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最終章:国の終わり、そして始まり
68・トマスの罪
しおりを挟む街は魔物の襲撃で被害を受けていたが、王宮は残った兵士たちが周りを囲み守っていた事もあり、まだ被害を受けてはいなかった。
兵士と共に王宮へとたどり着いたトマスは、オウンドーラ王の居る謁見の間へと通された。
「お、お前は、あのコールド伯爵の息子ではないか! コールド伯爵家の者は、みんな第二砦に行ったのではなかったのか!」
トマスを見たオウンドーラ王は驚き、トマスを連れていた兵士の顔を見た。
「この者だけ、王都に残ったらしいのです」
「オウンドーラ王、知っていたら教えてください! 父さんたちが行った第二砦はどうなったのですか? どうして、王都にこんなに魔物が入り込んでいるのですか?」
「うるさい、黙れ! まずは報告が先だ!」
オウンドーラ王はトマスに怒鳴りつけると、再び兵士へと目を向けた。
兵士は頷き、報告を行う。
「王都は魔物の襲撃を受け、甚大な被害が出ています! 国民たちは建物の中に隠れているようですが、魔物が建物内に入ってきたり、建物が壊されたりして、襲われています。死者も出ています」
兵士の報告を聞き、オウンドーラ王は一瞬俯いて考え込んだが、すぐに顔を上げ兵士に指示を行う。
「幸い、この王宮は王都にある建物の中で一番頑丈だ。まだ生きている国民を助け、王宮に入れてやれ」
「はっ、かしこまりました!」
兵士はオウンドーラ王に一礼すると、すぐに走り去った。
それを見送ったオウンドーラ王は、深い息をつくとトマスへと目を向けた。
「お、オウンドーラ王! 第二砦に行った僕の家族がどうなったか、知りませんか?」
「確か、トマスと言ったか……。お前、何故、家族と共に第二砦に行かなかったのだ……。そうすれば、家族がどんな気持ちで居たか理解できただろうに……」
「どういう事、ですか?」
「第二砦でお前の家族は、全員死んだ」
「え?」
トマスは耳を疑った。彼は、オウンドーラ王の言った事がすぐには理解できなかった。
「魔物たちが森から出てきて第二砦を襲った時、コールド伯爵と息子二人は、真っ先に飛び出し、そして殺された。それを見たお前の母親も、すぐに魔物の前に姿をさらし、食われたという。全てを見ていた者によると、家族全員での自殺のようだったらしい。実際、そうだったのだろうがな……」
「そんな……どうして……? わ、わからないよ……」
何故家族がそんな行動を取ったのか、トマスには理解できなかった。
わからない、わからないと繰り返すトマスを呆れたように見、オウンドーラ王は言った。
「お前の家族は、この国がどうなるのか、正確に理解していたのだ。傭兵たちが去った後、滅びる可能性は高かった。もちろん、そうならないように考えはしたがな。お前の家族たちは、お前が犯した罪の責任を感じていたのだろう」
「僕の、罪?」
「あぁ、そうだ」
深く頷くオウンドーラ王を見ながら、トマスは自分が犯した罪がどんなものだったかを考えていた。
トマスの罪――それは、ベル・ガンドールを騙して殺そうとし、花嫁のすり替えを行った事だった。
全てはそれが原因で、ギルベルト・ガンドールやフェンリル・エンベリーはこの国から手を引いてしまった。
「僕はただ、僕のベルと、幸せになりたかっただけなんだ。なのに、そのせいで、僕の家族は死んでしまったっていうの?」
そう呟いたトマスに、あぁ、とオウンドーラ王は頷いた。
トマスはぼろぼろと涙を流しながら、まるで幼子のように呟く。
「僕が、僕の家族を死なせてしまったの?」
「そういう事だ。お前のせいで、お前の家族だけでなく、今では一国が滅びようとしている」
「僕のせい……僕の、せいっ……ごめんなさいっ……ごめんなさいっ……」
トマスは家族を失い、国が滅びようとしているのを目の当たりにして、やっと己の罪を理解した。
床に座り込み、額を床にすりつけるようにして頭を下げ続けるトマスを見て、オウンドーラ王はまた深いため息をついた。
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