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第拾漆話-彼氏

彼氏-10

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 長四郎は喫茶カラフルを出た後、日向のマンションへと場所を移した。
 ルリ子からの連絡で例のビルを出て渋谷方面に向かったという情報をキャッチし、一度帰宅すると踏み自宅マンションを訪れたのだ。
「あ~寒っ」
 長四郎は日が落ちていく夕方の寒空の中、マンションを見つめる。
 完全に日が落ちた頃、日向がマンションから出てきた。
「ラ、ラッキー」長四郎はかじかんだ身体をブルブルと震わせながら、尾行を開始した。
 日向が向かった先は、マンションから歩いて10分の所にあるクラブであった。
 長四郎も日向に続いてクラブに入ると、ドデカイ音にびっくりしつつも日向を見失わないよう必死に踊り狂う客達に邪魔にならないよう監視を続ける。
 その日向はというと友達らしき人物と合流し、片っ端から女の子達に声を掛けていた。しかし、ことごとく断られる。
 その様子もカメラに収める長四郎。
「あーまでして、女の子に声を掛けるって。若いって羨ましいなぁ~」
 長四郎が感心していると「ねぇ、お兄さん。何で踊らないのぉ~」と金髪ギャルが話しかけてきた。
「え? ああ、おじさん。こういうの苦手なの」
「苦手なのに、ここに居るの? ウケるぅ~」
「ホント、ウケるぅ~」長四郎が金髪ギャルの口調を真似しながら返答すると「ウッザ」と言う一言で片付けられ金髪ギャルはどこかへと去っていた。
「危ね。危ね。目立つところだった」
 長四郎は再び、日向がに視線を戻すと女の子をゲットできたのか。楽しそうにカクテル片手に談笑していた。
「あれはお持ち帰りルートだな」
 長四郎のこの言葉の通り、数分後には日向はクラブを後にして近くのバーへと場所を移した。
 だが、そのバー会員制のバーであった為、長四郎は店の外で張り込むことにした。
 3時間後、べろんべろんに酔っぱらった女の子を連れた日向が店を出てきた。完全に冷え切りガチガチに固まった身体を必死に動かしながら尾行を再開する。
 そのまま女の子を日向は自宅マンションに連れ込んだ。
 長四郎は、日向のお持ち帰りを確認するとその日の調査を終了した。
 翌日、温い布団の中で気持ちよく寝ていた長四郎。
 夢の中で、昨日出会った金髪ギャルと意気投合し楽しくデートしている夢であった。
 良い雰囲気になり、キスまで行きそうになった時、思いっきり顔をひっぱられ叩かれ身体全体に寒い空気が一気に押し寄せ、目を覚ました長四郎。
「何、キスしようとしてるわけ? キモっ!!」
 起きてすぐ燐からの罵倒を浴びせられ、長四郎にとって最悪の目覚めであった。
「キス顔してたの? 俺」
「してたわっ!」
 燐はその顔を収めたスマホの写真を見せつける。
「あ、ホントだ。マジ、気持ち悪いな、この顔は」
 長四郎は自身のタコ口でキスしようとしている顔を見て不快感を覚える。
「でしょ」
「とは言え、ビンタで起こすことはないよね」
「そんな事ないし、今10時だから」
「ああ、そうなの」
「そうなの。って、早く起きなさい」
「え~やだよぉ~」子供みたいに駄々をこねる長四郎は再び布団を被り寝ようとするが、当然の如く燐に阻止される。
「何、寝ようとしてるわけ? 一川さんから話を聞いたわよ。あの男、殺人事件の重要参考人らしいじゃん」
「それは、警察が勝手に言っているだけだから。布団返せよ」
「ダメよ。今日は、殺人事件の現場に行くことになっているんだから」
「そうなのぉ~」
「何が、そうなのぉ~よ。さっさと着替える!」
 燐が用意したであろう服を長四郎に投げ渡す。
 これ以上、駄々をこねても仕方ないので長四郎は素直に着替え始める。
「ちょっと! どこで着替えてんの!!」
 ズボンを降ろそうとする長四郎は「ああ、そうか。悪い。悪い」ズボンを上げ脱衣所で着替えるのだった。
「じゃあ、行きますか!」
 着替えを終えた長四郎が脱衣所から出てくると、ものすごい剣幕で互いを睨み合う燐とリリの姿があった。
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