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第三章:それぞれの思惑
55・責任
しおりを挟む「どうして、どうしてこんな事になったのだ! どうしてこんな事にっ!」
ギルベルトたちが居なくなった後、倒れる騎士や兵士を見渡したオウンドーラ王は、頭を抱えてそう叫んだ。
その様子を見ながら、あなたの交渉の仕方も悪かったのだ、とエドモンド・コールド伯爵は思った。
「我が国の騎士や兵士は、こんなにも弱かったのか? これでこの国を守れるのか? 一体、何故、こんな事になってしまったのだ!」
オウンドーラ王は、視線をエドモンドに向け、睨みつけてきた。
「エドモンド・コールド伯爵! 今回の事は、全てお前の息子のせいだ! いや、息子の悪事に気づかなかった、お前の責任だ! この責任を、どう取るつもりだ!」
「せ、責任と言われましても……」
エドモンドは、困ったようにオウンドーラ王を見つめた。
確かに今回の責任は自分にあるのだろうと思う。
だけど、この責任をどう取るのだと言われても、どう取ればいいのか、全くわからなかった。
三男であるトマスの首を差し出し、爵位を返上して平民に身を落とすくらいで償えるものなら安いものだが、そんな事であの傭兵たちは戻ってきてはくれないだろう。
かと言って、自分たちにはあの傭兵たちのように、戦う力はないのだ。
「もしも魔物たちの襲撃を受けた場合、我々が命をかけて盾になったとしても、一瞬の事でしょうな」
エドモンドが冷静にそう口にすると、オウンドーラ王は深い息をつき、頷いた。
「確かに、そうだな。東と西の第一砦の傭兵に手を引かれたのは大き過ぎる損害だが、失ってしまったものは、もう仕方がないと諦めるしかない……。残りの第二砦と第三砦でこの国を守っていくしかないのだ」
先程よりも少し冷静になったオウンドーラ王がそう言うと、はい、と次男であるアランが頷いた。
アランは王立騎士団所属だった。
今回弟であるトマスがしでかした事に、彼はとても責任を感じていた。
「このたびは、我が愚弟が、申し訳ありませんでした。必ず、私が王都を守り抜きます」
「あぁ、そうしてくれ。アラン、お前は確か、第二砦だったな。これからはそこが最前線になる。すぐに戻って守りを固めろ。それから、傭兵たちがこの国から手を引く理由は知らせずに、各砦に伝令を出せ」
「御意!」
アランは膝をつき、オウンドーラ王に頭を下げると、謁見の間を立ち去った。
オウンドーラ王は、アランを見送った後、再びエドモンドへと目を向ける。
「エドモンド・コールド伯爵、お前はしばらくの間、謹慎だ。その馬鹿息子がこれ以上愚かな事をしないように、見張っておけ。それから今回の責任は、落ち着いたら必ず取ってもらうからな」
「はい、かしこまりました」
コールド伯爵夫妻と長男であるウォルトは、オウンドーラ王に深々と頭を下げ、全ての元凶である三男のトマスを引きずって謁見の間を出た。
これから自分たちはどうなるのだろうと、エドモンドは冷静に今後の事を考えていた。
おそらく、爵位剥奪と財産没収、そして平民へと落とされる事は確実だろう。
それだけで済めば万々歳だ。
最悪は、死――それも、自分たちだけではなく、周りの全てを巻き込んだ、死、だった。
だが、それを理解しているのは、エドモントと妻、そして長男のウォルトと次男のアランだけで、問題の三男であるトマスは、
「ベル……僕の、ベル……どうして僕を置いて出て行くんだ……」
と、自分を裏切り去って行った女の名前を、ぶつぶつと呼び続けていた。
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