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第2話-救出

救出-6

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 リビングから姿を消した京助はどこに居るのか。それは、うずまさファミリーチャンネルの撮影で使われている撮影部屋であった。
「あーここで撮影しているんだ」京助はそう言いながら、動画で家族が座っているソファーに腰を降ろす。
 そして、部屋をきょろきょろと見まわし、立ち上がってカメラ側に回りそこからまた部屋を見まわす。
「ふ~ん」
 人差し指で自分の顎をトントンと叩き、何かを考えていると部屋のドアが開いた。
「ちょっと、金智さん。何しているんですか! 佐保田さんが怒っていますよ」
 薫がそう言いながら部屋に入って来ると京助は「薫ちゃん、聞いて来て欲しいんだけど」と頼みごとを伝えた。
 薫は京助から預かった言伝を伝えにリビングに戻っていった。
「奴は?」部屋に入って来るや否や、佐保田に京助の様子を聞かれた薫。
「はい。撮影部屋で大人しくしておくそうです。すいませんが、宜しいですよね?」
 浩、エミリに尋ねると「構いませんけど」と浩は答えエミリと顔を見合わせる。多分、撮影部屋に居る意味が分からないのであろう。
「柴咲。犯人から連絡は?」
「今の所はありません」柴咲刑事がそう答えている隙に、薫は太秦夫婦の元へ行き京助から預かった言伝を伝えた。
「あの、撮影の際に使うカメラはどのタイプの物、何ですか? 一眼ですか? スマホのカメラですか?」
「その時々ですが、基本は一眼です」浩がそう答えると「一眼・・・・・・その感じだと状況に応じてカメラを変えているといった感じですか?」薫は自分が気になった事を質問した。
「そうですけど。事件と何か関係があるんですか?」エミリが尋ねる。
「まぁ、可能性の話ですが太秦さんの家に犯人が目を付けた理由としてYouTubeの動画を見たんじゃないかと」
「そんな」思いきりショックを受けるエミリ。
「いや、あくまでも可能性の話ですから。気にしないでください」
「気にしますよ。刑事さん」
 浩にまでも怒られるとは思っておらず、「すいません」としか言えなかった。
「太秦さん。彼女も悪気があっての発言ではないんです。お許しください」
 佐保田は太秦夫婦に頭を下げる。
「いえ、こちらこそ、取り乱してしまって申し訳ない」
 そう発言した浩と共にエミリも頭を下げた。
「二条さん、あまり変な事は言わないように」佐保田に注意され「すいませんでした。以後、気を付けます」と謝罪しその場は収まった。
「では、失礼します」
 薫は京助の居る撮影部屋へと移動した。
 部屋に入ると、京助は窓の向こうの景色を見ていた。
「聞いてきましたよ」薫が声を掛けると「おっ、どうだった?」振り向きながら質問する京助。
「基本は一眼で撮影しているようですよ。でも、その都度、状況に合わせてカメラは変えているそうですよ」
「そうか。それで、何か進展はあった?」
「いえ、なさそうでした。それより金智さんの方は何か分かったんですか?」
「うん、犯人がどうしてこの家を狙ったのかは分からなかったよ」
 その回答を聞き、薫はガクッと肩を落とす。
「分からないって」
「でも、YouTubeの動画だけでこの家の住所を特定するのは結構至難の技だと思うよ」
「そうなんですか」
「でも、例外はある」
「例外?」
「近所の人間だよ」
「すいません。その話だと相次いでいる誘拐事件と関係ない話になってくると思うのですが」
「ま、そうなるよね」
「子供の命が掛かっているんですよ。真面目にやってください」
「真面目は真面目だよ。近所の人間も捜査対象として捜査してみたら」
「そんなに人員は避けません!」
「そんな怒らなくても・・・・・・」
 京助は罰が悪そうな顔で、窓からの景色を眺めるのだった。
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