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第拾弐話-監禁

監禁-17

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「ふっ、はははははっははははは」
 表裏は勝ち誇ったように高笑いし、二重もまた歓喜のあまり涙する。
「・・・・・・」
 絢巡査長は頭をがっくりと落とし、だんまりを決め込んでいる。
「刑事さん。何も言えないくらい悲しいですよね?」
 二重は涙を拭きながら、絢巡査長に話し掛ける。
「ええ、とても悲しいです。貴方達がさっさと自首してくれたら」絢巡査長は顔を上げて、貴方をキッと二人を睨みつける。
「おいおい。この期に及んで負け犬の遠吠えとは、威勢の良い刑事さんですね」
「それはどうも」
 表裏の皮肉に怯むことなく、絢巡査長は冷静に返答する。
「先生。この刑事さんショックのあまりおかしくなったんじゃないんですかね?」
「二重さんの仰る通りかもしれません。もし、良かったら今この場で診察してあげましょうか?」
「お願いします。出来れば場所はここではなく監禁場所でお願いしたいのですが」
 唐突な絢巡査長の願いを聞いた二重と表裏は、意味が分からず互いの顔を見て首を傾げる。
「分かりました。良いでしょう」表裏はその旨を了承し、3人は場所を移すことになった。
 こうして、一川警部が監禁されていた場所へと訪れた二重と表裏は驚きの表示を見せた。
「一体、どういう事だ!!」
 最初に口を開いたのは、爆弾を起動させた二重だった。
 そう監禁場所は爆発などしておらず、無傷のまま建っていたのだ。
「良いですね。その反応」
 慌てふためく二重と表裏にそう声を掛けながら、長四郎が近づいてくる。
「先程はどうも。絢ちゃんとの会話は全て聞かせて貰いました。あっさり認めたので少々驚きました」
「そんなことはどうでも良いんだよ! ここで監禁した刑事はどうした?」
「今、病院に行っていますよ。助け出した時は大変でした。貴方達を殺しに行きそうな勢いだったので」
 遠い目をしながら、長四郎は助け出した時の事を語り始めた。
 燐から教えられた住所に着いた長四郎は、齋藤刑事のように倉庫に侵入し一川警部が監禁されている部屋を特定した。
 長四郎は部屋に入る前に、燐に連絡した「一川警部を確認」とだけ。
「よしっ! 良いわよ」
 燐にそう言われた助っ人の地牛が、打ち込んだハッキングコードを起動させる。
 地牛がどのような人物か知りたい方は、「探偵は女子高生と共にやって来る。」第玖話-オニをお確かめください。By作者
 では、話に戻ろう。
 起動させたハッキングコードの中身は、表裏と二重の端末に疑似映像を流すというものであった。
 監視カメラが設置されている場所の直近、20分の映像を録画しそれをループで流す。
 一川警部を救出するのには充分な時間稼ぎであった。
 燐からハッキング完了の知らせを貰った長四郎は部屋に入って行った。
「一川さん、お待たせしました」一川警部の下に駆け寄り、紐を解く長四郎。
「遅いよ。長さん」
「すいません。立てますか?」
「いや、肩を貸してくれんね」
「はい」
 長四郎は一川警部に肩を貸し、体を支える為肋骨辺りを触った瞬間、「痛たたたたたた」と声を上げ悶絶する一川警部。
「肋骨やられているみたいですね」
 長四郎はすぐさま脇腹に手を置き、その場から離れ倉庫の玄関口まで移動して齋藤刑事が手配した救急車と爆弾処理班の到着を待つ。
「やっぱり、長さんはあれに気づいてここを突き止めたっちゃろ」
「ええ、まぁ。助っ人の力は借りましたけど」
 一川警部の言うあれとは、燐がキモいと発言した一川警部のカメラ一点見つめのことである。
 長四郎はその行為が近くの建物を瞳が反射して映していると察し、その解析が出来る人物として地牛を事務所に向かわせ画像解析と疑似映像を流せるようハッキングの依頼をしたのだ。
「あいつらどうしてくれようかなぁ~」
 指をボキボキと鳴らしながら、一川警部は気合を入れていると長四郎に「昔の刑事ドラマのように犯人をボコっちゃいけませんよ」と諭される。
「分かっとうよ」少し寂しそうに返事する一川警部であった。
「と以上のような事がありましてね。惜しかった」
 長四郎の解説を聞き終えた表裏が質問する。
「どうして、一川の監禁映像を見せた時に発信場所を探そうとしなかった?」
「それはお宅らだってバカじゃないと思っていますから。どうせ海外のサーバーを経由して特定困難にしているのは分っていたので、無駄な労力はかけたくなかったという回答でも宜しいか? 先生」
「あの爆発映像は、どうしたんだ?」今度は、二重が聞いてきた。
「あれはフェイク映像に決まっているでしょう。爆弾処理班の解体作業に時間がかからなかったのが幸いだった。絢ちゃん、乗り込むタイミング、へたり込むタイミング両方ともバッチリだったぜ」
 爆弾は5分もかからず解体され、それに合わせ長四郎は自分と通話をしながら病院に乗り込むように指示を出し、これまた爆発映像に合わせて絢巡査長は長四郎の指示のもと、へたり込んだのだ。
「ありがとうございます」
 サムズアップする長四郎に絢巡査長もまたサムズアップしながら返す。
「そんな・・・・・・俺達の計画は何だったんだ」
 今度は二重がその場にへたり込んだ。
「そういう事は、留置場でやってください」
 絢巡査長は手錠を取り出し、二重の手に掛けるのだった。
 表裏も同様に物陰に隠れて話を聞いていた齋藤刑事の手で御用になった。
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