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第3章・冒険者デビュー
助けを呼ぶ声①
しおりを挟むサーチートがホイホイして、ユリウスがバッサバッサと倒したゴブリンから左耳を切り取って後始末をした私たちは、一度このネーデの森から出る事にした。
だってね、サーチートが何かを話すたびに、どこからともかくゴブリンが飛びかかって来るんだよ。
ユリウスがそのたびにゴブリンを倒してくれているけれど、キリがないんだよね。
「サーチート、森を出るまで、話しちゃ駄目だよ? わかった?」
抱っこしたサーチートに念を押すと、
「うん、わかったよ!」
小さな手を上げて、サーチートが元気に答えた。
すると森の奥からゴブリンが二匹走って来て、ユリウスに倒される。
こら、と声をかけると、サーチートは小さな手で口元を押さえ、頷いた。
「サーチートのゴブリンホイホイって、一時的なものだといいけど、そうでないなら、サーチート、もう一人で森の中を歩けないんじゃないか?」
「そ、そんなっ!」
ユリウスの言葉にショックを受けたサーチートが、また声を上げ、またどこからともかく飛び出してきたゴブリンは、ユリウスが倒す。
確かにそうかもしれないけれど、今はこの話題をしないほうがいいよね。
サーチートが声を出しちゃうもの。
「とりあえず、本当に一度森を出よう」
追加のゴブリンの後始末を終えたユリウスが言った。
森の中に入って、どのくらいの時間が経っているのかはわからないけど、森に入ってから私たち(主にユリウス)が倒したゴブリンの数は、五十を軽く超えていると思う。
という事は、切り取ったゴブリンの左耳が、それくらいあるという事で……一応雑貨屋さんで提出用の左耳や魔石を入れるための麻袋を買ってきたんだけど、早く提出して手放したい。
「サーチートがお喋り大好きな事は知っているけど、サーチートが喋るとゴブリンがたくさん来ちゃうみたいだから、お願いだから森を出るまで、お口チャックしててね」
今度はうっかり返事をせず、サーチートは口元を押さえたまま、コクコクと頷いた。
街道の方へと森を進むと、あと少しで森を抜けられるというところで、助けてという悲鳴が聞こえた。
「どうしたんだろう! 誰か襲われているのかな!」
「ちょっと、サーチート! 待ちなさい!」
好奇心旺盛でお人好しなサーチートは、私の腕から飛び降りると、声がした方向へと走り出す。
誰かが襲われているのなら、助けてあげなきゃって思ったんだと思う。
だけど今は、ものすごくタイミングが悪かった。
「オリエ、悪いが、先に行く!」
「うん、先に行って!」
このネーデの森には、ゴブリンがたくさん生息している。
誰かが何かに襲われているのなら、襲っているのはゴブリンの可能性が高い。
そんな中にサーチートが飛び込んで行ったら、もっとゴブリンが集まってきちゃうよっ!
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