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第1章・異世界転移と異世界転生

救世主現る?③

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「ヒール……」

 サーチートを抱きしめたまま、私は小さく回復魔法の呪文を唱えた。
 回復魔法がヒールっていうのは、もはやお約束みたいなものよね。

「ヒール、ヒール、ヒール……」

 小さな声で、抱きしめたサーチートにしか聞こえないくらい小さな声で、何度も呪文を唱えた。
 すると、何かが私の胸をぺちぺちと叩いて、

「オリエちゃん」

 という声が聞こえた。
 そっと腕の中のサーチートを覗き込むと、サーチートが私を見上げていた。
 血で赤く染まっていた体は綺麗になっている。
 大丈夫かと声をかけると、サーチートはこくんと頷いて、治してくれてありがとう、と嬉しそうに笑った。

「良かった……」

 サーチートが死んでしまったらどうしようかと思った。
 だって、多分サーチートだけが、私を心から心配してくれる、この世界での味方だ。
 だから、サーチートが私を守ろうとしてくれたみたいに、私もサーチートを守ってあげないと。

「この女、魔物を治しやがった! 怪しいやつめ!」

「ユリアナ様、アルバトス様、お下がりください!」

「こいつら、始末します!」

 私がサーチートを治した事に気づくと、兵士たちが再び剣を向けてきた。
 私は立ち上がり、サーチートの体をぎゅっと抱きしめる。

「オリエちゃん、ぼく、戦うよ! オリエちゃんは僕が絶対に守ってあげるから、大丈夫だよ!」

 サーチートが私の腕の中で、もぞもぞと動いた。
 兵士たちが私に危害を加えようとしている今、またアレを……チクチクアタックとかいう体当たりをやるつもりなのかもしれない。
 今のこの状況、どう考えたらいいだろう。
 兵士たちは、もう完全に私とサーチートを始末する気でいるようだ。
 ユリアナ王女とアルバトスさんはどうだろう?
 もしもユリアナ王女とアルバトスさんが兵士と同じように私を始末しようとしたら、どうすればいいだろう?
 サーチートがチクチクアタックで物理攻撃をしている間に、私は魔法で応戦すればいいだろうか。
 さっき、私はヒールの魔法を使う事ができた。
 回復魔法は、ヒールだった。
 これ、異世界もののラノベとかでの魔法では、お約束のようなものだ。
 それなら、炎の呪文はファイアナントカとかを叫んだら、火の玉だの火の矢などが出てくるのではないだろうか。
 ダメで元々、出来たら儲けって事で、試してみる価値はあるかもしれない。
 よし、いっちょ試してみるか、と決意した私が、身構えた時だった。

「だから、やめろと言っているんだ!」

 ユリアナ王女が怒鳴るように叫び、驚いた兵士たちはそれぞれ剣を落とし、私はサーチートを落っことした。
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