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14・騎士団の方に助けていただきました
「令嬢、大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」
「は、はい……」
セシリアは頷いた。
「あの……騎士様なのですか?」
「はい、今日は、非番でして……」
男はセシリアと目が合うと、少し照れたように笑った。
『セシリア! セシリア! 無事なのか! 大丈夫なのか!』
セシリアの頭上では、ルミナスバードによって、娘を心配するアルバートの声が響いていた。
セシリアが手を伸ばすと、ルミナスバードはセシリアの指にちょこんと止まる。
「お父様、ご心配をかけて、申し訳ありません。セシリアは無事ですわ。ならず者に連れ去られそうになりましたが、通りがかった騎士団の方に助けていただきましたの」
セシリアがルミナスバードにそう言うと、騎士だと名乗った男は、不思議そうにセシリアと話す小鳥を見つめていた。
どうやら、この小鳥型通信魔道具を、初めて見たらしかった。
『本当に騎士団に助けられたのか? 本当に無事なのか?』
無事だと言うのに、アルバートはまだ信じられないようだった。
心配しすぎだと思ったが、心配をかけているのは自分自身だと反省する。
そのとき、通行人たちが通報したのであろう、大勢の騎士団員が現れた。
「賊は五名だ。全員気絶しているから、騎士団まで連行して尋問してくれ」
セシリアを助けた男がそう言うと、わかった、と騎士団の男たちは頷いた。
「レオン副隊長、そちらが被害を受けられた方ですか?」
騎士団の一人が、セシリアを助けた男に問う。
レオンと呼ばれた男は頷くと、
「こちらの令嬢への事情聴取は、後日でもいいだろう。今は、早く家に帰して差し上げたい」
と部下に指示をし、セシリアを見、それからルミナスバードを見つめ、言った。
「自分の名は、レオン・ハートレイです。ハートレイ伯爵家の三男で、騎士団所属、現在は副隊長の任についております。ご令嬢のお名前とご家名をお伺いしても大丈夫でしょうか」
それはセシリアに聞いたというよりも、ルミナスバードの向こうにいるアルバートを安心させるための言葉のようだった。
それに気づいたのだろう、アルバートはルミナスバードを介して名乗る。
「レオン卿、娘を助けてくれてありがとう。私は、アルバート・グランチェスターだ。君が助けてくれたのは、娘のセシリアだ」
「グランチェスター侯爵閣下でしたか。そしてあなたが、セシリア嬢……」
「はい、セシリア・グランチェスターでございます。レオン様、助けていただきありがとうございました」
レオンは自己紹介をしたセシリアを見つめると、火がついたかのように赤面した。
「じ、自分は、レオン・ハートレイ、ですっ……。セ、セシリア嬢がご無事で、良かったですっ」
「レオン様?」
一体レオンはどうしたのだろうと、セシリアは首を傾げた。
今のしどろもどろな彼と、先程部下に的確な指示をしていた彼と、まるで真逆ではないかと思う。
「お嬢様! 申し訳ありません! ご無事ですか!」
ジゼルが戻ってきて、セシリアの頭のてっぺんから足の先まで確認し、怪我がないか確認する。
「かすり傷程度ですわ」
とセシリアが言うと、ジゼルはセシリアにかすり傷をつけてしまったこともショックだったようで、その場で土下座して泣いて謝った。
「ジゼル、仕方がないことですわ。元はと言えば、わたくしが外に出たいと言ったのがいけないのですわ」
セシリアはそう言うと、土下座を続けるジゼルの背中を撫で、
「ジゼル、もう家に帰りましょう」
と声をかけた。
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