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第1章・異世界転移と異世界転生

再会②

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「何のつもりだ、ユリアナ! 一体どうやってここへ……お前には、王宮に入る許可を出してはいないぞ!」

 腰に下げていた剣を引き抜き、鋭い剣先をユーリに向けて、ジュニアスが言った。

「あなたの許可など、どうでもいい。私は、オリエを迎えに来ただけだ」

 私を背に庇い、ユーリが言い放つ。
 私は嬉しくて、安心して、ユーリの背中に自分のおでこをくっつけた。
 ユーリ、本当に私を迎えにきてくれて、ありがとう……。

「ユリアナ! その女は聖女だ。連れて行くとなれば、これは間違いなく国家反逆罪だぞ。オリエ、ユリアナたちと行けば、ユリアナもアルバトスも犯罪者だ。地の果てまで追いかけて、必ず殺す! それに、そいつらが住むシルヴィーク村の住人も、同罪だ。一人残らず、皆殺しにしてやる!」

「え? そんなっ……」

 ユーリとアルバトスさんだけじゃなく、シルヴィーク村のみんなを殺すって、そんなのひど過ぎる……。

「なぁ、オリエ、わかるだろう? ユリアナたちと、シルヴィーク村を守るためには、ここに残って、私のものになればいいんだ……」

 権力を笠に、ジュニアスは汚い手を使ってきた。
 だけど、ユーリやアルバトスさん、シルヴィーク村のみんなが殺されるのは嫌だった。
 だからジュニアスの言葉に従うべきかと迷っていると、

「オリエがジュニアスの元に行っても、ジュニアスは私や伯父上を殺すと思うよ」

 と淡々とユーリが言った。

「村のみんなだって、そうだ。だから、君が本気でジュニアスのものになりたいというなら別だけど、そうでないなら、私たちに君の運命を、かけてくれないか?」

「ユーリ……」

「もちろん、私たちも何も考えずにここに来ているわけではないさ」

 ユーリはそう言うと、ちらりとアルバトスさんへと目を向けた。
 アルバトスさんは優しく緑の瞳を細めて笑って、頷いてくれる。

 私は、ジュニアスのものになんかなりたくなかった。
 私は、サーチートやユーリ、アルバトスさんの元に居たい。

「わかった! 迎えにきてくれてありがとう、ユーリ、アルバトスさん!」

 頷くと、ユーリが嬉しそうに笑う。
 ユーリが笑うと、私も嬉しかった。
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