探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

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第肆話-映画

映画-15

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 それから世間は、三玖瑠里奈のニュースでもちきりであった。
 兄の恵一が遺体で見つかったと同時に、連続殺人犯として疑われているという事実が週刊誌にリークされたのがきっかけで、朝からワイドショーでひっきりなしに里奈のニュースが流れていた。
 勿論、里奈の芸能活動は休業に追い込まれ、学校にも行けずタワマンに引きこもっているらしい。
 そんな事を燐から聞いていた長四郎は今、里奈の所属事務所で事務所社長からしっ責されていた。
「あんたが余計なことをするから、こんなことになったんだ!!」
 事務所社長の怒号が応接室に響き渡る。
 それに負けじと隣の事務所から、電話の着信音がひっきりなし鳴っている。
「何か言ったらどうだ!!」
 長四郎は終始無言を貫いていた。
 何故なら、何を言っても自分のせいにされるかつ、下手な事を言えばそこで足を吸われ訴訟になったら一大事だ。
 念の為、録音、録画はしているが。
「おい、聞いているのか!! あんたがリークしたんだろ!!!」
 里奈の違約金がとんでもない額で、こんな支離滅裂な事を言うのかと思う長四郎。
「あんたがリークさえしなければなぁ!!」
 しまいには長四郎に事務所社長は、掴みかかってきたのだが、それでも長四郎は微動だにせず、前後に揺さぶられる。
「クソっ!!」
 長四郎をソファーの背もたれに投げつける。
 少し落ち着いたのか、自分が座っていた椅子に腰を下ろした。
「落ち着いたか?」長四郎はそう呟く。
「あ!?」
 2ラウンド目行くかと言わんばかりに事務所社長は身を乗り出す。
「俺の職業柄、胡散臭いのは分かりますが。あまり適当な事を仰るなら、こちらにも考えがありますから」
「な、なんだって言うんだ!!!」
 身構える事務所社長を見て長四郎は、ニヤッと笑みを浮かべるとそのまま事務所を出て行くのだった。
 ビルから出ると、燐が待っていた。
「終わったの?」
「ああ、見りゃ分かんだろ。このよれよれになった服を」
 長四郎は掴みかかれた際に、着崩れたジャケットを見せつける。
「はいはい。大変だったね」
 燐はさらっと受け流す。
「じゃ、行くか」
「うん」
 長四郎は燐をお供に、恵一が居た部屋に向かった。
 報道陣はだいぶ減ったが、記事が出た時は道路に報道陣がひしめき合っていた。
 そんな報道陣を尻目に、現場前に立っている制服警官に一川警部から許可を得ていると伝え、中に通してもらった。
「ねぇ、なんでここなの?」
 燐は恵一が潜伏していた部屋に来た理由を質問する。
「細かいことが気になる僕の悪い癖(杉下右京風)」
「何それ」
 そんな燐を無視しながら恵一が倒れていた部屋に入る。
 恵一の死因は、毒によるショック死であった。
 7人目の被害者・阿部フネに使用された毒物と同様のものだった。
 部屋からは使用されたナイフや紐、毒物が見つかり押収され全ての凶器から被害者達のDNAが検出された。
 今現在、捜査本部は恵一の遺書のウラを取る作業に追われていた。
 そして、恵一の司法解剖の結果、衰弱していたことも判明していた。
 それが長四郎は気になって仕方なかった。
 その疑問を解決する為、こうして部屋に来たのだ。
「ねぇ、何を探しているの?」
 きょろきょろと部屋を見回している長四郎に聞く。
「ラモちゃんは、風呂場に行って来てくれない?」
「え? 何で?」
「取り敢えず、変な物がないか探して」
「変な物って?」
「そうだな。風呂場には必要無い物とか」
「最初からそう言ってよ」
 燐は苦言を呈し、風呂場へ捜索に出た。
「クソガキが」
「何か言った?」
 長四郎の悪口が聞こえたのか、燐がドアから顔を覗かせて長四郎に言う。
「いえ、何も・・・・・・」
 愛想笑いを浮かべ誤魔化す長四郎。
「宜しい」と言い風呂場に消えていった。
 それからすぐに燐が長四郎を呼ぶ。
 長四郎はゴキブリでも出たかと思いながら風呂場に行くと、燐がとある物を指を指しながらキャッキャッと小躍りしている。
「これ、これ見て」
「うん?」
 風呂場の床に場違いなキーホルダーが落ちていた。
「これがどうしたの?」
「こ、これ私が里奈と一緒に買ったものなの」
 長四郎の二の腕を叩きながら説明する。
「だから、何よ。
風呂場に落っことしただけだろう」
「違う! 違うの!!!」
「何が違うの?」
「これ、買ったのは2ヶ月前なの!!」
「2ヶ月前?」
 最初の被害者・池元 知美が殺害されて以来、里奈はこの部屋に立ち入っていないと証言していた。
「それはマネージャーが殺されるより前か?」
「ううん、それより後」
「分かった」
 長四郎はそう言って、風呂場から去る。
「え? 押収しないの?」
 燐は付いて来ながら質問する。
「それは俺の仕事じゃない」
 長四郎はそう答えながらキッチンに入ると、冷蔵庫を開けると冷蔵庫の中身は、飲み物がびっしりと敷き詰められていた。
 長四郎はその中の紙パックの野菜ジュースを一本取り、賞味期限を確認する。
 日付は、2023年5月23日と記載されていた。
「ふ~ん」そう言って、冷蔵庫にしまう。
「何か分かったの?」
「なぁ、飲まず食わずの人間が冷蔵庫の中を満タンにしているのって、どう思う?」
「変だと思う」
 長四郎の問いに、率直な感想を伝える。
「変だよねぇ~」
 長四郎はそう言いながら、そっと冷蔵庫の戸を閉める。
「里奈のお兄さん、衰弱していたの?」
「そうだよ」
「監禁ってこと?」
「可能性はあるけど。トイレ問題がある」
「トイレ問題?」
「そう、どこの部屋にも糞尿がないんだよね」
「まぁ、監禁するなら普通、身動きできない状態若しくは、その部屋から出れないように細工するよね。でも、糞尿がないってことはそういうことは無かったんじゃないの?」
「それもそうだよな」
 やはり、拘束、監禁は自分の憶測にすぎないのか長四郎は頭を悩ますのだった。
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