上 下
217 / 277
第3章・冒険者デビュー

素敵衣装の行方①

しおりを挟む


「じゃあ、この衣装はどうなるんですか?」

 それをローレンスさんに尋ねると、彼は苦笑し、言った。

「そうですね、それも貰っておこう、と言っていただければ万々歳ですが、オブリールの商人ギルドの手前、それはないでしょう。だから、そのまま持ち帰りになるのではと思います」

「それでいいよ。アタシ、ジュニアス王子の事、嫌いだし。途中から、ジュニアス王子のためじゃなく、自分のためにこの衣装を作ってたしさ。この衣装は、アタシの最高傑作だよ」

 リュシーさんは自分が作ったルリアルーク王の衣装を纏っているユリウスを見て、満足そうに頷いた。

「あの、持ち帰りになった後は、どうなるんですか?」

「そうだね、どうしようか。大金を出しても買いたいって言う奴がいたら、売っちゃうかもしれないけれど、それまでは、商人ギルドから依頼料だけもらって、店に飾っておこうかな。これね、すごく気に入っちゃったんだよね。だから、気に入った相手にしか渡したくないし、ぶっちゃけジュニアス王子に絶対に選ばれたくない」

「じゃあ、もしも売ってもいいって思ったら、私に売ってくれませんか?」

「は?」

 私がそう言うと、この場に居る私以外の全員が驚いて、私を見つめた。

「売ってくれって、この衣装、どうするつもりなんだい?」

「もちろん、ユリウスにプレゼントします。だって、こんなに似合うんだもの」

 当然のように答えると、ユリウスは困ったように笑い、言った。

「オリエ、申し訳ないけれど、俺は貰ってもこの衣装を着るつもりはないよ」

「どうして? こんなに似合っているのに」

 似合っているし、ユリウスだって気に入っているはずだ。
 だけど、着るつもりはないとユリウスは言い切った。

「ちょっと、それさ、アタシの作った衣装が嫌いとか、気に入らないっていう意味?」

 少し不機嫌そうなリュシーさんに問われたユリウスは、そうじゃないと首を横に振る。

「それはない。あんたが作るものは、すごく気に入っているし、実際、この衣装は素晴らしいよ。ただ、この衣装は俺が着ると、とても目立つんだ。俺は、この世界でとても目立つ容姿をしている。だからこれ以上目立ちたくないんだよ。特に、この国ではね」

 この白い軍服は、ジュニアスがルリアルーク王の衣装として作るようにと命じたものだ。
 ジュニアスはルリアルーク王の色を一つしか持っていないというのに、全て揃っているユリウスが纏うと、目を付けられてしまうと言うのがユリウスの言い分だった。
 確かに、ジュニアスに見つかりたくないもんね。
 でも、私としてはユリウスにプレゼントしたいんだよなぁ。
 だってこんなに似合っているんだし、絶対に他の人に渡したくない。
 ユリウスの話を、聞いたリュシーさんは、確かにそうだね、と苦笑し、ちょっと待っててと言い置いて部屋を出て、銀色の何かを持ってすぐに戻ってきた。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

セックスがしたくてしょうがない攻めVSそんな気分じゃない受け

BL / 完結 24h.ポイント:6,137pt お気に入り:9

死が見える…

ホラー / 完結 24h.ポイント:1,874pt お気に入り:2

魔女の弟子≪ヘクセン・シューラー≫

BL / 完結 24h.ポイント:362pt お気に入り:26

神は可哀想なニンゲンが愛しい

BL / 完結 24h.ポイント:255pt お気に入り:23

私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:262pt お気に入り:1,781

Blue day~生理男子~

BL / 完結 24h.ポイント:646pt お気に入り:1,735

男ふたなりの男子小学生の○○を見た結果……

BL / 完結 24h.ポイント:355pt お気に入り:17

自衛隊のロボット乗りは大変です。~頑張れ若年陸曹~

SF / 完結 24h.ポイント:255pt お気に入り:76

処理中です...