493 / 770
第弐拾漆話-大物
大物-6
しおりを挟む
紅音々の調査を開始して、早くも五日が経とうとしていた。進展もなく少し手詰まりの状態になりつつあった。
森下邸に出入する人間を調べたのだが、特に変わった人物が出入するといった事はなかった。生活協同組合コープの配達員、郵便配達員、新聞配達員そして、長四郎を尾行していた男それだけしか出入りしていない。
森下衆男が出てくる時は、近所を散歩する時だけで最寄りの駅まで行き、駅前の喫茶店で珈琲を飲み店のマスターや常連客と談笑し一時間程で切り上げ家に帰る。
そんな日常を繰り返す隠居。それが張り込みをしての感想だった。
「う~ん。ただの隠居としか思えないんだよなぁ~」
長四郎は尾行の際に撮影した写真を見ながら、そう呟いた。
すると、車の窓をコンコンとノックされ、窓に目を向けると燐が笑顔で手を振っていた。
「はぁ~」深いため息をつき、倒していたシートを起こす長四郎はドアのロックを解除する。
「差し入れ、持ってきたよぉ~ん」
燐はそう言いながら後部座席に腰を下ろし、レジ袋を長四郎に差し出す。
「あ、どうも」長四郎はレジ袋を受け取り、中身を確認する。
中身は、あんパンと牛乳だけだった。
「安直な品物だな」
「張り込みと言えば、あんパンと牛乳でしょ?」
「ま、色々と言いたいことはあるが丁度、小腹が空いていたところだから頂くとしよう」
長四郎は、あんパンを食べ始める。
「で、どうよ」
「どうもないよ。動きはないし、怪しい人物の出入りもない。爺さんは意外と気さくみたいで人付き合いも良い」
「そうなんだ。で、音々さんはあの屋敷に居るの?」
「分からん」
「適当なんだから」
「適当って言うけどね。屋敷に乗り込むわけにはいかないんだから」
「そうだけど」
「そうだけど? 何か言いたげな感じだな」
「実はさ、私も監視されているみたいなんだよね」
「監視? 気にしすぎなんじゃない?」
「でも、視線を感じるの?」
「ああ、それは多分、幽霊だな」
「幽霊? やめてよ」
「いやいや、幽霊は時期を選んでくれんよぉ~」
長四郎は怪談師のような口ぶりで、燐を怖がらせる。
「ホントにやめて」
これ以上言うと、燐から鉄拳制裁が飛んで来ると思い、それ以上は言わなかった。
「次の手を考えるかぁ~」
「次の手?」
「そ、次の手」
「どんな?」
「それは・・・・・・ 今現在、思案中」
「変な期待持たせないでよ」
「そう言われても困るよ」
「富有子さん。韓国旅行キャンセルしたんだってさ」
「そうか。それは残念だったな」
「そうじゃないでしょ。さっさと音々さんを見つけないからでしょ」
「とは言っても、疑いだけで調査しているからな。そう気安く手は出せないのよ」
「昼行灯」
「あ?」
「だから、昼行灯って言ったの」
「褒めてくれてありがとう」
「褒めてないし」
「俺にとってはね。昼行灯は褒め言葉なの。俺が尊敬する人も昼行灯って呼ばれているから」
長四郎は嬉しそうにしながら、ニヤッと笑う。
そんな長四郎を「キモっ」の一言で片付けるのだった。
森下邸に出入する人間を調べたのだが、特に変わった人物が出入するといった事はなかった。生活協同組合コープの配達員、郵便配達員、新聞配達員そして、長四郎を尾行していた男それだけしか出入りしていない。
森下衆男が出てくる時は、近所を散歩する時だけで最寄りの駅まで行き、駅前の喫茶店で珈琲を飲み店のマスターや常連客と談笑し一時間程で切り上げ家に帰る。
そんな日常を繰り返す隠居。それが張り込みをしての感想だった。
「う~ん。ただの隠居としか思えないんだよなぁ~」
長四郎は尾行の際に撮影した写真を見ながら、そう呟いた。
すると、車の窓をコンコンとノックされ、窓に目を向けると燐が笑顔で手を振っていた。
「はぁ~」深いため息をつき、倒していたシートを起こす長四郎はドアのロックを解除する。
「差し入れ、持ってきたよぉ~ん」
燐はそう言いながら後部座席に腰を下ろし、レジ袋を長四郎に差し出す。
「あ、どうも」長四郎はレジ袋を受け取り、中身を確認する。
中身は、あんパンと牛乳だけだった。
「安直な品物だな」
「張り込みと言えば、あんパンと牛乳でしょ?」
「ま、色々と言いたいことはあるが丁度、小腹が空いていたところだから頂くとしよう」
長四郎は、あんパンを食べ始める。
「で、どうよ」
「どうもないよ。動きはないし、怪しい人物の出入りもない。爺さんは意外と気さくみたいで人付き合いも良い」
「そうなんだ。で、音々さんはあの屋敷に居るの?」
「分からん」
「適当なんだから」
「適当って言うけどね。屋敷に乗り込むわけにはいかないんだから」
「そうだけど」
「そうだけど? 何か言いたげな感じだな」
「実はさ、私も監視されているみたいなんだよね」
「監視? 気にしすぎなんじゃない?」
「でも、視線を感じるの?」
「ああ、それは多分、幽霊だな」
「幽霊? やめてよ」
「いやいや、幽霊は時期を選んでくれんよぉ~」
長四郎は怪談師のような口ぶりで、燐を怖がらせる。
「ホントにやめて」
これ以上言うと、燐から鉄拳制裁が飛んで来ると思い、それ以上は言わなかった。
「次の手を考えるかぁ~」
「次の手?」
「そ、次の手」
「どんな?」
「それは・・・・・・ 今現在、思案中」
「変な期待持たせないでよ」
「そう言われても困るよ」
「富有子さん。韓国旅行キャンセルしたんだってさ」
「そうか。それは残念だったな」
「そうじゃないでしょ。さっさと音々さんを見つけないからでしょ」
「とは言っても、疑いだけで調査しているからな。そう気安く手は出せないのよ」
「昼行灯」
「あ?」
「だから、昼行灯って言ったの」
「褒めてくれてありがとう」
「褒めてないし」
「俺にとってはね。昼行灯は褒め言葉なの。俺が尊敬する人も昼行灯って呼ばれているから」
長四郎は嬉しそうにしながら、ニヤッと笑う。
そんな長四郎を「キモっ」の一言で片付けるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる