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第拾捌話-美味
美味-9
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「イタタクさん」
燐は大急ぎで帰ろうとする板前を呼び止める。
「何ですか?」振り返りざまに用件を聞く。
「お帰りの所、すいません。実は事件で判明した事が分かりましたので。そのご報告に」
「何故、私に?」
板前のその一言に、燐と絢巡査長は互いの顔を見てニヤリと笑う。
「何が可笑しいんです?」
「いえ、何でも。それで判明した事なんですけど、犯人が分かったんです」
「ホントですか! それは良かった。では」
去ろうとする板前の立ち行く手を阻む燐、絢巡査長の両名。
「ちょっと、帰してくださいよ」
「今日帰ってもらうのは無理ですよね。絢さん」
「そうだね」
「な、何なんですか?」
「貴方が瞳さんを殺害した犯人という事ですっ」
燐は名探偵の如く板前を指差す。
「私が、犯人? 冗談ですよね? 面白くもない冗談ですけど」
「冗談じゃないですよ。私達は、確かな確信を持ってここに来てますから」
「では、その確信を聞かせてもらいましょうか?」
「はいっ!!」
燐は遂に自分にもこの出番が回ってきたと言わんばかりの顔、そして、目を輝かせながら話始めた。
「では、動機から話しますね。貴方、被害者の瞳さんに谷原雄一と面識がありますよね」
「ないですよ。話したじゃないですか」
「いいえ、ここに来る前にその事実確認をしに行った刑事から報告があったんです」
板前と瞳アリサの関係を調査しに行った今西から報告を聞き出し、その話を始めた。
「イタタクさんと瞳さんには面識があったとね」
「何かの勘違いでしょう」板前はそう言って、受け流そうとするのだが燐は諦めず話を続ける。
「そうでもないんですよ。瞳さんの職業はUNOテレビのディレクターです。番組には多くの人間が関わっています。ですから、この証言は確かなものでしょう」
「はぁ~」板前は溜息をつきこう述べた。
「確かに私は嘘をつきました。でも、誤解しないでください。変に勘繰られたくなくて嘘をついただけなんです」
「変に勘繰られたくない? それは瞳さんと言い合いをしていたからですか?」
勿論、この情報も今西刑事から聞いたものである。
「そうですよ」あまり触れられたくないような反応をする板前。
「原因は、谷原雄一ですね」
絢巡査長の問いかけに頷いて認める板前は「そうです。とある番組で私の事をこけ降ろされましてね。彼女には放送中止のお願いをしていたんです」と答えた。
「でも、それは聞き入れられなかった。そして、復讐の為に今回の事件を実行した」
「違いますよ。どうしてもあなた方は私を犯人仕立て上げたいらしい。でしたら、私が食材に毒を盛った証拠を見せてもらいましょうか?」
「そ、それは・・・・・・」
燐もそこまでの準備はしておらず困り果てていると、「証拠ならここにあるばい」と一川警部がゴミ袋を持ってきた。
「一川さん!!」絢巡査長が嬉しそうな声を出す。
「お待たせ。イタタクさんがご所望の証拠品はここに」
一川警部はそう言いながら、ゴミ袋を開ける。
中には、空き瓶が2本入っていた。
「これは?」燐が説明を求めると「これは、テトロドトキシンを含有した液体が入っていたであろう瓶ばい。危うく捨てられるところやったけん。危なかったぁ~」と一川警部は安堵の表情を見せる。
「ああ、それと。イタタクさんが昨日、キッチンスタッフから皿を10枚ばっかし借りて行ったちゅう証言も取れてますけん。安心してください」
「それだけで、私が殺したって言うのか? 馬鹿馬鹿しい」
「馬鹿馬鹿しくないですよ。この瓶の液体を誰が生成したのか、なんてのは調べればすぐ分かることですから。どうです? 疑いを晴らすためにイタタクさんの家とお店で生成したという痕跡がないかを調べませんか?」
燐は勝ち誇ったような顔で板前を見る。
