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第2章:周央学園
5・入学式を終えて
しおりを挟む入学式の今日は、午前中で終わった。
私の入学祝いは少し遅めの昼食会みたいな感じで行う事にしたので、ちい兄や大樹さんたちは遅くてもニ時には来てくれる事になっていた。
家に戻ると、先に戻っていた叔父さんが、食事の準備をしてくれていた。
「ありがとう、私も手伝うよ」
と言ったのだが、
「構わないよ、今日は小花のお祝いなんだから、全部叔父さんたちに任せなさい。父さんと母さんも、今日は店を休みにしたんだし、たまにはゆっくりしてよ」
と言われ、おじいちゃん、おばあちゃんと共に、ありがたく頷いた。
「こはな~、おかえり~」
「はーい、昌央、ただいま~」
料理を作る叔父さん足元に居たらしい昌央が、私を出迎えてくれた。
とてて、と走ってきて、抱き着いてくる。
まだ四歳で幼稚園の年中さんの昌央は、従姉にあたる私にとても懐いてくれている。というか、もう、姉と弟のようなものだ。
「あぁ、小花ちゃん、お帰り」
「ただいま」
続いて現れたのは、叔母さんだ。
と言っても、叔父夫婦は実は、叔父さん叔母さんって呼ぶのが申し訳ないくらい、若い。
叔父さんの圭さんが二九歳で、叔母さんの茜さんが二八歳だ。
本当なら、お兄さんお姉さんって呼ぶべきところなんだけど、私は圭さんの事を昔から「叔父さん」と呼んでいた。
彼を「お兄さん」って呼ばなかったのは、多分、子供の頃から私のそばには、ちい兄がという兄が居たからなのだと思う。
数年前、圭叔父さんが茜さんと結婚する時、これからはお兄さんとお姉さんって呼んだ方がいいかと聞いた事があるんだけど、その時の二人の反応は、私は多分一生忘れられないと思う。
だって二人は笑いながら、
「今さら?」
って言った後、このままでいいよ、て言ったのだ。
「僕はずっと、小花の叔父さんだったし、実際、叔父さんだし」
「じゃあ、私はこれから小花ちゃんの叔母さんになるんだから、叔母さんでいいかな」
これは、圭叔父さんが二四歳、茜叔母さんが二三歳の時の話だ。
今から考えれば、やはりお兄さんお姉さんって呼び直すべきだったと思うんだけど、子供の頃の私はそれで納得し、呼び方はそのままにさせてもらっている。
「小花ちゃん、高校、どうだった?」
「うん、なんかいろんな人が居て楽しそうだよ。どうしてなのかはわからないんだけど、様付けで呼ばれて、困るんだけど」
「様付け?」
「うん、姫って呼ばれてる子も居たよ。お金持ちが行くような学校だからなのかなぁ。あ、そうだ、おじいちゃん、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
私はテーブルに鞄を置きながら、住居スペースへと着替えに戻ろうとしていたおじいちゃんを呼び止めた。
「どうした?」
「あのね、おじいちゃんってさ、理事長と知り合いだったの?」
「は?」
おじいちゃんは首を傾げた。
「ほら、ちい兄たちが来た時に、賢さんが写真を頼んでくれた男の人が居たでしょ? その後、私はちい兄に案内されてクラスの方に行ったけど、おじいちゃんたちはどこかに案内されて行ったでしょ。そこで、理事長と会ってたよね?」
私がそう言うと、
「父さん、崇さんの事じゃない?」
と叔父さんが言った。
え? 崇さん? 理事長を、名前呼び?
「あぁ、崇くんか。うん、あの時、茶に誘われた。お前、見とったのか」
「うん。でも、どうして?」
「久しぶりに姿を見たからって言って、声をかけてくれたみたいだぞ」
「え? どういう事?」
おじいちゃんの話では、さっぱりわからなかった。救いを求めるように叔父さんを見ると、
「崇さん……周央崇理事長は、姉さんの同級生だったんだ。うちにも遊びに来てた事があるから、声をかけてくれたみたい」
と、説明してくれた。
「ちなみに、亘……写真を撮ってくれた人は、僕の同級生だったんだよ」
「そうなの? あのね、周央亘先生、私の担任の先生だよ!」
「へぇ、そうなんだ、世間って狭いねぇ」
「そうだねぇ」
周央学園の理事長と先生が、お母さんと叔父さんの同級生とは驚いたけど、そういう理由だったのかと私は納得した。
だけど……すごい偶然だなぁ。
世間は狭いって言うけれど、こんな事ってあるんだねぇ。
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