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異世界

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少し古民家ぽい家だが、暇をみつけては住みやすいように作り変えた。
そんなじいさんの家も、畳をとっぱらったらシロアリでぼろぼろだ。
なんとか素人なりに改造してフローリング張りにした。

外ではトイレの浄化槽じょうかそうを埋める穴掘りまでして、後は業者任せで80万円の出費だ。
そんな我が家の居間で液晶テレビに映っているのは、【カミス】を持って活躍している御神恵子おがみけいこだ。

「どうでしたか、22階層の魔物は?」

「オークなんて、たいした事はなかったわ」

「もっと詳しく教えてもらえないでしょうか・・・」

「後は、後ろの連中に聞いて」

足早に報道陣を煙たそうに去った姿は印象的だ。
それを俺は、複雑な気持ちで見ていた。


気を取り成して、箱を取り出して指輪を見詰める。
少し大きな指輪で、裏側にはビッシリと解読不明な文字が刻み込まれていた。
それを左人差し指にはめた。やっぱりぶかぶかだな・・・

え!なぜだ。
指輪がちぢんでるぞ。しだい締め付けだした。

思わず「痛い!」と叫んだ。あ!指輪が消えてしまった。


指を触りまくった。指輪の痕跡こんせきが全然ないぞ。

「どうして、こうなった!」


あ!なんだ。
目の前に透明な画面が現れたぞ。
それに矢印が表示されてる。

画面を触ったが何もない。スカスカだ。

ただ見えるだけか・・・仕方ない。矢印の方向へ行ってみるか・・・
外に出てしまった。そして納屋を指し示していた。

納屋を「ガラッ」と開けると、俺の姿があった。
あれ!なぜだ。納屋に鏡など置いてないはずだ。
この鏡は変だ。鏡の表面が波紋が広がって揺れている。
後ろを覗き込んだが何もないぞ。

矢印は鏡を示している。鏡を指先で突いた。

「あ!やばい、吸い込まれるなんて・・・」




何故だ。麦畑が広がっている。
後ろを振返っても鏡もなく、納屋もなかった。
え!昔風に言えば神隠しにあったのか、それとも異世界に飛ばされた。


そうだ!じいさんに聞いた神須神社の話を思いだした。

青年が鬼退治をして、神の国へ行った話しだ。
そして戻って来た時には強くなっていた。

雨が降らなくて困っていると雨を降らした。
そして怪我をしても治してくれた。

その青年が神としてまつられたのが神須神社だ。

それにしても、画面の右上の数字はなんなんだ。
もしかして時間表示か・・・23:55:22と表示されている。
これが0になれば帰れるのか・・・淡い期待で数字を見詰めた。

【時間が0になれば帰れます】と表示された。

え!と驚きながら助かった。
理由はわからないが安心できたのでゆっくりと見渡した。

あれはもしかして城壁か・・・ここに突っ立ても仕方ない。
あの城壁に行ってみるか重い足取りで歩き出した。

「××××××××」と何か遠くから声が聞こえてきた。

振返るとおっさんが駆けてきた。
え!ここは外国か・・・赤毛のおっさんだ。
しゃべってる言葉が全然分からないぞ。英語でもないしフランス語でもなさそうだ。

透明な画面が又も現れた。【言語通訳】と表示された。
その途端に話す内容が分かりだした。

「何処から来たんだ。あんた、ここの人間じゃないな。それに見た事もない服装だ」

これは定番のごまかすしかない。

「ちょっと頭を打ってしまって、記憶があまりありません。わたしは誰でしょう」

「頭を打ったのか・・・さてはゴブリンにやられたな・・・仕方ない。門番まで案内しよう」

優しいおっさんで助かった。それにここにもゴブリンがいるのか・・・
道中、俺のナイフの話になった。
中々いいナイフだとおっさんは手に取ってほめた。
そして小銭を見せた。デザインに驚き細かな細工に感心してた。



正門の門番に、詳しく説明したのもおっさんだ。
兵士に連れられて、兵舎までやって来た。

「サイラ隊長、この者がゴブリンに襲われて記憶をなくしたみたいです。持ち物から海外の人間ようです」

そのサイラ隊長は、金髪のエルフだ。美人で耳がとがってる。

「どんな物を持っているのか見せてみろ」

あのおっさんと全然違うぞ。恐る恐るナイフを見せた。

「ほうーー変わったナイフだ。金は持ってるのか」

「こんな金しか持ってません」

財布と小銭入れを出して、小銭と1万円札と千円札を見せた。

「そんな金は、ここでは通用しないぞ。金貨1枚で買ってやる」

そう言って金貨を手渡された。

「なんだ。文句がありそうな顔だな。金貨1枚もあれば、ここでは1ヶ月は楽に暮らせるはずだ。ありがたく思え・・・それに通行手形だ」

木札を手渡された。

「再発行は銀貨2枚だ。大事に扱え」

ここはシブシブ従うしかなさそうだ。



兵士に教えられた宿屋にやって来た。

「ここは長期宿泊の宿だから1ヶ月で銀貨1枚だよ。もちろん前金だからね」

仕方ないので金貨1枚を手渡した。
お釣りに金貨より小さい銀貨9枚をもらった。
飯代は別料金らしい。銀貨1枚で寝床は確保できた。
一応、1ヶ月はブラブラと楽に暮らせるみたいだ。

それに、ここには魔物を討伐して暮らす冒険者が居るらしい。
そしてギルドもあるらしい。どんなギルドなのか心配だ。


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