探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

文字の大きさ
265 / 759
第拾陸話-愛猫

愛猫-9

しおりを挟む
 一川警部達はその頃、事件当夜に怪しい人物が居なかったのか、防犯カメラ映像のチェックと共に聞き込みをする事になった。
 そして今、「CATエモン」周辺で聞き込みを行っていた。
「ありがとうございました」絢巡査長はコンビニ店員に礼を言い、店を出ると「絢ちゃん」と一川警部が声を掛けてきた。
「一川さん。どうです? 成果ありましたか?」
「何の手掛かりも得られんばい。結構、用意周到な犯人なのかもしれんね」
「そうかもですね。かなり土地勘がある人物なんでしょうか?」
「どうやろ。長さんが今さっき連絡くれたんやけど。犯人は身内に居るはずだからそこら辺を視野に捜査してくれ言われとったんやけど、これは手がかかるばい」
「身内ですか。昨日、話を聞いた横乃海さんも候補ということでしょうか?」
「分からんけど、あの店の従業員かその関係者やろ。取り敢えず、それらを知っている人が居ないか調べるしかないよね」
「分かりました。もう一度、確認してきます」
「宜しくぅ~」
 もう一度、コンビニに聞き込みに行った絢巡査長を見送った一川警部は「CATエモン」の方へ向かって歩き出した。
 そんな一川警部の目に、ある一軒の店が目に留まった。「CATエモン」から3軒隣りにあるスナックであった。
 腕時計で時間を確認すると、16時を示していた。一川警部は小窓から店の中を覗くと、店主であろう女性が仕込みの準備を始めていたので、何か聞けると踏んだ一川警部は店に入ることにした。
 ドアを開けようとすると鍵が掛かっていたのでコンコンっとノックすると、ガチャっという音と共にドアが開く。
 中から気だるそうな顔をした女性が「店、まだなんですけど」と一川警部に言うのだが、一川警部は満面の笑みで警察手帳を見せる。
「どーもぉー」
「警察が何の用?」
「いや、そこで起きた殺人事件の聞き込みで来たとです」
「聞き込み? 今になってぇ~私の所には一度だって来たことないじゃない」
「そうでしたか。これは失礼しました」一川警部は店先で頭を下げる。
「ちょっと! こんな所で頭下げないでよ」
「あ、すんません」
「中に入って」
 一川警部は言われるまま店に入って聞き込みを開始した。
「何か飲む?」
「いえ、勤務中なんで」一川警部が断ると女性はムッとしながら、烏龍茶を差し出す。
「こりゃどうも」
「それで、事件の話だっけ?」
「ええ、事件当夜なんですけど怪しい人物は見かけませんでした?」
「怪しいかどうかは分からないけど、新規の客が来たの。それがなんか様子がおかしいというか」
「様子がですか?」
「そ。なんか、慌てた様子で」
 事件当夜、閉店30分前に1人の男が息巻いて店に入ってきた。
「いらっしゃい。そんなに息巻いてどうしたの?」
「何でもないっ! 良いから、そこのウイスキーをロックでくれ!!」
「そんな怒鳴くても」
 そう言いながら男が指差したウイスキーを手に取り、注文のロックを手渡す。
 男はひったくるようにグラスを取り上げ、一気に飲み干した。
 そうすると、落ち着いたのか。男はふぅーっと息を吐き、喋り始めた。
「すいません。取り乱してしまい」
「良いのよ。よくあることだから」と答えるのだが、店を訪れた時に男から酒の匂いがしなかったので不思議ではあった。
「落ち着きました。ありがとうございます」
「何かあったの?」
「ええ、まぁ」男の表情からあまり触れない方が最適解だと踏み「もう一杯飲む?」と問いかけた。
「同じのを下さい」
 男は空になったグラスを差し出してきたので、注文された物を出した。
「ありがとうございます」
 それからもう一杯お代わりをし、退店した。
「そんな客が居ったとですか。大変でしたね」
「そうなの。変な客でしょ」
「すいません。その男の特徴とか分かります」
 メモとペンを取り出した一川警部は、女性の回答を待つ。
「そうねぇ~IT系に勤める会社員みたいな感じだったかな」
「IT系ですか」
「早い話が、ここ最近いるでしょ。カッコつけの意識高い系。あんな感じ」
「成程。それは分かりやすい例えですね」
 一川警部はいそいそとメモを取る。
「すいませんが、またお話を聞くことがあるかもしれませんけど、その時は宜しくお願い致します」
「はい、今度は営業中に来てね。サービスするから。これ、名刺」
「あ、分かりました。では、失礼します」
 一川警部は名刺を受け取ると女性に一礼し、店を出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...