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それがご馳走になる
それってご馳走になる?(望景政視点③)
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マスターにお礼を言われて、笑みを返している人が佐丸さんか。前に、実時からマスターの恋人だと聞いた。大人しそうな感じだが、妙にエロい時があるらしい。
「望と右田、来てたんだ。」
「さっき来たところ!佐丸くんは買い出し?」
「そうだよ。ちょっと顔を出したら頼まれた。そちらは?」
「香さんと、弟の景政!」
「ああ!右田のお兄さんで、望の恋人の。香さんは、学祭に来てくれたんだよな。あの時はいろいろあって、よく覚えてなかったんだけど…。弟…?えっ?!」
俺が挨拶をすると、須野さんと同じ反応をされた。女子と見間違えられても、声を聞くと男だと分かってくれる。
「あ!佐丸くんに詳しく教えてもらったから、香さんとの仲がものすごく深まった!ありがとう!」
「そ、それは良かったけど、相手がいるところで、面と向かって言われるのはすごく恥ずかしいよ…。」
「…俺も居た堪れない。」
佐丸さんは顔を赤らめて俯き、香さんは呟きながら遠い目をしている。2人の反応から、夜の親睦についてのことだと察した。
実時は自分の気持ちに正直過ぎるというか、大っぴらなところがある。俺は気にしないが、家族にこの手の話を聞かれたくない気持ちはわかる。香さんがこれ以上気まずくならないよう、話題を変えることにした。
「私だって、昨夜、右田さんとの仲をものすごく深めたわよ!」
「んんん?そういえば、ベッドがやけに整ってると思ったけど!」
「使ってねぇからな。」
「あれ?でも、枕は布団に1つしか置いてなかったような?」
「使ってねぇからな。」
「園、もっとわかりやすく話そうか?」
「布団で一緒に寝たけど、こいつは俺を抱き枕にしたから、枕を使ったのは俺だけってこと。」
ご注文をお伺いします!と言いながら、俺達の席にすばやく現れた須野さんの目が怖いくらい輝いていた。他のお客さんに呼ばれると、佐丸さんに早く行くように仕向けてて可笑しかった。
「景政くんの言葉遣いも気になるけど、それ以上に右田との仲が気になる!のんちゃん、また詳しく教えてね!」
「わかった!」
ランチタイムの忙しさに、途中で話を聞くことを諦めた須野さんが、注文を受けて去っていった。
「右田のことをゼッタイ気に入ってるって、昨日から思ってたけど、一緒に寝るってすごくないか?べたべたするなんて景政のキャラじゃないのにな!」
「自分でも不思議だけど、右田さんにくっついていると落ち着くのよね。だから、離れたくないっていうか!」
「それわかる!俺もそう!香さんから離れたくない!」
実時が、隣に座る香さんの腕に擦り寄りながらにこりと笑うと、香さんが実時の頭を撫でながら優しげに微笑む。
同じようなことをしていても、俺と右田さんは付き合っていない。そう考えると、目の前にいるカップルがとても羨ましかった。
「どうした?」
「恋人っていいなあって思ったの。」
「お前ならすぐ出来んだろ。」
「そうかしら?」
それなら右田さんが恋人になってよ!とは、言えなかった。誰とも付き合った経験のない俺には、今までのノリで簡単に言えるようなセリフではなかった。
忙しく動き回る間も、温かい視線を交わし合うマスターと佐丸さんも羨ましかった。微笑ましい2組の同性カップルを見て、俺も右田さんと付き合えたらいいのにと思った。
「のぞくん、今日は何だか元気がないね。お兄さん達と遊びに行って疲れた?」
「疲れてはいないんだけどね。えばちゃん、この後って時間ある?」
「あるよ。お茶を飲みながら話そうか?」
俺は友人と浅く広く付き合う方だが、その中で荏原は一番気安い。2人きりだと恋愛感情を抱かれてしまい、俺が断ると疎遠になることがよくあったが、彼女とは良好な友人関係を保つことができている。
「兄カップルを見ていたら、羨ましくなったの。」
「仲良しカップルだったんだね。でも、そんなことを思うなんて珍しいよね?」
「そうなの。今までこんなこと、思ったことがなかったんだけど。」
「心境の変化があったんだな。気になる人でもできた?」
「当たり!でも、経験がないから、これからどうしたらいいのかわからなくて。」
「初めてのロマンスだね!相手はどんな人?」
「んー…、食わず嫌いな物をご馳走にしてくれる人ね!」
「思い込みを覆してくれる感じ?それって、うちのお兄ちゃんの恋人みたい。」
右田さんに似てると聞いて、荏原兄の恋人に興味が湧いた。
「すごい美丈夫で、お兄ちゃんと一緒に住んでるんだ。その人に、今は離婚率が高いし、高齢出産が増えたりして、子どものいない家庭だって普通にあるんだから、男同士で仲良く暮らすことも一つの幸せの形だって諭されて、なるほどなと思ったの。」
「ん??お兄さんの恋人は男性?」
「そう!私は初めから同棲だって茶化してたんだけど、お兄ちゃんや両親は、ただのルームシェアだって言っててね。でも今じゃ、家族公認の仲だよ。」
「えばちゃん、何気に鋭いわね!私の気になる人とちょっとタイプは違うけど、男っていうのは同じよ。」
「そうなんだ!のぞくんの参考になるなら、2人に会ってみる?お兄さんに聞けないことも、気軽に聞けるかもしれないし。うちのお兄ちゃんはそうでもないけど、大芝さんはとってもフレンドリーな人だから。」
