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第弐拾壱話-海外

海外-11

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 ミシェルは、すぐさま車を降りると、声をかける。
「長四郎」
 声をかけられた長四郎は身体をビクッとさせる。
「ひ、人違いですぅ~」裏声でしらばっくれる長四郎。
「無駄よ。私にそれは通じない」
「チッ」
 舌打ちをし、悔しそうな表情を見せながらミシェルの方を向くと「どうして、バレたかなぁ~」長四郎は惚ける。
「全く。貴方って人は。燐は?」
「ラモちゃんはホテルでグッドスリープ中」
「ああ、そう」
「不服そうだな」
「当然よ。危険が及ばないようにと思って日本へ帰そうと思っていたんだから。それを無碍にするなんて」
「いや、ね? 俺は帰ったほうが良いって言ったんだよ。でもね、ラモちゃんが。何だよ。その疑いの眼差しは?」
「いや別に」
 何か言いたげなミシェルはそれを何も言わず、只、長四郎を見つめる。
「ミシェルが探している相手はいないよ」
「そう」肩を落とすミシェル。
「でも、得た情報もある」
「何?」
「今、出て行ったカップル達さ、あれシャブ中だったぜ」
「店に乗り込まないと!」
「話は最後まで聞けって。彼らはこれから麻薬を貰いに行くのさ」
「え?」
「売人に会いに行くんだと。日本人の顧客もいるらしくてな。誘われたよ」
 しれっと大事な事をいう長四郎に苛立ちを覚えるミシェル。
「という事で、追跡開始だ」
「分かった。乗って」
 ミシェルは自分の車に乗るよう促すと、長四郎は有無を言わさず運転席に座る。
「ねぇ、運転するのは私なんだけど」
「あ、悪い。つい、日本の癖で」
 アメリカでは右側通行の為、左ハンドルの車が多くを占める。日本で助手席に乗る癖が付いてしまった長四郎は恥ずかしそうに車を降り、右側の助手席に乗る。
 すぐに車は発進した。
「教えて欲しい事があるんだけど」
 ミシェルは車を走り出してすぐに話しかけた。
「なぁ~んだい?」
「どうやって、あの店にたどり着いたの?
「蛇の道は蛇。アメリカにもじ情報屋ってのはいる。こっちの知り合いにチャッチャッと調べてもらってそいつから聞き出した」
「彼女を頼ったのね」
 ミシェルのその一言に眉をひそめる長四郎。
「でも、英語もできないのによくやれたわね」
「それは厄介ごとを持ち込む女子高生がチャッチャッと通訳してくれてな」
 自分がやったみたいに言うなと言いたい事を抑えミシェルは話を続ける。
「今朝みたいにドンパチすることになるかもよ」
「それは参ったなぁ~」
 ニタニタしながら、助手席から見えるアメリカのクリスマスイブの光景を眺めるのだった。
 カップル達は、車で三十分の距離の所にある廃工場へと入っていった。
 相手に悟れないように、近くに車を停車させるミシェル。
「ここみたいね」
「そうだな。デモンには連絡しなくて良いのか?」
「それは、長四郎の役目。私は乗り込んで制圧する」
「無茶にも程があんぞ」 
「リイルを一刻も早く拘置所から出す為よ。頼んだわよ」
 長四郎にそう告げ、ミシェルはグロッグ18を片手に廃工場に乗り込んでいく。
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