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第弐拾玖話-行方
行方-11
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「お待たせ」
合流した絢巡査長が明野巡査に声を掛けた。
「すいませんが先程、話した事をもう一度話して貰えませんか?」
明野巡査はイヴ・ウィンガードにお願いすると「分かりました」と嫌な顔一つせずに話始めた。
「あれは、ここに出店した日でした」
イヴはその日、閉店後のデパートで開店準備の作業を終え帰宅する為に駅構内を歩いていた。滞在してホテルは有楽町線一本で行ける銀座一丁目駅降りて徒歩五分の場所にあったのだが、その有楽町線のホームに行けず駅構内を周回していた。
カタカナとひらがなは読めるイヴであったが、漢字は読めず人に聞こうにも終電間際なので人も足早に動いていた。
イヴが困り果てているとホームレスに声を掛ける英国紳士という言葉が似合う外国人男性が居た。イヴはチャンスだと思い声を掛け、有楽町線の行き方を教えてくれると同時に改札口へと案内してくれた。
「それ以来、その男の人は見てないですね」
「それでなんですけど、その男の人の顔って覚えていたりしますか?」絢巡査長がそう聞くと「その質問は俺が来る前にしました。似顔絵もほら」遊原巡査はスマホのメモアプリに書かれた似顔絵を見せた。
「ぷっ!」最初に吹き出して笑い始めたのは長四郎だった。
その似顔絵は個性溢れる絵であった。
「も、申し訳ありませんが、もう一度、男の顔について教えて頂けませんでしょうか?」
そう頼みこむ絢巡査長は必死に笑いを堪え身体をフルフルと小刻みに揺らしている。
「分かりました」
イヴは快く承諾してくれ、イヴの証言通りに絢巡査長が似顔絵を作った。
「ありがとうございました。あの、こちらはいつまで出店されているんですか?」
「11月末までです」
「もしかしたら、別の刑事が聞き込みに来るかもしれません。お忙しいところ恐縮ですが、その時にご対応願えますでしょうか?」
「構いませんよ。私、自分の国でもこんな経験したことありませんでしたから」
絢巡査長の問いにニコッと笑顔で返すイヴ。
「では、失礼します」絢巡査長が礼をすると、他の三人も礼をしてその場を去った。
四人は有楽町線に乗り、警視庁の最寄り駅である桜田門駅へと向かう。
その車内で、四人だけの捜査会議がひそひそ話で行われていた。
「取り敢えず、この似顔絵の男を追いましょう。長さん」
「う~ん」と絢巡査長の言う事に渋い顔をする長四郎。
「何か引っかかる事でも?」明野巡査がそう聞くと長四郎はコクリと頷く。
「何が引っかかるんですか?」
「言いたいんだけど、ここじゃあ、ちょっと気が引けるお話」
もったいぶる性格やめろよなと心の中で言う明野巡査は「でも、あの店員さん。日本語上手でしたね」と事件とは関係のない話を始めた。
「それ、私も思った」
「ですよね!」
「そんなことは事件と関係ないんだから、話を戻せよな」
「祐希さ、そういう事言う訳? あの人に声を掛ける前、「英語喋れる? 泉」とか言っていた癖に」
「う、うるせぇ。赤点ギリギリの人間に言われたくないね」
「どうして、人の恥ずかしい過去ばらす訳?」
遊原巡査と明野巡査が痴話喧嘩を始めると「ご両人。そこまで、そこまで」長四郎が喧嘩の仲裁に入る。
「ご両人を羨ましいそうに見つめるお方を御覧なさい」そう言う長四郎の視線の先には、顔は笑顔だが目は一切笑っていない絢巡査長の顔があった。
斯くして、警視庁へ戻った四人。
「お疲れ様でぇ~す」遊原巡査がそう言いながら、部屋に居る佐藤田警部補に声を掛ける。
「お疲れ。で、どうだった?」
「犯人らしき男の情報は得ました」明野巡査が答えた。
「男、男ねぇ~」長四郎が電車の中で考えていた疑問をポロっと口に出した。
「え? もしかして、犯人が男って部分に引っかかっていたんですか?」
絢巡査長が確認すると「Yes」と長四郎は答えた。
「あの外人さんの話、聞いている時に気にならなかった?」
「何がです?」明野巡査は何か気になる事があったかを思い出し始める。
「匂いだよ」
「匂いですか? 別に変な匂いしなかったけどなぁ~」遊原巡査は長四郎の言う事に賛同できず首を傾げる。
「あれですかね? 犯人、特有の匂いって奴ですかね?」
「泉ちゃん、ドラマの見過ぎだよ。香水だよ。あの人から微かに男性用の香水の匂いがした」
「でも、化粧品を扱っているんですから男性用のを振りかける事だって」
「そうだよな。でもなぁ~」歯切れの悪い長四郎に「何が不満なんですか?」明野巡査が白黒はっきりさせる質問をした。
「都合の良いタイミングでの証言だなぁ~ そう思っているだけ」
証言を取ってきた若い刑事二人はその一言にムッとする。
「流石は名探偵だなぁ~」ここまで黙っていた佐藤田警部補が口を開いた。
