探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

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第参拾肆話-世界

世界-5

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「ここが被害者の灰尾さんが経営する会社です」
 遊原巡査は長四郎にそう紹介する。

 長四郎の頼みにより、警視庁本庁に戻る前に被害者の職場が見たいというので灰尾栄光の職場へと来ていた。

「どうも、副社長を務めております姐母あねもと申します」
 人の良さそうな顔をしているが目は全く笑っていない姐母。

「初めまして。私立探偵の熱海と助手の羅猛です」
 長四郎は名刺を渡しながら、自己紹介する。

「探偵さんが事件を解決するなんて、ドラマみたいですね」

「よく言われます。それで何ですけどね、灰尾さんってKuuun hubでお金の虎チャンネルに出演されてましたよね?」

 Kuun hubという動画プラットフォ―ムでお金の虎というチャンネルに出演していた。
 番組の内容としては、事業の資金提供を求める番組である。そこで灰尾は名物社長として知名度があった。

「よくご存知で。そうです。灰尾はあの番組に出演しておりました」

「ですよね。それでなんですがね、灰尾さん。あの番組で多くの敵を作っていたのではないかと」

「確かに弊社にも苦情のようなものが多く寄せられておりました」

「それって、何か記録に残していたりします?」

「ええ、してますよ。時々、予告めいた物が届きますから」

「見せてもらえたりします?」

「構いませんよ。直ちに用意させますから」

「ありがとうございます」

 斯くして、灰尾宛に届いた苦情? メールを見ることとなった。

「遊原君、知ってた? お金の虎に出演してたって?」

「知らないよ。俺、言われて初めて知ったようなものだから」

「うるさいよ。チミ達」

 メールに目を通す長四郎に注意された二人は「すいません」と声を揃えて謝罪する。

 灰尾に届いたメールの中身は、成金金持ち、品がない、今すぐ辞めろなど苦情というより誹謗中傷であった。

「ねぇ、犯人に繋がるものがあったの?」

「ここに書いているみぃ~んなが犯人」

「何それ?」

「誹謗中傷が多くて、そこに書いている連中に動機があるってことでしょ?」
 遊原巡査の解説に「んな事は分かってるし」と燐は答えた。

「なんか、すいません」

 そんなやり取りも長四郎には聞こえずといった感じで、誹謗中傷メールを読み漁っていく。誹謗中傷とはいうが、全てが全てというわけではなく中には的を得たご意見的なものがあった。

「ふ~ん」
 長四郎はつまらなさそうに的を得たご意見を読み終え、次のご意見はこれまた変わったものだった。部屋の騒音についてだった。

 長四郎は、興味深そうにそのご意見に目を通し始める。

 それは、ご意見というより苦情であった。下の階の住人からで、連日開催されるパーティーがうるさいという苦情だった。

「遊原君。聞き込みってさ、あのマンションの住人からも行ったんだよね?」

「ええ、まぁ」

「下の階の人、何か言ってなかった?」

「俺が聞き込みしたわけじゃないんで分からないです」

「本庁に戻ったら、分かる?」

「多分」

「じゃあ、戻ろうか」

「何か、掴んだんでしょ?」

「何も掴んでないよ。気になる事を発見しただけ」

「ほら、掴んだんじゃない」

「へいへい。掴みました。そういう事で宜しいんざんしょ?」

「なんか、ムカつく。ムカつかない遊原君」

「分かる。俺もちょっと、ムカついた」

 まさかの援護射撃に長四郎はゾッとするのだった。
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