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第参拾弐話-隠密
隠密-17
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長四郎に依頼を出した張本人の山戸霧子は長四郎達四人と清栄にコーヒーを出して、一礼しそのまま部屋を出ていった。
「では、続きを」清栄がそう言うと、長四郎が口を開いた。
「その前にちょっと、良いですか?」
「何でしょうか?」
「今の女性は?」
「彼女は、大島という職員ですが。それが何か?」
「いえ、好みのタイプの女性だったので」
「おい!」燐は長四郎を肘で軽く小突いた。
「内の者がすいません。では、続きを聞かせてください」と明野巡査は清栄に願い出る。
「トォォルンの捜査は正直言って芳しくありません。流通系統は愚か売人まで逮捕できない始末でしてね」
「売人なら先程、逮捕しましたけど」
「はい?」清栄は明野巡査の発言に怪訝な表情を見せる。
「いや、だから。逮捕したんですよ。ねぇ、燐ちゃん」
「はい。末端の人間だとは思いますけど」と燐が言うと、渋い顔をする清栄。
長四郎を除く三人は、警察に先を越されたからこういう表情をするのだろう、そう思っていた。
暫くんお沈黙の後、清栄は「もし宜しければ、合同捜査しませんか?」と提案してきた。
「はいっ! 宜しくお願いします!!」
明野巡査は上司の許可も得ずに、それを許諾する返事をした。
「泉、落ち着け。すいませんが、一度、上司に確認を取った上でお返事をするという事で宜しいでしょうか?」遊原巡査が明野巡査の発言を訂正した。
「構いませんよ。僕らは上の人間のご意向には逆らえないですからね」
「そう言って頂けると助かります。もう良いですか?」遊原巡査が紙ナプキンと睨めっこしている長四郎に質問すると「ああ」という空返事が返ってきた。
「では、我々はこれで失礼します」
四人は席を立ち、息ぴったりに礼をして麻薬取締部本部を後にした。
「全く、なんで、あそこでああいう質問する訳?」燐は帰りの車中で長四郎にそう問うた。
「何でって。気になったら質問してしまう僕の悪い癖」と開き直る長四郎。
「探偵さんって、ああいう女性が好みなんですね」運転する明野巡査がそう言うと、「んなわけなじゃん。あれは、方便」と答えた。
「はぁ? 意味わかんない。何が気になったの?」燐は背もたれから身体を離して横に座る長四郎の方に上半身を向けて詰問した。
「守秘義務」
「教えなさいよ」
「ヤダ」
「ヤダじゃないでしょ」
「ああ、お二人さん。喧嘩しないで」助手席に座る遊原巡査はそう言ってから「もしかして、あの女性が探偵さんの依頼と何か関係があるんですか?」と聞いて来た。
「どうなの?」燐の追撃が入る。
「これだから、勘の良い若造は嫌いなんだよ」
とどのつまり長四郎は事実である事を認めたのだ。
「もっと早くに言いなさいよ」憤慨する燐に遊原巡査は「燐ちゃん。そういう事言ったら守秘義務にならないでしょ」と冷静な答えを出す。
「そうかもだけど」
「それより、私が気になったのは、探偵さん。最後の方何も言わずに紙ナプキン見てましたよね? 何か特殊な物とかだったんですか?」と明野巡査が質問した。
「泉ちゃん。喋っていたのに、よく気づいたね。そう特殊な物だったの」長四郎はジャケットの懐から紙ナプキンを出して燐に手渡した。
「あ、メモが書かれている」
燐の言う通り、メモが書かれていた。その内容は“清栄は裏切り者。要注意されたし”と。
「なんか、嘘くさいな」遊原巡査が真っ先に言った。
「嘘くさいぐらいが丁度、良いんだよ。遊原君」
「そうなんすか?」
「ま、メモを鵜吞みにする必要はないけど。用心しておいた方が良いだろうな。あ、そこで車止めて」
長四郎は空いている路肩を指差して明野巡査に車を停車させるように指示を出す。
「あ、はい」明野巡査は言われた通りに車を停車させると、長四郎は車を降りる。
ドアを閉める前に三人にこう告げた。
