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第拾壱話-仲間

仲間-4

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 長四郎と燐は、警護人と共に昼食を食べていた。
 その間、夏月会長は園崎ファクトリーの社長と会食を楽しんでいた。
「何にも起きないね」燐は弁当の唐揚げを口に入れる。
「その方がありがたい」
 長四郎のその言葉に、警護人達はうんうんと頷いて賛同する。
「それはそうだけど。なんか変じゃない?」
「何が?」
「だってさ、脅迫状を送り付けて何もしないって。そんなのある?」
「あるでしょう。相手が恐怖におののく姿が見たい!! そんなところじゃないか?」
「そうなの?」
「そうなのぉ~」長四郎は遠吠えのように叫ぶ。
「声が大きいわよ」
「へいへい」長四郎は軽く詫びを入れ、玉子焼きを食べる。
「そう言えば、捜査資料から犯人に繋がるような何かを見つけたりした」
「い~や、何にも見つからなかった。だけど、撃った弾は独特な模様が施されてたな」
「模様?」
 長四郎は手に持っている弁当を横に置き、ズボンの後ろポケットに入れてた捜査資料を取り出して、該当のページを開いて燐に見せる。
「あ、ホントだ」
 そこには、弾丸の横にバイクの画が書かれていた。
「これの意味が分からない」
 バイクの画をトントンと叩き、長四郎は唇を歪める。
「殺し屋のマークとか?」
「ラモちゃん、そんな目立つような殺し屋はおらんぜ。かの有名なゴルゴ13ことデューク東郷ですらそんな事はしないぞ」
「ゴルゴ13って何? 有名なアニメ?」
 燐の何気ない一言が、その場に居た全員が凍りつかせる。
「知らないの? ゴルゴ13」
「さっきからそう言っているじゃない」
「ここでも、ジェネレーションギャップ」
 長四郎はショックのあまり卒倒した。
「あんたの年でも知っている奴少ないと思うけど」
 燐のその言葉に、警護人達はうんうんと頷いて賛同するのだった。
 会食を終えた夏月会長の今度のスケジュールは、会社に戻って戦略会議への参加であった。
 再び会社に戻った長四郎と燐は例の噂の出所を調査する為、静の協力の元、各部署の情報通であろう女子社員を集めてもらい聞き込みをした。
 その結果、共通する答えが見つかった。
 長四郎と燐そして静の三人は、その噂の出所へと向かった。
「おばちゃん、どうも」
 静は売店のおばちゃんに声を掛けると「あらぁ~静ちゃんじゃない。元気?」嬉しそうな顔で静の応対をする。
「元気、元気。それでさ、会長の例の話についてなんだけど」
「ああ、あれね」少し気まずそうな顔になるおばちゃん。
 気まずそうな顔になるのも無理はないと長四郎は思った。
 会長のあらぬ噂を流していると聞きつけた会長秘書が訪ねてきたので、警戒するのは必然な反応であった。
「おばちゃんに釘を刺そうと思ってないから、安心して」
「そのなの。びっくりさせないでよぉ~」
「ごめん、ごめん。あ、紹介するね。この人達、徹田さんの事件の捜査と会長の護衛をしている探偵の熱海さんと・・・・・・・」
「羅猛燐でぇ~す」
 燐は紹介に詰まる静に代わって自分で自己紹介する。
「それで探偵さんが私に聞きたいことって何かしら?」
「では、担当直入に聞きます。例の噂の出所はどこからの物ですか?」
「それ知ってどうするの?」
「どうする。事件解決の糸口になるかもしれないのでお聞きするんです」
「なんか、ドラマみたいだね」
「そら、どうも」棚に陳列されている商品を見ながら長四郎は謙遜する。
「噂の出所は、弁当屋よ」
「弁当屋?」
「あ、もしかしてガラの悪い配達員が配達する弁当屋ですか?」
「あんた、よく分かったわねぇ~」
 おばちゃんは燐の発言に感心する。
「ラモちゃん、知っているの?」
「うん。散策している時に、納入するそいつとすれ違ったの」
「で、その弁当屋は誰から聞いたのか、教えてくれましたか?」
「ああ、ここの会社の社員から聞いたって言っていたわね」
「へぇ~そのガラの悪い配達員は、ここの社員と仲いいんですね?」
「そうなのよ。見た目こそあれかもだけど、意外と気さくでここの女子社員からも地味にモテモテなのよ」
 おばちゃんは嬉しそうに、長四郎の質問に答える。
「俺も少しイメチェンしたら、モテるかな」
「あんたは、無理」燐は即答する。
「その配達員から話を聞くか。弁当屋の名前を教えて頂けませんか?」
「トラベル弁当って言う弁当屋だよ」
 それを聞いた長四郎は「どうもありがとうございました」と言いながら、商品棚に陳列していた板チョコをおばちゃんに渡し、購入して売店を出た。
「もうそろそろ、会議も終わる頃かな?」長四郎はスマホの時計を確認しながら、板チョコ食べる女性陣に話しかける。
「そうですね」とお上品に板チョコを食べる静に対して、燐は口の周りにチョコをべったりつけながら「そうね」と返答する。
「すいません。少し別行動良いですか?」長四郎は静にお伺いを立てる。
「ええ、構いませんが」
「ありがとうございます。ラモちゃん、行くぞ」
 二人は近くの開いていた小会議室へと入った。
「何、どうしたの?」燐が話を切り出すと長四郎はポケットティッシュを渡す。
「何?」
「口拭け。ガキじゃないんだから」
「あ、そういう事」
 燐は言われるがまま、ポケットティッシュを受け取り口の周りを拭いた。
「それだけの為に、ここに来たわけじゃないでしょ」
「モチの論。警察にさ、そのガラの悪い配達員から話を聞くように頼んでくれない?」
「分かった。でも、誰がそんな噂流したんだろう」
「さぁな。なんにせよ、俺達はあのジジイの護衛が優先事項だからな」
 燐はすぐさま絢巡査長に連絡をし調査依頼を出し、長四郎と共に夏月会長が居る会議室へと戻った。
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