探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

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第玖話-オニ

オニ-5

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「せいれぇぇぇぇつ!!!」
 熱血教師の号令で全学年の生徒が一斉に朝礼台に向かって走り出す。
 綺麗に朝礼台の前に綺麗に整列する。
 燐が所属する変蛇内高校は、運動会の練習の真っ最中だった。
 だが、一人の生徒だけは整列なんかせずゆっくりと朝礼台に向かって歩く。
 さながら、シャードームーンがカシャン、カシャンとゆっくり闊歩するようだった。
「また、お前かっ!! 羅猛っ!!!」
 声をひっくりしながらマイクで絶叫する熱血教師に、燐は気にしないといった感じで歩き続け最後尾に整列する。
「やる気のない奴は帰れっ!!」
「はーい」
 熱血教師にそう言われ、素直に返事をして帰ろうとする燐。
「帰るなぁぁぁぁ!!」
 今度は、真逆の事を言って燐を引き留める。
「どっちですかぁー」燐は気だるさそうに熱血教師を見る。
「ぬわにをぉぉぉぉぉ!!!」
 燐の舐めた態度に怒鳴り散らし、それがマイクを介して近所中に響き渡る。
「先生。近所迷惑なんで、止めてください」燐は至って普通の事を言うのだが、それが一般の生徒達は可笑しく思わず笑ってしまう。
「お、おい! 笑うな!!!」
 熱血教師の言葉も虚しく生徒達の笑い声は増大していく。
 事態の収拾がつかなくなり、熱血教師は涙目になりながらひたすら喚き散らす。
 その光景を横目に燐は、「羅猛燐はクールに去るぜ」その言葉と共にとその場を後にするのだった。
 その頃、長四郎は一川警部達と食事をしていた。
 今日のお昼は町中華で、長四郎は中華ラーメンと炒飯、一川警部と齋藤刑事は日替わりランチセットでメニューはご飯、餃子一人前、かに玉、サラダ、漬物、中華スープの定食だ。
 そして、絢巡査長は町中華特有の黄色いカレーライスを食べていた。
「うん、美味い」長四郎はラーメンを一口啜り目の前で定食を食べている齋藤刑事に言う。
「そうですね」とだけ返事しながら齋藤刑事はかに玉を口に入れる。
「んだよ。つまんねぇ刑事だな。そんなんじゃ、出世出来ないぜ」
「なんで、貴方にそんな事を言われなくちゃいけないんですか?」
「特に理由はないよ」そう答えながら炒飯を頬張る。
「にしても、美味しいですね」絢巡査長もこの店の料理の味の美味しさに感動する。
「フフッ、刑事の楽しみの一つは美味しい昼飯を見つける事やけんね」
 一川警部の言葉に、こんな刑事になりたくない。齋藤刑事はそう思った。
「美味い。美味い」
 肉厚ジューシーなチャーシューを口に入れうんうんと頷いて味を堪能する。
 こんな吞気な連中に事件を解決する事ができるのか、そんな一抹の不安を抱えながら齋藤刑事は餃子を口にする。
「ふー食った。食った」
 店を出た長四郎は腹を擦りながら、駐車場へと向かって歩き出す。
「長さん、奢ってもらって悪かったね」
 一川警部は礼を言うと、「気にしないでください」そうはにかみながら長四郎は答えた。
「あの、そんな事より事件について話しませんか?」
 齋藤刑事は眉間に皴を寄せて先を歩く三人を睨む。
「あんさん、何を行き急いでいるの?」長四郎はゆっくりと振り返りながら齋藤刑事を見る。
「一刻も早く事件を解決しないとですね!!」
「解決する為なら、冤罪を起こしても良いわけ?」
「そ、それは・・・・・・犯人が国外逃亡をするかもしれないですよ」
「国外逃亡ねぇ」
「その心配がないとでも言うんですか?」
「どうだろうな?」
「ふざけているんですか?」
「ふざけてますよ」
 そう即答する長四郎に掴みかかる齋藤刑事。
「あんた、公務執行妨害で逮捕するぞ!」
「うわぁー怖いよー、違法逮捕だぁー」
「黙れ、黙れ」そう言いながら必死で長四郎を揺さぶって黙らせようとする齋藤刑事。
「いい加減にしなさい!!」
 絢巡査長は揺さぶり続ける齋藤刑事の腕を取り、綺麗な背負い投げをする。
 続けて長四郎も同様に背負い投げをする。
「ウぐベラっ!!」長四郎の断末魔と共に身体は地面に叩きつけられる。
「やべっ! なんか口から出そう」長四郎はのたうち回りながらそう言う。
 絢巡査長を見て一川警部はボソッと「絢ちゃんは怒らせん方がよかみたいね」と呟く。
 絢巡査長にこってり絞られた長四郎と齋藤刑事は肩を落とし、並んで後部座席に座る。
 絢巡査長の運転する覆面パトカーは、警視庁へと戻っていった。
 命捜班の部屋に入るとキャリア刑事が部屋をキョロキョロと見回しながら、四人を待っていた。
「あ、木谷田きやた課長!!」
 齋藤刑事はすかさず敬礼し、挨拶する。
「これは、これは。今日はどうしたとですか?」
 一川警部は木谷田課長に出すために、コーヒーを使い捨てカップに注ぎ淹れながら用件を尋ねる。
「事件の捜査はどうですか?」
「どうと言われましてもねぇ~」答えを濁しながらコーヒーを差し出す一川警部。
「全然、進んでいません」
 齋藤刑事はきっぱりと答えた。
「進んでいない? やっぱり」
「やっぱり?」長四郎はその言葉を復唱する。
「あなた誰ですか? 警察関係者には思えないようだが」
 長四郎の服装を見て発言する木谷田課長。
 因みに、今日の服装はカジュアルスーツの出で立ちである。
「ワタスは変な探偵です」
「探偵? まさか、探偵を雇って捜査しているんですか? 警察官としての誇りはないんですか?」木谷田課長の言葉に同意するように、齋藤刑事はうんうんと頷く。
「誇り? そんなものはありません。誇りだけで事件を解決出来るのであれば苦労しませんから」絢巡査長は木谷田課長を睨みながら発言した。
「ふっ、これだから窓際部署の人間は・・・・・・・」木谷田課長は、そう呟き続ける。
「実は、犯人が見つかったんですよ。今、取り調べの最中ですが」
「犯人が捕まったんですか? 誰ですか?」
 齋藤刑事の質問に木谷田課長はニヤリと笑みを浮かべて答える。
「近所の不良です」
 その回答に長四郎は「絶対、噓だ」と呟くのだった。
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