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第6章:不和
2・目覚め
しおりを挟む目を開けた私が最初に見たものは、従弟の昌央のドヤ顔だった。
「こはな、おきた! しゃお、しゅごい! しゃお、しゅごい!」
興奮して大声で叫ぶ昌央。しゃお、というのは、自分の事だ。
昌央はまだ自分の事を、「まさお」と言えないので、まを抜かして、「さお」って言っているんだけど、それでも上手く言えなくて、「しゃお」になってしまうのだ。
「こ、小花ー! 良かったですわ! 本当に良かったですわ!」
次に見たのは、親友の茉莉花だった。
茉莉花の顔を見て、私は自分が生きている事を実感した。
茉莉花は私に抱き着いて、泣きながら喜んでくれた。
「こはなーっ!」
茉莉花と同じように、昌央も私に抱き着いてきて、一緒に泣いていた。
目覚めたばかりだけど、さっきまで不思議な夢を見ていたからだろう、私にははっきりとした記憶があった。
私は多分、死にかけていたんだろう。
昌央もすごく心配してくれていたんだろうね。
「小花、本当に良かったですわ。わたくし、小花のおじいさまとおばあさまをお呼びしてきますわね! さ、昌央ちゃまも行きますわよ! 小花はまだ、体が痛い痛いのですわ! 昌央ちゃまの全力を受け止める事はできませんのよ!」
茉莉花が私から昌央を引き離そうとするんだけど、昌央はじたばたと暴れながら、
「こはなのいたいの、しゃおがなおすのー!」
なんて叫んでいる。だけど、駄目です、と叫んだ茉莉花は、私から強引に昌央を引っぺがすと、誰かに声をかけた。
「ではおじ様、すぐに昌幸様たちを呼んできますので、その間、小花の事をよろしく頼みますわね」
おじ様って、誰だろう? 圭叔父さんの事かな?
でも、茉莉花が圭叔父さんの事を、おじ様だなんて呼ぶかな?
そして……ここは一体どこだろう?
知らない天井……ここは絶対に私の部屋じゃない。
病院なのかな?
だけど、病院なら、私が目を覚まして呼びに行くのは、おじいちゃんやおばあちゃんじゃなくって、お医者さんじゃないのかな?
「いっ……」
周りを見ようと首を動かそうとすると、ピリッと首の辺りに痛みが走った。
そして、それが合図だったみたいに、痛みは体全体に一瞬で広がった。
何これ……体の全部が痛い……痛いよっ!
「痛いっ!」
「小花っ! 小花ちゃんっ!」
激痛に悲鳴を上げると、誰かが駆け寄って来た。
駆け寄って来たその人の顔を見て、私は目を見開く。
どうしてこの人がここに居るんだろう?
茉莉花が私を託した「おじ様」は、西園寺勝利――私の父親だったのだ。
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