「どういう意味ですか? 班長」遊原巡査が説明を求める。
「今回の事件の犯人、女かもしれないぞ」
佐藤田警部補はそう言って、ニヤリと笑うのだった。
合流した絢巡査長が明野巡査に声を掛けた。
「すいませんが先程、話した事をもう一度話して貰えませんか?」
明野巡査はイヴ・ウィンガードにお願いすると「分かりました」と嫌な顔一つせずに話始めた。
「あれは、ここに出店した日でした」
イヴはその日、閉店後のデパートで開店準備の作業を終え帰宅する為に駅構内を歩いていた。滞在してホテルは有楽町線一本で行ける銀座一丁目駅降りて徒歩五分の場所にあったのだが、その有楽町線のホームに行けず駅構内を周回していた。
カタカナとひらがなは読めるイヴであったが、漢字は読めず人に聞こうにも終電間際なので人も足早に動いていた。
イヴが困り果てているとホームレスに声を掛ける英国紳士という言葉が似合う外国人男性が居た。イヴはチャンスだと思い声を掛け、有楽町線の行き方を教えてくれると同時に改札口へと案内してくれた。
「それ以来、その男の人は見てないですね」
「それでなんですけど、その男の人の顔って覚えていたりしますか?」絢巡査長がそう聞くと「その質問は俺が来る前にしました。似顔絵もほら」遊原巡査はスマホのメモアプリに書かれた似顔絵を見せた。
「ぷっ!」最初に吹き出して笑い始めたのは長四郎だった。
その似顔絵は個性溢れる絵であった。
「も、申し訳ありませんが、もう一度、男の顔について教えて頂けませんでしょうか?」
そう頼みこむ絢巡査長は必死に笑いを堪え身体をフルフルと小刻みに揺らしている。
「分かりました」
イヴは快く承諾してくれ、イヴの証言通りに絢巡査長が似顔絵を作った。
「ありがとうございました。あの、こちらはいつまで出店されているんですか?」
「11月末までです」
「もしかしたら、別の刑事が聞き込みに来るかもしれません。お忙しいところ恐縮ですが、その時にご対応願えますでしょうか?」
「構いませんよ。私、自分の国でもこんな経験したことありませんでしたから」
絢巡査長の問いにニコッと笑顔で返すイヴ。
「では、失礼します」絢巡査長が礼をすると、他の三人も礼をしてその場を去った。
四人は有楽町線に乗り、警視庁の最寄り駅である桜田門駅へと向かう。
その車内で、四人だけの捜査会議がひそひそ話で行われていた。
「取り敢えず、この似顔絵の男を追いましょう。長さん」
「う~ん」と絢巡査長の言う事に渋い顔をする長四郎。
「何か引っかかる事でも?」明野巡査がそう聞くと長四郎はコクリと頷く。
「何が引っかかるんですか?」
「言いたいんだけど、ここじゃあ、ちょっと気が引けるお話」
もったいぶる性格やめろよなと心の中で言う明野巡査は「でも、あの店員さん。日本語上手でしたね」と事件とは関係のない話を始めた。
「それ、私も思った」
「ですよね!」
「そんなことは事件と関係ないんだから、話を戻せよな」
「祐希さ、そういう事言う訳? あの人に声を掛ける前、「英語喋れる? 泉」とか言っていた癖に」
「う、うるせぇ。赤点ギリギリの人間に言われたくないね」
「どうして、人の恥ずかしい過去ばらす訳?」
遊原巡査と明野巡査が痴話喧嘩を始めると「ご両人。そこまで、そこまで」長四郎が喧嘩の仲裁に入る。
「ご両人を羨ましいそうに見つめるお方を御覧なさい」そう言う長四郎の視線の先には、顔は笑顔だが目は一切笑っていない絢巡査長の顔があった。
斯くして、警視庁へ戻った四人。
「お疲れ様でぇ~す」遊原巡査がそう言いながら、部屋に居る佐藤田警部補に声を掛ける。
「お疲れ。で、どうだった?」
「犯人らしき男の情報は得ました」明野巡査が答えた。
「男、男ねぇ~」長四郎が電車の中で考えていた疑問をポロっと口に出した。
「え? もしかして、犯人が男って部分に引っかかっていたんですか?」
絢巡査長が確認すると「Yes」と長四郎は答えた。
「あの外人さんの話、聞いている時に気にならなかった?」
「何がです?」明野巡査は何か気になる事があったかを思い出し始める。
「匂いだよ」
「匂いですか? 別に変な匂いしなかったけどなぁ~」遊原巡査は長四郎の言う事に賛同できず首を傾げる。
「あれですかね? 犯人、特有の匂いって奴ですかね?」
「泉ちゃん、ドラマの見過ぎだよ。香水だよ。あの人から微かに男性用の香水の匂いがした」
「でも、化粧品を扱っているんですから男性用のを振りかける事だって」
「そうだよな。でもなぁ~」歯切れの悪い長四郎に「何が不満なんですか?」明野巡査が白黒はっきりさせる質問をした。
「都合の良いタイミングでの証言だなぁ~ そう思っているだけ」
証言を取ってきた若い刑事二人はその一言にムッとする。
「流石は名探偵だなぁ~」ここまで黙っていた佐藤田警部補が口を開いた。
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