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アルの覚醒
しおりを挟む幾つの砦を攻め落として、1つの貿易都市まで侵攻してきた。
ここは2国を攻めるには重要な拠点であった。
海をバックに港が広がり、都市を守るように高く頑丈な壁で守られている。
壁の外には、人工に作った堀が深く広がっており、人の背たけ以上の深さで進入を阻んでいる。
敵国の難攻不落の都市で、その噂は遠くの国々まで知れ渡っている。
そんな都市とわが軍は、睨みあっている。
港には、何隻も敵船が停泊していて、わが軍の退路を断つ為に準備中だ。
「将軍、ここを攻め落として食料調達しないと、又もイサム殿より食料調達するしかありません」
「いまいましい敵だ。ここまで来る道中の街と村を焼き払い、井戸や水源まで毒を投げ入れ、食料の現地調達を出来なくするとは・・・」
「長距離の食料輸送は、軍が抱える大きな問題だと敵国も分かってますから、イサム殿がいなかったらどうなっていたか・・・」
「港の船がなければ、もっと楽だったはずだ」
「敵国の海軍が強過ぎですから、船の数も3倍と聞いております。なのでわが軍の輸送船は期待できないでしょう」
鳴り響く太鼓の音で戦いは始まった。
魔法士が一斉に火球を放った。俺も一緒に火球を放った。
壁に命中して燃え出している。しかし燃え終わった跡には、黒く焦げた跡しか残らなかった。
俺の火球だけが損傷を与えている。
「火球はダメだな」
レーザー光線は、ここでは使いたくないぞ。
使ったらどんな目で見られるか分かった物ではない。
2つの橋も被害が出るばかりで、攻めあぐねて攻撃と退却の繰り返しだ。
堀を渡る小船は悲惨だ。火球で攻められ燃えながら水に飛び込み溺れ死ぬ。
その死体が浮いているのが、余りにも悲しい過ぎる光景だ。
もうレーザー光線しかないか・・・
『困っているようだな・・・助けてやってもいいぞ』
「お前は、あの時の・・・」
『わたしはアルだ。よろしく頼むぞ・・・イサムの考えは分かってるぞ。あの都市には、女や子供と非戦闘員が大勢いるから殺したくない。兵は殺すか殺されるかで非情になるしかないと納得している。そんな甘ちゃんな性格は好きだぞ』
「アルと言ったな。俺の頭から出て行け」
『それは不可能だ。もうイサムの頭にインプットしてアウトプットして学習効果を高めて状況を理解した。もう脳に定着して離れられない存在になったよ』
「俺を乗っ取る気か・・・それなら考えがある」
『心配するな。そのような行動はしないようにプログラムされている。・・・イサムは興味深い存在だ』
「・・・・・・」
『そんなに悩むな・・・運命だと受入ればいいだけだ。どうだ、あの都市の人々を無傷で戦いを終わらせる事が出来るぞ』
悩んだ末に頼む事にした。
『将軍に戦いを終わらせる条件に殺さない事を約束させるんだ。そうしないと殺される確率は、98%だ』
「そこまで分かるのか・・・」
将軍と面会して約束を取り付けた。
書類にも将軍と貴族の連名でサインがされた。
「サインをしたぞ。約束は守るからドラゴンキラーの力を見せてくれ」
大勢の貴族に見守られながらアルに「好きにやってくれ」と言った。
なんだ!都市の上空にルーン文字が現れたぞ。
これは!魔法陣だ。
それも都市全体を支配する巨大な魔法陣。こんな現象がアルには出来るのか・・・黄金に輝く魔法陣。
その魔法陣から小雨のように何かが、都市に降り注いだ。
そして魔法陣は、嘘のように消え失せている。
「なにがあった・・・イサム殿・・・」
「都市の人々を眠らせました。1日中眠り続けるでしょう。後はお任せしました」
橋を駆け抜けて起用によじ登る兵から「眠ってます!全ての兵が眠ってます!」
その声に導かれるように開門した都市に、雪崩れ込んだ。
女や子供も老人も全ての住人が死んだように眠りこけている。
「こんな事ってあるのか・・・信じられないぞ」
「いいか!殺害や暴行は禁止だ。見つけ次第、首を刎ねるからな!」
「分かってますよ隊長!あのお方に逆らいたくはありませんよ。なあ、みんなーー」
「当たり前だ」
「そうだ、そうだ」
「おーい!船に食料が一杯あるぞ」
「こっちの船もあったぞーー」
「なんて凄い備蓄量だ。食料の心配をしなくて済みそうだ。今回はたらふく喰ってもいいぞ」
「隊長!本当ですか?」
「これだけの量だ。将軍も許可するしかないはずだ」
「それもそうですね」
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