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第漆話-能力

能力-9

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 この事件は世間を大きく賑やかした。
 キー局のマジテレビの番組かつヤラセで殺人事件を起こし、大問題に発展して国をも動かす一大事件になった。
 そして、この事件で手柄を挙げた一川警部と絢巡査長は警視総監賞を授与されることとになった。
 一方、事件を解決に貢献した燐は今、生徒指導室でリリと共に反省文を書かされていた。
 宿敵の熱血教師監視の下。
「はぁ~」
 燐は深い溜息をつき、窓から見える青空を眺める。
「おい! 羅猛っ!! 手が止まっているぞ!!!」
「ふぁ~い。すいましぇ~ん」
 人を怒らせる方法の一つ、鼻抜け声で燐は返事をする。
 熱血教師も燐の挑発には乗らず「うぐっ」と声を出し必死で怒りを堪える。
「良いから、早く書けっ」
 熱血教師はそれだけ言い貧乏ゆすりで怒りを紛らわす。
 燐はひたすら原稿用紙に「反省」の二文字を書いていく。
 リリはそれを見て今まで書いた反省文を消しゴムで消し、燐と同様に「反省」の二文字をひたすら書いていく。
 30分後、『出来ましたっ!!!』燐とリリは声を揃えて熱血教師に反省文を差し出す。
「よしっ」燐達の反省文にすぐ目を通す熱血教師。
 だが、「反省」という二文字で敷き詰められた作文なので熱血教師の顔はすぐに歪み燐達に視線を向けると、もうそこには燐達の姿はなかった。
 燐とリリは学校を抜け出し、近くのファミレスでお茶を楽しんでいた。
「いやぁ~スカッとしたね」リリは清々しく言う。
「しまった! あいつのマヌケ面を写真に収めとくのを忘れたぁ~」
「ホント性格悪いね」
「いや、そう言うリリこそ教師に裏拳をかます癖に」
「なっ、それは燐の為でしょ」
「い~や、リリは前々からムカついていたからそういうことしたんだ」
「ちっ、バレてたか」
 リリは悔しがるようにコーラを飲み、「そういえばさ」と話し始める。
「事件解決に導いたのは燐とあの探偵さんな訳じゃん。何で、反省文を書かせられるんだろう? 燐、あのバカな教師に何も言っていないの?」
「言ってない。てかさ、聞いてくんない?」
 燐は「探偵は女子高生と共にやって来る。」第伍話・支援-13で起きた事を話した。
 またそれかと思われるはずなので、簡潔に説明すると燐が事件の捜査に戻ろうとするのを止める熱血教師に金的キックをお見舞いしたのだ。
「マジで!?」
「マジ」燐はその一言だけ返す。
「だとしたら、今回の件も納得だわ」
「でしょ」
「でもさ、あんなに大きな事件になっているんだから。信用しても良いと思うんだけど」
「あの頭でっかちに、そんな考えはないよ。折角、融通の利く高校に転校出来たと思ったのに」燐はコップに入ったオレンジジュースをブクブクと泡立たせる。
「また、転校するの?」
「いや、しないよ。前の学校は不本意で退学になったんだから。リリもそんな感じでしょ」
「そうそう」
 燐は長四郎と初めて関わることとなった第壱話の事件で、事件解決に導いた燐は学園の名誉を傷つけたといういちゃもんをつけられ退学となった経緯があった。
 リリもそれに協力したという事で学園を追い出されそうになっていたタイミングで、燐から私立芸春高等学校に転校しないかと打診があり、転校したというわけだ。
 因みに私立芸春高等学校が変蛇内高校に名称変更した理由は、第肆話-映画で在校生が逮捕されたので私立変蛇内高等学校に変更したのだ。
「でも、良かったと思っているんだよね。私」リリは遠くを見つめる。
「私も」
 二人は互いの顔を見て笑いあう。
「ねぇ、あの探偵さんは何してるんだろう?」
「そうねぇ~長四郎は多分、お昼寝してるんじゃない」
「そうなの?」
「そうよ。貧乏探偵だから仕事もないからお昼寝~」
 燐はジェスチャーで長四郎の寝顔を再現する。
「何、その顔」リリは肩を揺らして笑う。
 燐も釣られて大きく高笑いが店に木霊した。

                                                 第漆話・完
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