暴で積極的な彼女に対しての好感度はゼロに近い。けれどコイツの意志は尊重してあげたい。親友を想ってここまで頑張っているのに背中を押してやれないのは協力するって俺の発した言葉に反する。
柏崎さんはなんとか必死に取り繕ってその場を凌いだがインタビューのここまでで彼女はきっと他の会長候補に大きく劣ってしまうかもしれない。
彼女とともに生徒会室から出るとホッとした表情で彼女は深呼吸をしてこっちに微笑みかける。彼女の握った拳は悔しそうにも震えているのが分かる。そりゃまだ始まったばかりとは言え、俺も揃って大したことは言えてない。だけど投票するのは生徒だ。そのうちの選挙管理委員会は一部でしかない。だったら…。
「柏崎さんまだ挽回出来ます。それには俺は柏崎さんのこと全然知らないし、多分それは柏崎さんもでしょ?一緒に戦うのに情報共有が出来てないのは不味いです。」
「確かにそうだね…でも嬉しかった。りんりんが私ならこの学校を良く引っ張っていけるって言ってくれたこと。例え嘘だとしても私にとっては戦う理由になったよ。」
「あと言っときますけど無理に積極的に振る舞うのやめた方が良いですよ。それが柏崎さん自身の重荷になっているのは俺よりも自分がよく分かっているでしょう?」
「はは…いやぁ騙せないな。りんりんは。」
照れ臭そうに前髪をそっといじりながら柏崎さんは目をそらす。それから彼女は自分の頬を自分でパシッと両手で叩くと深呼吸を一つついて手を差し出す。
「改めて自己紹介するね。私は柏崎紗菜子。親友を安心させるために生徒会長になりたい。それも今年じゃなければ意味がないから、性格はどっちかっていうと消極的…でも頑張るから。私に力を貸してください。凛音くん。」
「俺も今回のインタビューでの責任はしっかり取りたい。こうなった以上必ず柏崎さんを勝たせる。だからその積極的な態度はしっかりとその時まで封印しててね。」
「うん…じゃあ共に会長を目指そう。」
差し出された手を握り返して握手を交わす。課題は山積みだが彼女が積極的に振る舞えるようにこの短期間で特訓することが必要になる。あとは生徒会長になった際の誓約的なやつについてだ。それを決めないと誰からも支持が得られない。柏崎さんはまだ俺のスカウトで必死だったためそこまでの段階にまでシフト出来ていないのが現状だろう。
こうして少し長かった朝の時間は終わって授業に入る。朝が長く感じたので授業時間もかなり長く感じる。…ああ滅びてしまえ生徒会選挙。そう思いながら憂鬱になりながら教室の窓から校庭を眺めていた。それでもまだ長い一日は始まったばかりだった。
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