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第2話-救出

救出-15

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 どうやって、太朗君を見つけたのか?
 それは京助が持つ超能力。違う。違う。断じて、違う。
 大穴が行方をくらまし、過去の事件に関わっていたことが判明した時に思いついたのだ。
 大穴が誘拐した子供は大穴の自宅に連れて行かれているのだと。
 そして、京助は北澤に追加で大穴の今までの転居履歴を調べてもらった。その結果、転職に合せて大穴は家も転居していた。
 そして、今回の事件に合せて引っ越しを行っていた。そこに、太朗君が居ると踏まえて京助は北澤に向かうよう指示を出した。その際に、太朗救出を意味するメッセージ文を北澤に伝えると共に北澤は、太朗救出に向かうまでの時間稼ぎを頼まれた京助。
 廊下で仲間に連絡を取ろうとする佐保田に京助は、「大穴が無実であることが北澤の尽力で証明され、太朗君が監禁されているであろう埼玉県某所の住所に向かっている。到着予定時刻は30分後」と噓の情報を流し、太朗救出までの時間稼ぎを行った。佐保田は大穴に30分後、太朗を解放するように指示を出したのだが、予定よりも30分遅い時刻にメッセージが届いたのはその間に北澤が太朗を救出していたからであった。
 そのおかげで無事に太朗君は救出された。
「以上が、太朗君を救出した経緯です」
 太朗救出の流れを聞き終えた佐保田は「はっ」という言葉だけを発して薫に連れ出された。
「金智さん、この度はありがとうございました」
「ありがとうございました」
 太秦夫婦から礼の言葉をもらう京助は困り顔で「いえ、太朗君が怪我無く帰ってくれればそれで良いですから。それより、YouTubeはやめないでくださいね」と言いながら夫婦にスマホを見せる。
「チャンネル登録しましたから。防犯カメラ設置に関しては、また後日に連絡致しますので」
 京助は太秦夫婦に一礼し、玄関へと向かうと太朗が帰って来るのと出くわした。
「こんばんは!!」
「こんばんは」
 元気よく挨拶してくる太郎に淡々と挨拶を返す京助。
「太朗ッ!!」
 エミリが太朗に駆け寄り抱きしめる。
「母さん、苦しいよ」
「あ、ごめん、ごめん」
「太朗、怪我ないか?」浩が聞くと「ないよ」太朗はきょとんとした顔で答える。
 恐らく太朗には誘拐されていたという自覚がなかったのだろう。
 そんな事を思いながら、京助は太秦家から静かに去っていた。
 その後、佐保田、大穴以外にもメッセージを送信する係の男が一人逮捕された。メッセージを送信する係の男は大穴の自宅で逮捕された。大穴が太秦家に行っている間のお守の為に来ておりそこから佐保田の指示を受けながら、メッセージを送信していたのだ。
 そして、事件を解決に導いた薫に警視総監賞が送られる事になった。
 太秦家は相変わらずYouTuberとして活躍しており、今回の事件のおかげか、登録者数が20万人増えたらしい。
 かく言う京助はというと、普段通り営業の仕事に精を出すのだった。
 だが、この後向かう営業先で事件に巻き込まれるとは、この時の彼はまだ知らなかった。

                                                                                                                                                    完

予告
スポンサー営業の打ち合わせで板橋にある某テレビ局を訪れた京助を待ち受けていたのは、毒殺された男性アナウンサー。
果たして、京助はこの事件を無事に解決できるのだろうか!!
ご期待ください。
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