135 / 138
第124話
しおりを挟む「私に与えられた任務は、ただ愚かな人物を演じることでした」
無機質な机へと視線を落とし、訊いてもいないことを零す。
「転入生である柳瀬春人──この学園に存在し得なかった彼の言動に魅了され、まさに盲目的に彼のことを崇め、従う、愚かな信者」
─それが、この私に当てられた役でした。
ぽつぽつ、ぽつぽつ。他に誰が聞いているかも分からないような状況で、ソイツは1人語り続ける。
さらりと耳に掛けられていた紺髪が滑り落ち、その端正な顔に一筋の影がかかった。
「何故私がと思いました。転入生を監視するならば、もっと相応しい者がいるはずなのに、と」
段々と顔は内側へと向いていき、やがて俺からはカタチの良い頭部しか見えなくなった。
─何故この俺が、コイツの自己満を聴かなくてはならないんだ?
「しかしこの学園にいる限り、私には拒否権などという便利な物はありません。理事長が何をしたかったのかは分かりませんが、きっと碌でもない事だったのでしょうね」
よく分からない言い訳を次から次へと並べていく年上を見下ろしながら、そんなどうでもいいコトを考える。
「私の中での愚かな人物像は、己の思考を停止し、己の役目を放棄するような者でもありました。ですから私は、己に課されてしまった任務を果たす為に─」
「─はいストップ」
気分がだだ下がる身勝手な言い訳になってきたトコロで、近くまで寄ってきた第三者の声がそれを遮った。
「いい加減、そのよく回る口閉じてくんねぇ?」
「なんだ、時間切れか?」
「そっ、アンタのね」
「よく分かってんな」
副会長越しに同類と会話をすれば、切れかかった堪忍袋の緒はアッサリとほぼ元通りになる。
「(やっぱ、余計なストレスはさっさと排除すべきか)」
「一応不良品リストに載ってないんで」
「はいはい、ジョーダンだって」
死んだ表情のまま、巫山戯たように軽く両手を上げてみせれば、どうやら今回は見逃してくれるらしい。コウハイの矛先は俺から逸れ、未だ立ち上がれていない副会長へと向けられた。
「“任務が~”とか“権利が~”とか、色々言ってたケドさぁ」
俺の近く─つまり副会長の眼前へと移動しながら、コウハイは嗤う。
「お前の自己満な言い訳とかショージキどーでもイイんだわ」
蔑みの色を宿した大きな青い双眼に見下された彼は、いつの間にか再び見えるようになった同色の瞳を戸惑いで揺らした。
「つーか、それ言うならオレも当てはンだけど」
─誰が好きで騒音発生機を演じるかッての。
ケッと、実に嫌そうにその愛らしい顔を歪めて吐き捨てる。
「で、ですが貴方は初めからずっと……いやまさか、選別をする為だけに華織学園へ…?」
「やっと気付いたンかよ」
普段の笑顔を無くし、呆然とした表情をした彼を嘲笑う。
「それだけお前が完璧だったということだ。現に、同じ俺でもあの瞬間まで見破れなかった」
「ナニ、コレのこと庇ってんの?」
どこか面白くなさそうな暗い目をしたコウハイの視界には、先程まで己が嗤ってた対象者の姿は既に無い。
「なんだ、俺に認められるのは癪か?」
「あーもー…、やっぱセンパイも死んでクダサイよ」
「生憎だが、俺は殺したいんで無理だな」
正常なニンゲンからすれば意味不明であろう、まさに狂ったコトを脈絡無く発する。
「何を、言っているのですか…?」
最早困惑の色を隠しもしなくなった副会長の、どこか上擦った声が空虚な教室内に響いた。
43
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
もういいや
ちゃんちゃん
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが……
まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん!
しかも男子校かよ………
ーーーーーーーー
亀更新です☆期待しないでください☆
ブラコンネガティブ弟とポジティブ(?)兄
むすめっすめ
BL
「だーかーらっ!皆お前に魅力があるから周りにいるんだろーがっ!」
兄、四宮陽太はブサイク
「でも!それって本当の僕じゃないし!やっぱみんなこんな僕みたら引いちゃうよねぇ〜
!?」
で弟、四宮日向はイケメン
「やっぱり受け入れてくれるのは兄さんしかいないよぉー!!」
弟は涙目になりながら俺に抱きついてくる。
「いや、泣きたいの俺だから!!」
弟はドのつくブラコンネガティブ野郎だ。
ーーーーーーーーーー
兄弟のコンプレックスの話。
今後どうなるか分からないので一応Rつけてます。
1話そんな生々しく無いですが流血表現ありです(※)
ひみつのモデルくん
おにぎり
BL
有名モデルであることを隠して、平凡に目立たず学校生活を送りたい男の子のお話。
高校一年生、この春からお金持ち高校、白玖龍学園に奨学生として入学することになった雨貝 翠。そんな彼にはある秘密があった。彼の正体は、今をときめく有名モデルの『シェル』。なんとか秘密がバレないように、黒髪ウィッグとカラコン、マスクで奮闘するが、学園にはくせもの揃いで⁉︎
主人公総受け、総愛され予定です。
思いつきで始めた物語なので展開も一切決まっておりません。感想でお好きなキャラを書いてくれたらそことの絡みが増えるかも…?作者は執筆初心者です。
後から編集することがあるかと思います。ご承知おきください。
お飾りは花だけにしとけ
イケのタコ
BL
王道学園で風紀委員長×生徒会長です
普通の性格なのに俺様と偽る会長に少しの出来事が起きる
平凡な性格で見た目もどこにでもいるような生徒の桃谷。
ある日、学園で一二を争うほどの人気である生徒会ほぼ全員が風紀委員会によって辞めさせられる事態に
次の生徒会は誰になるんだろうかと、生徒全員が考えている中、桃谷の元に理事長の部下と名乗る者が現れ『生徒会長になりませんか』と言われる
当然、桃谷は役者不足だと断るが……
生徒会長になった桃谷が様々な事に巻き込まれていくお話です
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
『定時後の偶然が多すぎる』
こさ
BL
定時後に残業をするたび、
なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。
仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。
必要以上に踏み込まず、距離を保つ人――
それが、彼の上司だった。
ただの偶然。
そう思っていたはずなのに、
声をかけられる回数が増え、
視線が重なる時間が長くなっていく。
「無理はするな」
それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、
彼自身はまだ知らない。
これは、
気づかないふりをする上司と、
勘違いだと思い込もうとする部下が、
少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。
静かで、逃げ場のない溺愛が、
定時後から始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる