探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

文字の大きさ
556 / 759
第弐拾玖話-行方

行方-11

しおりを挟む
「お待たせ」
 合流した絢巡査長が明野巡査に声を掛けた。
「すいませんが先程、話した事をもう一度話して貰えませんか?」
 明野巡査はイヴ・ウィンガードにお願いすると「分かりました」と嫌な顔一つせずに話始めた。
「あれは、ここに出店した日でした」
 イヴはその日、閉店後のデパートで開店準備の作業を終え帰宅する為に駅構内を歩いていた。滞在してホテルは有楽町線一本で行ける銀座一丁目駅降りて徒歩五分の場所にあったのだが、その有楽町線のホームに行けず駅構内を周回していた。
 カタカナとひらがなは読めるイヴであったが、漢字は読めず人に聞こうにも終電間際なので人も足早に動いていた。
 イヴが困り果てているとホームレスに声を掛ける英国紳士という言葉が似合う外国人男性が居た。イヴはチャンスだと思い声を掛け、有楽町線の行き方を教えてくれると同時に改札口へと案内してくれた。
「それ以来、その男の人は見てないですね」
「それでなんですけど、その男の人の顔って覚えていたりしますか?」絢巡査長がそう聞くと「その質問は俺が来る前にしました。似顔絵もほら」遊原巡査はスマホのメモアプリに書かれた似顔絵を見せた。
「ぷっ!」最初に吹き出して笑い始めたのは長四郎だった。
 その似顔絵は個性溢れる絵であった。
「も、申し訳ありませんが、もう一度、男の顔について教えて頂けませんでしょうか?」
 そう頼みこむ絢巡査長は必死に笑いを堪え身体をフルフルと小刻みに揺らしている。
「分かりました」
 イヴは快く承諾してくれ、イヴの証言通りに絢巡査長が似顔絵を作った。
「ありがとうございました。あの、こちらはいつまで出店されているんですか?」
「11月末までです」
「もしかしたら、別の刑事が聞き込みに来るかもしれません。お忙しいところ恐縮ですが、その時にご対応願えますでしょうか?」
「構いませんよ。私、自分の国でもこんな経験したことありませんでしたから」
 絢巡査長の問いにニコッと笑顔で返すイヴ。
「では、失礼します」絢巡査長が礼をすると、他の三人も礼をしてその場を去った。
 四人は有楽町線に乗り、警視庁の最寄り駅である桜田門駅へと向かう。
 その車内で、四人だけの捜査会議がひそひそ話で行われていた。
「取り敢えず、この似顔絵の男を追いましょう。長さん」
「う~ん」と絢巡査長の言う事に渋い顔をする長四郎。
「何か引っかかる事でも?」明野巡査がそう聞くと長四郎はコクリと頷く。
「何が引っかかるんですか?」
「言いたいんだけど、ここじゃあ、ちょっと気が引けるお話」
 もったいぶる性格やめろよなと心の中で言う明野巡査は「でも、あの店員さん。日本語上手でしたね」と事件とは関係のない話を始めた。
「それ、私も思った」
「ですよね!」
「そんなことは事件と関係ないんだから、話を戻せよな」
「祐希さ、そういう事言う訳? あの人に声を掛ける前、「英語喋れる? 泉」とか言っていた癖に」
「う、うるせぇ。赤点ギリギリの人間に言われたくないね」
「どうして、人の恥ずかしい過去ばらす訳?」
 遊原巡査と明野巡査が痴話喧嘩を始めると「ご両人。そこまで、そこまで」長四郎が喧嘩の仲裁に入る。
「ご両人を羨ましいそうに見つめるお方を御覧なさい」そう言う長四郎の視線の先には、顔は笑顔だが目は一切笑っていない絢巡査長の顔があった。
 斯くして、警視庁へ戻った四人。
「お疲れ様でぇ~す」遊原巡査がそう言いながら、部屋に居る佐藤田警部補に声を掛ける。
「お疲れ。で、どうだった?」
「犯人らしき男の情報は得ました」明野巡査が答えた。
「男、男ねぇ~」長四郎が電車の中で考えていた疑問をポロっと口に出した。
「え? もしかして、犯人が男って部分に引っかかっていたんですか?」
 絢巡査長が確認すると「Yes」と長四郎は答えた。
「あの外人さんの話、聞いている時に気にならなかった?」
「何がです?」明野巡査は何か気になる事があったかを思い出し始める。
「匂いだよ」
「匂いですか? 別に変な匂いしなかったけどなぁ~」遊原巡査は長四郎の言う事に賛同できず首を傾げる。
「あれですかね? 犯人、特有の匂いって奴ですかね?」
「泉ちゃん、ドラマの見過ぎだよ。香水だよ。あの人から微かに男性用の香水の匂いがした」
「でも、化粧品を扱っているんですから男性用のを振りかける事だって」
「そうだよな。でもなぁ~」歯切れの悪い長四郎に「何が不満なんですか?」明野巡査が白黒はっきりさせる質問をした。
「都合の良いタイミングでの証言だなぁ~ そう思っているだけ」
 証言を取ってきた若い刑事二人はその一言にムッとする。
「流石は名探偵だなぁ~」ここまで黙っていた佐藤田警部補が口を開いた。
「どういう意味ですか? 班長」遊原巡査が説明を求める。
「今回の事件の犯人、女かもしれないぞ」
 佐藤田警部補はそう言って、ニヤリと笑うのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...