探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

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第肆話-映画

映画-5

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 撮影は順調に終了し、長四郎,燐,里奈の3人は里奈と恵一が住んでいるタワーマンションに来ていた。
「凄いなぁ、ここに2人で暮らしているの?」
 長四郎は玄関の広さ、部屋の多さに呆気にとられながら発言する。
「いえ、そんな」謙遜する里奈。
 そんな話をしていると、里奈が近くの部屋のドアを開ける。
「ここが兄の部屋です」
「ごめんね。撮影で疲れているのに、すぐに退散するから」
「いえ、終わったら教えてください」里奈は長四郎にそう言うと、自分の部屋へと移動した。
「ねぇ、何でお兄さんの部屋を見るの?」
 燐が目的を聞くと「そんなことより、ラモちゃんは家に帰らなくて良いのかよ」と逆質問で長四郎は答えた。
「え? あんた知らなかったっけ? 私の家、このタワマンの35階だから」
「へ?」
 間の抜けた声を出して、長四郎は口をあんぐり開ける。
「何、その顔」
「あ、いや。取り敢えず、ちょっと、出とってくれ」
「なんで?」
「ラモちゃんさぁ~里奈ちゃんと友達なんでしょう」
「そうだけど。それが何?」
「しかもここは男性の部屋だろ。アダルトなものが出て来た時にその秘密を守れるのか?」
「そ、それは・・・・・・」
 正直、口が堅いと言えないとは言えないタイプであると自覚している燐は答えに詰まる。
「隠せないとみたな。だったら、直ちに去れ!!!」
「はい!!!」
 長四郎の言葉を受け、燐は踵を返し恵一の部屋を出て行く。
「よしっ!!」長四郎は自分の尻を叩いて奮起させる。
 キャスター付きの棚を動かす長四郎。
 重いと思われた棚は簡単に動いた。
 棚の裏の壁にB4の紙にびっしりと、今までの殺人事件の記事の切り抜きが貼ってあった。
「マジかよ・・・・・・」
 まさか、恵一の失踪が連続殺人事件に関わっている事に驚きを隠せない。
 その時、ドアがノックされる。
「はい!!」そう返事しながら慌てて長四郎は、棚を元の位置に戻す。
「入っても良いですか?」
 里奈が許可を求めてくる。
「どうぞ」
 ドアが開くと、すっぴんでジャージ姿の里奈が部屋に入って来た。
「何か、手掛かりに繋がることありましたか?」
「いやぁ~なさそうだね」
 咄嗟に噓をつく長四郎。
「そうですか・・・・・・」下を向いて里奈は残念がる。
「役に立てなくて申し訳ないね。じゃあ、今日はこれで」
「ありがとうございました」
 長四郎は里奈が住んでいる部屋を出て、エレベーターホールで恵一の部屋にあった切り抜きについて考えていた。
 確かにあの撮影所に出入りしている業者否、里奈が撮影している映画に関係している人達が被害者の可能性があるのではないかと考えていると背後から強い衝撃が襲う。
「私を置いていくなんてどういうつもり?」振り向くと燐が仁王立ちしている。
「うるさいよ。近所迷惑」
 しぃ~っというジェスチャをしながら燐を注意する。
 長四郎はエレベーターの上ボタンを押して燐が乗るエレベーターを呼ぶと、先に長四郎が呼んだ下りのエレベーターが来る。
 長四郎が乗ろうとすると、燐に首根っこ掴まれ引き戻される。
「私を部屋まで送ってきなさいよ」
「ヤダよ」
「あん?」
 眉間に皴を寄せ、長四郎を睨む。
「分かりました。送らせて頂きます」
「宜しい」
 結局、下りエレベーターは上りエレベーターとなり燐の部屋へと向かうことになった。
 エレベーターを降り、共用廊下を歩き燐の部屋に向かう。
「ここよ」
