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第1章・異世界転移と異世界転生

結界の向こう側①

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「うわ、本当に外に出られないんですね」

 うっすらと見える結界の光の壁に手を置き、ジャンくんが言った。

「ジュニアス王子たちの攻撃を弾いたのは見てたんですけど、こちらからは確認してなかったから……。これって、こちらから向こうに何かする事もできないって事ですか?」

 ジャンくんからの質問に、アルバトスさんは、はい、と頷く。

「今、こちらとあちらは、完全に結界によって遮断されている状態です。ただ、先程も説明したかと思いますが、この村に害意の無い動物たちは、入ってくる事ができますね」

 そう言ったアルバトスさんの視線の先には、リスがいた。結界の外から入ってきたリスは、結界内の木にちょこちょこと駆け上がった。
 可愛いなぁ。

「じゃ、俺がやってみよう」

 ユリウスはそう言うと、長い腕を結界に向かって伸ばした。
 鍵を持ったユリウスの腕は、結界を突き抜けて外へと出る。

「オリエの鍵は、ちゃんとできていたみたいだね」

「そうですね。体の中に入っているから、失くさないで済むでしょう。ユリウス、良かったですね」

「えぇ、良かったです」

 ユリウスは頷くと、体ごと結界を超えた。
 そして、中に戻って再び出るという動作を、数回繰り返す。

「村のみんなの使う鍵は、オリエさんの作ったようなものではなく、形のあるものにしましょうね。でも、失くさないように、管理に気をつけなくてはいけません」

「鍵を失くすと、どうなるんですか?」

「そうですねぇ。例えば落としてしまったとして、それを拾った者が、中に入ってくる可能性がありますね」

「そうなんですか?」

「えぇ。だから、鍵の管理はしっかりとしなければならないですし……ユリウスで事足りるのなら、あの子に任せるようにした方がいいんです。ほら、結界の外は、とても危なそうですし……」

 アルバトスさんはため息をつき、ユリウスを見つめる。
 私はアルバトスさんの視線を追ってユリウスの方を見て、

「ひっ」

 と悲鳴を上げた。
 ジャンくんは息を呑み、モネちゃんも私と同じように悲鳴を上げる。
 他の村の人たちも驚く中、ただアルバトスさんだけが、

「ね、危ないでしょう?」

 と淡々と言葉を発し、ユリウスがこちらに背を向けた。
 結界の外に出たユリウスは、いつの間にか狼に囲まれていたのだ。


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