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第2章・のんびりまったりスローライフ?
聖女の慈愛と良くないもの①
しおりを挟む「あの人、なんて戦い方をするんだよ。やっぱ、どんどん人間離れしてる」
なんて言うジャンくんの声も聞こえたけど、怪我はしたけれど、ユリウスが巨大熊を倒した事に、私は胸を撫で下ろした。
「ユリウス! 大丈夫?」
声をかけると、振り返ったユリウスは頷いた。
「オリエこそ、大丈夫か!」
「うん、私はっ……」
私はユリウスの元に駆け寄ろうとしたのだけれど、木にぶつけた背中が痛んで、足を止めてしまった。
「オリエ!」
すぐにユリウスが駆け寄ってきて、私を抱き上げてくれる。
私はユリウスに抱きかかえられながら、彼の傷を治さねばと、ユリウスの左肩を診ようとしたのだけれど、ユリウスは、まずは私の回復が先だと言って聞かなかった。
だから、ユリウスの事が心配だったけれど、まずは自分にヒールをかける。
ヒールをかけると、木にぶつかった時の痛みは瞬く間に消えていった。
「もう、大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
と伝えると、ユリウスは安心したように金色の瞳を細めて笑った。
「次はユリウスの番だよ。でも、あれ?」
左肩にあの巨大熊の強烈な一撃を受けたのだから、ひどい怪我をしているはずなのに、ジャケットを脱がせてみると、予想をしていたほどではなくて、私は驚き首を傾げた。
「どうかした?」
「あ、うん。大した事がなくて良かったって……」
「え? あぁ、戦っていた間に、少しずつ回復していたからね。多分、聖女の慈愛のおかげだと思う」
「聖女の慈愛?」
何それ、と尋ねると、ユリウスは不思議そうな表情で私を見つめた。
「オリエがかけてくれたんじゃないのか? いつの間にか、俺のステータスに表示されてたんだけど……」
「え?」
聖女の慈愛って、何なのだろう?
聖女ってついているからには、きっと私がかけたのだと思うんだけど。
「オリエちゃん、聖女の慈愛っていうのはね、聖女がたった一人の愛する人にかける事ができる、防御系の呪文だよ! 防御力の上昇や、自動回復を行う事ができるんだ!」
サーチートがドヤ顔で説明してくれたけど、その呪文をかけた覚えのない私には、そうなんだ、と呟くしかなかった。
「無意識のうちにかけてくれたって事かな?」
「そうかもしれない」
そんなすごい呪文を、無意識にかけられるのかどうかはわからないけれど、私がその呪文をかける対象は、ユリウスしか居ない。
私はまだユリウスの左肩に残っている、巨大熊がつけた傷をヒールで治しながら、聖女の慈愛という呪文がこれからも彼を守ってくれるようにと願った。
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