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第3章・冒険者デビュー
素敵衣装の行方①
しおりを挟む「じゃあ、この衣装はどうなるんですか?」
それをローレンスさんに尋ねると、彼は苦笑し、言った。
「そうですね、それも貰っておこう、と言っていただければ万々歳ですが、オブリールの商人ギルドの手前、それはないでしょう。だから、そのまま持ち帰りになるのではと思います」
「それでいいよ。アタシ、ジュニアス王子の事、嫌いだし。途中から、ジュニアス王子のためじゃなく、自分のためにこの衣装を作ってたしさ。この衣装は、アタシの最高傑作だよ」
リュシーさんは自分が作ったルリアルーク王の衣装を纏っているユリウスを見て、満足そうに頷いた。
「あの、持ち帰りになった後は、どうなるんですか?」
「そうだね、どうしようか。大金を出しても買いたいって言う奴がいたら、売っちゃうかもしれないけれど、それまでは、商人ギルドから依頼料だけもらって、店に飾っておこうかな。これね、すごく気に入っちゃったんだよね。だから、気に入った相手にしか渡したくないし、ぶっちゃけジュニアス王子に絶対に選ばれたくない」
「じゃあ、もしも売ってもいいって思ったら、私に売ってくれませんか?」
「は?」
私がそう言うと、この場に居る私以外の全員が驚いて、私を見つめた。
「売ってくれって、この衣装、どうするつもりなんだい?」
「もちろん、ユリウスにプレゼントします。だって、こんなに似合うんだもの」
当然のように答えると、ユリウスは困ったように笑い、言った。
「オリエ、申し訳ないけれど、俺は貰ってもこの衣装を着るつもりはないよ」
「どうして? こんなに似合っているのに」
似合っているし、ユリウスだって気に入っているはずだ。
だけど、着るつもりはないとユリウスは言い切った。
「ちょっと、それさ、アタシの作った衣装が嫌いとか、気に入らないっていう意味?」
少し不機嫌そうなリュシーさんに問われたユリウスは、そうじゃないと首を横に振る。
「それはない。あんたが作るものは、すごく気に入っているし、実際、この衣装は素晴らしいよ。ただ、この衣装は俺が着ると、とても目立つんだ。俺は、この世界でとても目立つ容姿をしている。だからこれ以上目立ちたくないんだよ。特に、この国ではね」
この白い軍服は、ジュニアスがルリアルーク王の衣装として作るようにと命じたものだ。
ジュニアスはルリアルーク王の色を一つしか持っていないというのに、全て揃っているユリウスが纏うと、目を付けられてしまうと言うのがユリウスの言い分だった。
確かに、ジュニアスに見つかりたくないもんね。
でも、私としてはユリウスにプレゼントしたいんだよなぁ。
だってこんなに似合っているんだし、絶対に他の人に渡したくない。
ユリウスの話を、聞いたリュシーさんは、確かにそうだね、と苦笑し、ちょっと待っててと言い置いて部屋を出て、銀色の何かを持ってすぐに戻ってきた。
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