「クソっ! もう少しで逃げられたものを!!」
板前は悪態をつき、自分の犯行を認めたのだった。
燐は大急ぎで帰ろうとする板前を呼び止める。
「何ですか?」振り返りざまに用件を聞く。
「お帰りの所、すいません。実は事件で判明した事が分かりましたので。そのご報告に」
「何故、私に?」
板前のその一言に、燐と絢巡査長は互いの顔を見てニヤリと笑う。
「何が可笑しいんです?」
「いえ、何でも。それで判明した事なんですけど、犯人が分かったんです」
「ホントですか! それは良かった。では」
去ろうとする板前の立ち行く手を阻む燐、絢巡査長の両名。
「ちょっと、帰してくださいよ」
「今日帰ってもらうのは無理ですよね。絢さん」
「そうだね」
「な、何なんですか?」
「貴方が瞳さんを殺害した犯人という事ですっ」
燐は名探偵の如く板前を指差す。
「私が、犯人? 冗談ですよね? 面白くもない冗談ですけど」
「冗談じゃないですよ。私達は、確かな確信を持ってここに来てますから」
「では、その確信を聞かせてもらいましょうか?」
「はいっ!!」
燐は遂に自分にもこの出番が回ってきたと言わんばかりの顔、そして、目を輝かせながら話始めた。
「では、動機から話しますね。貴方、被害者の瞳さんに谷原雄一と面識がありますよね」
「ないですよ。話したじゃないですか」
「いいえ、ここに来る前にその事実確認をしに行った刑事から報告があったんです」
板前と瞳アリサの関係を調査しに行った今西から報告を聞き出し、その話を始めた。
「イタタクさんと瞳さんには面識があったとね」
「何かの勘違いでしょう」板前はそう言って、受け流そうとするのだが燐は諦めず話を続ける。
「そうでもないんですよ。瞳さんの職業はUNOテレビのディレクターです。番組には多くの人間が関わっています。ですから、この証言は確かなものでしょう」
「はぁ~」板前は溜息をつきこう述べた。
「確かに私は嘘をつきました。でも、誤解しないでください。変に勘繰られたくなくて嘘をついただけなんです」
「変に勘繰られたくない? それは瞳さんと言い合いをしていたからですか?」
勿論、この情報も今西刑事から聞いたものである。
「そうですよ」あまり触れられたくないような反応をする板前。
「原因は、谷原雄一ですね」
絢巡査長の問いかけに頷いて認める板前は「そうです。とある番組で私の事をこけ降ろされましてね。彼女には放送中止のお願いをしていたんです」と答えた。
「でも、それは聞き入れられなかった。そして、復讐の為に今回の事件を実行した」
「違いますよ。どうしてもあなた方は私を犯人仕立て上げたいらしい。でしたら、私が食材に毒を盛った証拠を見せてもらいましょうか?」
「そ、それは・・・・・・」
燐もそこまでの準備はしておらず困り果てていると、「証拠ならここにあるばい」と一川警部がゴミ袋を持ってきた。
「一川さん!!」絢巡査長が嬉しそうな声を出す。
「お待たせ。イタタクさんがご所望の証拠品はここに」
一川警部はそう言いながら、ゴミ袋を開ける。
中には、空き瓶が2本入っていた。
「これは?」燐が説明を求めると「これは、テトロドトキシンを含有した液体が入っていたであろう瓶ばい。危うく捨てられるところやったけん。危なかったぁ~」と一川警部は安堵の表情を見せる。
「ああ、それと。イタタクさんが昨日、キッチンスタッフから皿を10枚ばっかし借りて行ったちゅう証言も取れてますけん。安心してください」
「それだけで、私が殺したって言うのか? 馬鹿馬鹿しい」
「馬鹿馬鹿しくないですよ。この瓶の液体を誰が生成したのか、なんてのは調べればすぐ分かることですから。どうです? 疑いを晴らすためにイタタクさんの家とお店で生成したという痕跡がないかを調べませんか?」
燐は勝ち誇ったような顔で板前を見る。
「クソっ! もう少しで逃げられたものを!!」
板前は悪態をつき、自分の犯行を認めたのだった。
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