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第123話
しおりを挟む「…いた」
廊下にいるコウハイをそのままに、俺が床を踏みしめる度に自然と人が割れて出来る道を突き進む。
“噂は本当だったのか…”
“会計、笑ってないな…”
“今の会計様…なんか怖い”
“以前のあの方はどこにいったの…?”
“あんなの水無月様じゃない…ッ!!”
“変わってしまわれても…水無月様は水無月様、だよね…?”
“ぼくらはただ、あの方を信じて着いてくだけでいい”
“…でも、怖いよ…”
“怖い”
“怖い”
“怖い”
この短時間だけで、様々な雑音が耳に入ってくる。
それは、先程までコウハイとオシャベリしていたおかげで意味をなしていなかった、有象無象共の恐怖。
─あぁ、本当に
「ウゼェ」
あまりの五月蝿さ舌打ちを零せば、まるで潮が引くかのように教室内は一気に静まり返る。俺が態とたてる足音と答えが支度をする音以外、何も聞こえない。
殺人鬼でも見るような視線の多さにウンザリしながらも答えの背後に立てば、観客の息を呑む音がした。
つか、なんでこの人この状況で普通にしてんの?
「何か用ですか?」
「…なんだ、気付いてたか」
コチラを見ないまま声をかけてきたその人の前方へと回り込めば、切れ長な青色の眼と視線が合った。
「この状況で気が付かない者などいないでしょう」
「まっ、それはそうだ」
そう口元のみで軽く嗤ってみせただけだというのに、あっという間に教室内の人口密度は縮小する。
「やれやれ、外した途端にコレか。仮にも俺の親衛隊隊員っぽいのもいたというのに……全く、酷いコトだと思わないか?」
「そう思うのであれば、再び被ってみたらどうです?」
「そんなメンドイコト、俺がするワケないだろ。つか、ンなコトオシャベリする為に来たワケじゃねェんだわ」
悠々と室内へ足を踏み入れたコウハイを視界の端に捉えながら、眼前で座っている学生時代の上司を見下ろす。
「華織学園生徒会副会長相模零斗、キミがもう1人の子飼いだろ」
「……えぇ、よく分かりましたね」
どこか憂いを帯びたような表情で笑う副会長は、あの日意味なく1人俺に謝罪をして逃げたときと酷似していた。
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