大勢の前で婚約破棄を言い渡されましたが、それは幸せへの道の第一歩でした

明衣令央

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16.ウクブレスト王の苦悩

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 現ウクブレスト王である、ヨハン・ウクブレストの伸ばした手の指先に、小鳥がとまる。
 ヨハンは小鳥に魔法をかけ、息子であるディスタルと、婚約者となったスザンヌを探らせていたのだ。
 彼は小鳥が見聞きしてきた事を確認すると、はぁ、と深いため息をついた。
 役目を終えた小鳥は、ヨハンの指先から飛び立っていく。

「あなた……アリアの件は……」

 ヨハンに声をかけたのは、彼の妻であるヘレナだった。

「あぁ、やはりディスタルとスザンヌが原因のようだった」

 ヨハンは頷くと、また深いため息をついた。

「ディスタル……なんて事を……」
「あぁ……あの精霊に愛されている娘を傷つけるなど……」

 アリア・ファインズはヨハンにとって親友である、エランド・ファインズ公爵の次女だった。
 アリアが精霊に愛されている娘だという事に、ヨハンが気が付いたのは、十年以上も前の事で、彼がヘレナと共にファインズ公爵家に招かれてた時の事だった。
 庭から愛らしい歌声が聴こえ、ヘレナと共にそちらへと目を向けた彼は驚いた。
 歌う少女の周りを、精霊たちが嬉しそうに飛び回っていたからだ。
 ヨハンには、昔から精霊が見えていた。
 だから一目でわかったのだ。
 この少女は精霊たちに愛されており、癒し守る事ができる力を持っている事を。
 そして、少女が精霊たちに愛され続ける限り、精霊たちは少女を守り、少女の願いを叶えるために、力を貸し続けるのだろうと。

 ウクブレスト王国は、近代化が進んだ王国だった。
 最新の兵器を開発し、他国を攻め、領土を広げてきた。
 だが、それと同時に、ウグブレスト王国は信仰と伝統を失っていった国でもあった。
 信仰と伝統を失うという事は、魔力の衰退を意味しており、現にウクブレスト王家の魔力は少しずつ失われていき、ヨハンの父親は魔力を持たずに生まれていた。
 その息子であるヨハンは魔術師であった母の血と考え方の影響で、精霊が見えるほどの魔力を持って生まれたが、後継であるディスタルの魔力は、ささやか過ぎるものだった。
 だから、ヨハンは次代の王となるディスタルのために、この王国のために、精霊に愛されているアリアを求めたのだ。
 だがディスタルは反発し、別の女性を妻にするために、精霊に愛されるアリアを陥れ、傷つけた。

「この国は、精霊たちの怒りを買ってしまったかもしれないな」

 うなだれるヨハンに、ヘレナが寄り添う。
 魔力が衰退したウグブレストは、今後更なる近代化の道を進み、他国を侵略し、恨みを買っていくのだろう。
 近い未来、周りに味方はなく、敵ばかりになってしまうのかもしれない。
 だから、ヨハンはあの娘が欲しかった。
 癒し守る力を持つに、この国を愛し守ってもらいたかったのだ
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