探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

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第伍話-支援

支援-8

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 燐は長四郎から記者が住んでいるタワマンの前に張り込んでいるとの
連絡を受け、避難の為の荷造りをしていた。
 そろそろ、長四郎が迎えに来る時間だと思い時計を見ると丁度その時間を示していた。
 燐は慌てて、纏めた荷物の入ったキャリーケースと手持ちのバックを持って部屋を出た。
 長四郎に地下駐車場で待つようにと指示をされていたので、地下駐車場に向かう。
 エレベーターホールを抜けると、そこに一台のリムジンが停車していた。
 燐は、まさか、これじゃないだろうと思っていると後部座席の窓が開く。
「早く乗れよ」そう言いながら、顔を出す。
「えっ!? これで逃げるの?」
「逃げるってなんだよ。戦略的撤退と言え」
 そう言いながら、ドアを開け手招きしながら乗るよう促す長四郎。
 燐はドキドキしながら、リムジンに乗る。
 なんせ、リムジンにお乗車するなんて初めての経験で、田舎から初めて東京に出てきた学生のように車内の装飾や内装をキョロキョロと見回す。
「金持ちなのに、乗ったことないの?」
 長四郎は備え付けのシャンパンを飲みながら、話しかける。
「当たり前でしょ!! それに私、金持ちじゃないし」
「タワマンの上階に住んでいて、よく言うよ」
「そんな事より、どこに向かっているの?」
「どこって、言っていなかったけ?」
「うん」頷く燐。
「シェルターに向かう」
「シェルター?」
 そうこうしていると、長四郎の言うシェルターに着いたようだ。
 リムジンが停車し、運転手がすぐ様ドアを開ける。
「ありがとうございます」
 燐は運転手に礼を言い、降車するとそこは只の空き地だった。
「どうも。請求は、夫人にお願いします」
 長四郎は降りるや否や、運転手に伝えると「畏まりました」と返事をし、運転手はリムジンに乗り車を発進させるのであった。
「ねぇ、何もないじゃん!」
 長四郎の方を向き、文句を言う。
「何もなくて良いんだよ」
「え?」
「ラモちゃん。そのバックの中、見せて」
「嫌よ」燐は普段使いの手持ちバックを抱きしめる。
「そんなんいいから!!」
 長四郎はバックをもぎ取ると、バックの中身を漁り出す。
「ちょっと!!!」
 燐が殴りかかろうとしていた時、長四郎がバックから何かを取り出した。
「何これ?」
「何これ? じゃねぇよ。てか、俺の事、殴ろうとしたよね? ね?」
 燐は驚くと共に、長四郎に向けて拳を振り上げたままの状態であった。
「き、気のせいよ! ほら、その手に持っている機械を壊そうと思っただけ」
「苦しい言い訳だな。おい」
「ぐっ!!」
 下唇を噛んで、ぐうの音も出ないといった顔を燐は浮かべる。
「そんな事はさておき、これ、何だと思う?」
 長四郎は燐に機械を見せながら、問いかける。
「GPS?」
「ポンピーン!!」
「いつ、入れられたんだろう? てか、私、ストーキングされてる?」
「ラモちゃんをストーキングする奴なんて、よっぽどの○○○○だよ」
「んだと、コラぁ!!!」
 長四郎をいつもの如く燐は締め上げる。
「く、苦しいでやんす!! は、話を、話を聞いてください!! 親分」
 その一言で燐は、締め上げる手を緩めた。
「早く説明なさい」
「はい、これを仕込んだのは東の手先。
んで、仕込まれたのは俺達が、昼飯を食べている時だろうな」
「そんな・・・・・・」
「スクープ取るためには、手段を選ばないそういった所か」
「いやいや、感心している場合じゃないでしょ。てか、ホントにここにあるの? そのシェルターって?」
「ラモちゃんさぁ~」
 深い溜息をついた長四郎は、話を続ける。
「GPS付けられたまま、移動したら俺達の所在がバレちゃうでしょ」
「そんな事は、わ、分かっているし」
「ホントかよ」
「何よ! 不満でもあるわけ?」
「あるあるだけど、そんな事うぃ議論している場合じゃない。奴らがここに来てしまう」
 長四郎はそう言うとズボンのポケットからチャック付の小袋を取り出して、GPSの機械を入れ、足で地面に穴を軽く掘ると小袋を穴の中に入れて埋めた。
「これが回収されないことを祈って、行きますか」
「何処に?」
「シェルターだよ。付いて来な」
 長四郎が歩き出したので、燐もそれに付いて行く。
 空き地を出て30m程、歩くと一軒の洋風な豪邸が見えてきた。
 燐はこの豪邸がシェルターなのかそう思っていると、長四郎は豪邸のチャイムを鳴らす。
「ふ~じぃ~ん! あ~そぉ~ぼぉ~!!」
 長四郎が友達の家に来た小学生のように叫ぶと、門が自動で開いた。