荏原のとても気持ちは嬉しかったけど、兄とは何でも話せる仲だから大丈夫と伝えた。気になる人とは、3回(うち2回はまともに会話をしていない。)しか会ったことがないと話すと、「まずはもっと会って話してみた方がいいね。」と、的確なアドバイスをもらった。
「望と右田、来てたんだ。」
「さっき来たところ!佐丸くんは買い出し?」
「そうだよ。ちょっと顔を出したら頼まれた。そちらは?」
「香さんと、弟の景政!」
「ああ!右田のお兄さんで、望の恋人の。香さんは、学祭に来てくれたんだよな。あの時はいろいろあって、よく覚えてなかったんだけど…。弟…?えっ?!」
俺が挨拶をすると、須野さんと同じ反応をされた。女子と見間違えられても、声を聞くと男だと分かってくれる。
「あ!佐丸くんに詳しく教えてもらったから、香さんとの仲がものすごく深まった!ありがとう!」
「そ、それは良かったけど、相手がいるところで、面と向かって言われるのはすごく恥ずかしいよ…。」
「…俺も居た堪れない。」
佐丸さんは顔を赤らめて俯き、香さんは呟きながら遠い目をしている。2人の反応から、夜の親睦についてのことだと察した。
実時は自分の気持ちに正直過ぎるというか、大っぴらなところがある。俺は気にしないが、家族にこの手の話を聞かれたくない気持ちはわかる。香さんがこれ以上気まずくならないよう、話題を変えることにした。
「私だって、昨夜、右田さんとの仲をものすごく深めたわよ!」
「んんん?そういえば、ベッドがやけに整ってると思ったけど!」
「使ってねぇからな。」
「あれ?でも、枕は布団に1つしか置いてなかったような?」
「使ってねぇからな。」
「園、もっとわかりやすく話そうか?」
「布団で一緒に寝たけど、こいつは俺を抱き枕にしたから、枕を使ったのは俺だけってこと。」
ご注文をお伺いします!と言いながら、俺達の席にすばやく現れた須野さんの目が怖いくらい輝いていた。他のお客さんに呼ばれると、佐丸さんに早く行くように仕向けてて可笑しかった。
「景政くんの言葉遣いも気になるけど、それ以上に右田との仲が気になる!のんちゃん、また詳しく教えてね!」
「わかった!」
ランチタイムの忙しさに、途中で話を聞くことを諦めた須野さんが、注文を受けて去っていった。
「右田のことをゼッタイ気に入ってるって、昨日から思ってたけど、一緒に寝るってすごくないか?べたべたするなんて景政のキャラじゃないのにな!」
「自分でも不思議だけど、右田さんにくっついていると落ち着くのよね。だから、離れたくないっていうか!」
「それわかる!俺もそう!香さんから離れたくない!」
実時が、隣に座る香さんの腕に擦り寄りながらにこりと笑うと、香さんが実時の頭を撫でながら優しげに微笑む。
同じようなことをしていても、俺と右田さんは付き合っていない。そう考えると、目の前にいるカップルがとても羨ましかった。
「どうした?」
「恋人っていいなあって思ったの。」
「お前ならすぐ出来んだろ。」
「そうかしら?」
それなら右田さんが恋人になってよ!とは、言えなかった。誰とも付き合った経験のない俺には、今までのノリで簡単に言えるようなセリフではなかった。
忙しく動き回る間も、温かい視線を交わし合うマスターと佐丸さんも羨ましかった。微笑ましい2組の同性カップルを見て、俺も右田さんと付き合えたらいいのにと思った。
「のぞくん、今日は何だか元気がないね。お兄さん達と遊びに行って疲れた?」
「疲れてはいないんだけどね。えばちゃん、この後って時間ある?」
「あるよ。お茶を飲みながら話そうか?」
俺は友人と浅く広く付き合う方だが、その中で荏原は一番気安い。2人きりだと恋愛感情を抱かれてしまい、俺が断ると疎遠になることがよくあったが、彼女とは良好な友人関係を保つことができている。
「兄カップルを見ていたら、羨ましくなったの。」
「仲良しカップルだったんだね。でも、そんなことを思うなんて珍しいよね?」
「そうなの。今までこんなこと、思ったことがなかったんだけど。」
「心境の変化があったんだな。気になる人でもできた?」
「当たり!でも、経験がないから、これからどうしたらいいのかわからなくて。」
「初めてのロマンスだね!相手はどんな人?」
「んー…、食わず嫌いな物をご馳走にしてくれる人ね!」
「思い込みを覆してくれる感じ?それって、うちのお兄ちゃんの恋人みたい。」
右田さんに似てると聞いて、荏原兄の恋人に興味が湧いた。
「すごい美丈夫で、お兄ちゃんと一緒に住んでるんだ。その人に、今は離婚率が高いし、高齢出産が増えたりして、子どものいない家庭だって普通にあるんだから、男同士で仲良く暮らすことも一つの幸せの形だって諭されて、なるほどなと思ったの。」
「ん??お兄さんの恋人は男性?」
「そう!私は初めから同棲だって茶化してたんだけど、お兄ちゃんや両親は、ただのルームシェアだって言っててね。でも今じゃ、家族公認の仲だよ。」
「えばちゃん、何気に鋭いわね!私の気になる人とちょっとタイプは違うけど、男っていうのは同じよ。」
「そうなんだ!のぞくんの参考になるなら、2人に会ってみる?お兄さんに聞けないことも、気軽に聞けるかもしれないし。うちのお兄ちゃんはそうでもないけど、大芝さんはとってもフレンドリーな人だから。」
荏原のとても気持ちは嬉しかったけど、兄とは何でも話せる仲だから大丈夫と伝えた。気になる人とは、3回(うち2回はまともに会話をしていない。)しか会ったことがないと話すと、「まずはもっと会って話してみた方がいいね。」と、的確なアドバイスをもらった。
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