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第1章・異世界転移と異世界転生
箱庭の鍵②
しおりを挟む「では、オリエさん。鍵を作りましょう」
アルバトスさんに声をかけられて、私は頷いたものの、作り方を知らない。
ちらりとサーチートを見たけれど、サーチートはふるふると首を横に振った。
どうやらサーチートも知らないようだから、作り方を教えてくれるのは、アルバトスさんという事になる。
「オリエさん、鍵の作り方ですが、結界の存在を感じながら、鍵を作ってみてください」
「ん?」
アルバトスさんは優しく微笑みながら、鍵の作り方を教えてくれたようなのだが、私は言っている意味が全くわからず、首を傾げた。
「あれ? もしかして、わかりませんか?」
「はい、ちょっとわかりません」
「そう、ですか」
アルバトスさんは驚いたようだったけれど、私にはその教え方で何故できると思ったのかが不思議だった。
だけどアルバトスさんがこんな説明をしたっていう事は、私はこの説明でできるって思ったからなんだろうなぁ。
呪文らしいものを教えてくれたわけじゃないから、感覚的なものなのかもしれない。
確かに、私はこの世界に来てからいろんな魔法を使ったけれど、呪文を唱えて何かを行うというよりも、何がしたいかっていう、自分の意思が反映されたものの方が、多かったような気がする。
だとしたら……私はアルバトスさんの言うやり方で、鍵を作る事ができるのだろう。
「オリエさんは、結界の存在は、感じる事はできますか?」
私は目を閉じて、この村を大きく囲っている結界へと、意識を集中させる。
この結界は、この村を守るためのもの――ここには誰も入ってくる事はできないし、誰もここから出る事ができない。
「結界の存在、感じます」
「では、そのまま結界の向こう側に行くために、必要な鍵を思い浮かべてみてください」
「はい」
この結界から出るためと、入るために必要な鍵。
それがなければ、向こうとこちらを行き来する事ができない。
だから、鍵を作りたい。
私は両腕を伸ばし、手のひらを――熱くなった手のひらを、広げた。
多分、できたと思う。
「できた……あれ?」
鍵を作ったはずなのに、目を開けると見えたのは、白く光るピンポン玉くらいの球体だった。
「失敗、しちゃった?」
「いえ、失敗とは限りません。それも鍵なのかも……鍵の形に具現化ができていないだけではないでしょうか」
「どういう事ですか?」
「つまり、鍵の形をしていないだけで、それは鍵だろうという事です」
「これが?」
私はピンポン玉サイズの光の玉を見つめた。
これが鍵かもしれないと言われても、どうやって使うんだろう?
「じゃあ、その鍵、俺が欲しいな。オリエが最初に作った、記念すべき鍵だから」
ユリウスがそう言ったけれど……使うにしろ、あげるにしろ、本当にどうすればいいのだろう?
「オリエさん、ユリウスにその球体を、押し込んでみてください」
「押し込む?」
押し込むとは?
とりあえず私はその言葉のまま、光る急崖を、そっとユリウスの方へと押してみる事にした。
すると、球体はすうっとユリウスの中に、吸い込まれていく。
「これで、いいのかな?」
首をひねる私に、
「実験してみたらいいと思いますよ」
とアルバトスさんが言う。
「そうだね、実験してみよう」
ユリウスの声と共に、私たちは外に出て、外が森に面している結界の境目へと向かった。
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