「来な」
 それだけ言うと長四郎は、豪邸の敷地内に一人入っていく。
「待ってよ!!」
 燐も長四郎に続いて入る。
 でかい庭を歩き屋敷にたどり着くと、一人の老婆が出迎えてきた。
「いらっしゃい」
 長四郎と燐に笑顔を向けて、老婆は挨拶する。
「お世話になります」
 燐は頭を下げて老婆に世話になる旨を伝え、改めて老婆の姿を見ると確かに夫人ふじんという言葉が似合う女性だと感じた。
「いえいえ。それにしても久しぶりだね。長四郎」
「そうだな。ババァ。相変わらず、くたばる気配をみせてないようで何よりだよ」
「ちょっと! 失礼なことを言わないの!!」
 長四郎の頭を叩いて、燐は注意する。
「すいません。こいつが失礼なことを言って」
「良いのよ。いつもの事だから。さ、中に入って」
 夫人はそう言って、2人を屋敷に入れる。
「ひ、広ぉ~い」
 玄関の大きさに驚いて、燐は思わず感嘆の声を上げる。
「ふふっ、驚くのはまだ早いわよ」
 夫人はそう言って、長い廊下を歩いて行く。
「ねぇ、あの人、どういう人?」
 燐は夫人に聞かれないよう小声で長四郎に耳打ちする。
「おい、婆さん。ラモちゃんが、あんた何者だってよ」
「ちょっと!!」
「私が何者だって? そうねぇ~少しお節介なちりめん問屋のばあさんですよ」
「ちりめん問屋?」意味が分からず首を傾げる燐。
 ここで、水戸黄門を知らない読者の方に説明しよう。
 水戸黄門という作品はある程度、パターン化されていて大概、旅先で宿泊させてもらう家の町民や農民が悪代官とかに苦しめられているの。
 そんで、悪代官の悪事の証拠を風車の弥七やお銀、飛び猿とかに回収させて、それを受け取ると黄門様が敵陣地にカチコミかける宣言して、そん時に町民や農民に聞かれるわけ。
「あんた、何者?」って。
 その時に、こう答えるわけ。
「なぁ~に、少しお節介なちりめん問屋の隠居ですよ」って。
 ご理解頂けただろうか?
 気になった方は、水戸黄門を見よう。
 時代劇って結構、面白いからw
 以上、水戸黄門の解説でした。
 では、本編に戻ろう。
「だから、言ってるじゃん。若い子に、水戸黄門ネタは通用しねぇって」
「そんな事ないわよ。ねぇ?」夫人が燐に同意を求める。
「すいません。分かりません」
「ほらぁ~」
 長四郎は勝ち誇ったような顔をする。
「今の若い子に通ずるネタって何かしら?」
「知らねぇよ。鬼滅で良いんじゃね? 鬼滅で。対外、若い奴に話合わせようとするコンテンツの代表格だから。あれ」
「へぇ~そうなんだ」
 興味なさそうに夫人は返事をし、リビングの戸を開ける。
 リビングは広いのは当然として、豪華な内装かつ窓の向こうにはバルコニーがありそこから先は綺麗に刈り取られた芝生が広がる庭が大きな窓から見えた。
「あの、ここに1人で住んでいるんですか?」
 燐は夫人に質問する。
「今は、1人かな」
「今は?」
 夫人の言葉に引っかかりを覚える燐。
「ここはな、DVとかにあっている人が匿われるシェルターなの」
 長四郎は大きいソファーに座りテレビをつけながら、この豪邸の説明をする。
「そう。まぁ、今は閑古鳥が鳴いているんだけどね」
 夫人はキッチンに向かいながら長四郎の説明に補足を入れる。
「どうして探偵のあんたが、この施設の人と知り合いなわけ?」
「施設って。ここはあの婆さんの個人的な持ち家。公的な施設だと役所の人間にうっかり漏らされて、場所が割れる可能性があるだろう。あの婆さんはネットでひっそりと募集かけて、避難させているの。
んで、あの空き地が避難先の住所になっていて万が一、履歴を調べられてもここがバレないようになっているのよ。それで、俺が何で知り合いかっていうと、浮気調査の依頼者がどう見てもパートナーからDVを受けている人とかいるわけ。
で、心優しい俺はここを斡旋してあげているの。お分かり?」
「なんか、悪い業者の言い分にしか聞こえないけど」
「う、うるせぇ」
「はい、お茶が入りましたよ」
 夫人が人数分のティーカップとティーポットが載ったお盆を持って戻ってきた。
「ありがとうございます」
「良いのよ。それでこれが、長四郎に頼まれた資料」
 お茶を配ると同時に、長四郎に頼まれていたという資料を渡す。
「何これ?」
 長四郎の横に座り、燐も資料に目を向ける。
 その資料は、林野の口座から送金された口座の情報が記載されたものだった。
「これって・・・・・・」
「よくこの短時間の間に、ここまで調べたな」
「私を誰だと思ってんのよ」
 夫人はそう言いながら、紅茶を飲む。
「ここに書いてある名前って・・・・・・」
 燐の視線の先にある送金先の口座の名義人は、林野の同僚の源の名前が書かれていた。
「気づいちゃった?」
 長四郎はそう言いながら、不気味な笑みを浮かべるのであった。
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