「また、何か分かったら連絡するから。捕まえた奴の取り調べ宜しく!」
長四郎はドアをバンッと閉めて、一人人混みの中に消えていった。
「では、続きを」清栄がそう言うと、長四郎が口を開いた。
「その前にちょっと、良いですか?」
「何でしょうか?」
「今の女性は?」
「彼女は、大島という職員ですが。それが何か?」
「いえ、好みのタイプの女性だったので」
「おい!」燐は長四郎を肘で軽く小突いた。
「内の者がすいません。では、続きを聞かせてください」と明野巡査は清栄に願い出る。
「トォォルンの捜査は正直言って芳しくありません。流通系統は愚か売人まで逮捕できない始末でしてね」
「売人なら先程、逮捕しましたけど」
「はい?」清栄は明野巡査の発言に怪訝な表情を見せる。
「いや、だから。逮捕したんですよ。ねぇ、燐ちゃん」
「はい。末端の人間だとは思いますけど」と燐が言うと、渋い顔をする清栄。
長四郎を除く三人は、警察に先を越されたからこういう表情をするのだろう、そう思っていた。
暫くんお沈黙の後、清栄は「もし宜しければ、合同捜査しませんか?」と提案してきた。
「はいっ! 宜しくお願いします!!」
明野巡査は上司の許可も得ずに、それを許諾する返事をした。
「泉、落ち着け。すいませんが、一度、上司に確認を取った上でお返事をするという事で宜しいでしょうか?」遊原巡査が明野巡査の発言を訂正した。
「構いませんよ。僕らは上の人間のご意向には逆らえないですからね」
「そう言って頂けると助かります。もう良いですか?」遊原巡査が紙ナプキンと睨めっこしている長四郎に質問すると「ああ」という空返事が返ってきた。
「では、我々はこれで失礼します」
四人は席を立ち、息ぴったりに礼をして麻薬取締部本部を後にした。
「全く、なんで、あそこでああいう質問する訳?」燐は帰りの車中で長四郎にそう問うた。
「何でって。気になったら質問してしまう僕の悪い癖」と開き直る長四郎。
「探偵さんって、ああいう女性が好みなんですね」運転する明野巡査がそう言うと、「んなわけなじゃん。あれは、方便」と答えた。
「はぁ? 意味わかんない。何が気になったの?」燐は背もたれから身体を離して横に座る長四郎の方に上半身を向けて詰問した。
「守秘義務」
「教えなさいよ」
「ヤダ」
「ヤダじゃないでしょ」
「ああ、お二人さん。喧嘩しないで」助手席に座る遊原巡査はそう言ってから「もしかして、あの女性が探偵さんの依頼と何か関係があるんですか?」と聞いて来た。
「どうなの?」燐の追撃が入る。
「これだから、勘の良い若造は嫌いなんだよ」
とどのつまり長四郎は事実である事を認めたのだ。
「もっと早くに言いなさいよ」憤慨する燐に遊原巡査は「燐ちゃん。そういう事言ったら守秘義務にならないでしょ」と冷静な答えを出す。
「そうかもだけど」
「それより、私が気になったのは、探偵さん。最後の方何も言わずに紙ナプキン見てましたよね? 何か特殊な物とかだったんですか?」と明野巡査が質問した。
「泉ちゃん。喋っていたのに、よく気づいたね。そう特殊な物だったの」長四郎はジャケットの懐から紙ナプキンを出して燐に手渡した。
「あ、メモが書かれている」
燐の言う通り、メモが書かれていた。その内容は“清栄は裏切り者。要注意されたし”と。
「なんか、嘘くさいな」遊原巡査が真っ先に言った。
「嘘くさいぐらいが丁度、良いんだよ。遊原君」
「そうなんすか?」
「ま、メモを鵜吞みにする必要はないけど。用心しておいた方が良いだろうな。あ、そこで車止めて」
長四郎は空いている路肩を指差して明野巡査に車を停車させるように指示を出す。
「あ、はい」明野巡査は言われた通りに車を停車させると、長四郎は車を降りる。
ドアを閉める前に三人にこう告げた。
「また、何か分かったら連絡するから。捕まえた奴の取り調べ宜しく!」
長四郎はドアをバンッと閉めて、一人人混みの中に消えていった。
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