 いきなり、部屋の前に立ち止まった燐は鍵を開け自分の部屋に入って行く。
 長四郎は中には入らず、部屋の前で燐が入るのを見届けると来た道を引き返そうとした瞬間、燐の部屋に引きずり込まれる。
 玄関に叩きつけられ、尻餅つく長四郎。
「痛たたたたた」
 立ち上がりながら自分を引きずり込んだ相手を確認すると燐であった。
「なんだ。ラモちゃんか・・・・・・」
「なんだって、何よ」
「いや、ラモちゃんの親かなと思って? というか、何んじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 玄関まで溢れたごみ袋の山を見て、長四郎は驚愕する。
「うるさいよ!」
「ご、ごめん」咄嗟に謝る長四郎。
「にしても、酷いなぁ」
「う、うるさいわね」
「ご両親は?」
「2人共、海外赴任中」
「えっ!! じゃあ、ラモちゃんここで一人暮らし?」
「そうよ。それより早く上がって。お茶くらい出すから」
「いや、帰るから」
「私の出したお茶が飲めないってか?」
「頂きます」
 長四郎は、足の踏み場もない廊下を突き進んで行く。
 先を行く燐リビングのドアを開けようとするが、ドアにゴミがひっかかり中々開かない。
「ったく」
 長四郎は引っかかっているゴミ袋をどかしたと同時に、黒い物体が壁を這って行った。
 その瞬間、長四郎の中でプツンっと何かが切れた。
「お茶はもういい!! この家にあるありったけのゴミ袋を持って来い!!!」
 長四郎のあまりの形相に燐は手を止め「は、はい!!」と返事をした。
 立場が逆転した燐は長四郎の指示のもと早速、リビングにドラゴンボールの如く散らばった空のゴミ袋を回収する。
 一方、長四郎はリビングに散乱しているカップ麵の容器、空になったコンビニ弁当のガラや使ったままで洗わず放置された食器そして、脱ぎぱっなしにされた衣服を見ながらどれから手を付けて行こうか思案を練っていた。
「集めてきました!!」燐は45ℓゴミ袋を長四郎に差し出す。
「もう遅いから貴様は、風呂入って、寝ろ!!」
 時計は深夜1時を回っていた。
「はい!! 後は宜しくであります!!!」
 燐は長四郎に敬礼すると、ソファーの背もたれにかけてあったパジャマと下着を取り風呂場に行く。
「マジかよ、あいつ・・・・・・」長四郎はその燐の姿を見て、少し戸惑う。
 何時ぞや人の家に転がり込んできた時、野郎臭かった長四郎の部屋を女性が憧れる整理整頓された部屋へと改造しかつ綺麗に行き届いた掃除を行っていた。
 この事が知りたい方は、第弐話・GW-7を参照ください。
 取り敢えず、手を動かせねばと自分を奮い立たせた長四郎はテーブルに散乱しているゴミを分別しながら片付けていくのだった。
 翌朝、遅刻ギリギリの時間に起きた燐は自室から出ると廊下に山住になっていたゴミ袋は無くなっていた。
 冷蔵庫に入っている市販のスムージードリンクを取りに行こうとリビングに入ると窓際で真っ白に燃え尽きた長四郎がいた。
「まだ、居たの?」
 燐は恐る恐る長四郎に近づく。
「居たじゃないよ」
 顔を上げる長四郎のその目には隈ができており、不敵な笑みを浮かべる。
「もしかして・・・・・・あれからずっと掃除を?」
 その問いかけに静かに頷いて返事する長四郎。
「あ、ありがとう」
「良いから学校の準備しろよ」
「あ、そうだった!!」
 燐はスムージーだけを取り、自室へ着替えに戻っていく。
「はぁ~」
 長四郎は深い溜息をつき、ゆっくり立ち上がり帰ろうと廊下を歩く。
 燐の部屋の前を通りかかったその時、長四郎の頭に空になったスムージーの容器が頭に直撃する。
「もう、いや!!!」
 廊下に長四郎の絶叫が木霊するのだった。


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