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バイト仲間の由良川と、その幼馴染チカちゃん
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バイトの中で一番仲が良いというか、勝手に懐かれているだけなんだけど、今日も同じシフトだった由良川に、「奢ってやるから話を聞いてくれ!」と、近くのファミレスに連行された。
話というのは、多分、由良川がずっと片想いをしている幼馴染の色々だろう。過去に何回も聞かされているからわかる。「断られたら気まずくなるから無理!」と、告白できないでいることも。
ドリンクバーで、2杯目を入れて戻ってきた由良川に、ポテトをつまみつつ、俺の方から切り出す。
「話って、チカちゃん関連?」
「なんでわかった!?」
「それしかないじゃん」
「才原は察しがよくて助かるわ~。そんな君には、今度の金曜日、高篠を誘惑してもらいたい」
「…高篠って誰?由良川やチカちゃんと同じ大学のやつ?誘惑って…。もう、これ以上の詳しい話を聞きたくないんだけど」
「これだけで、引き受けてくれるのか?!長期戦覚悟だったから、ちょr、拍子抜けだわ~!」
「なんでそっちの方だと思った!?断る方に決まってんだろ!今、ちょろいって言おうとしなかったか?」
「え~~!!してない!してない!」
上目遣いで「ダメ?」とか聞かれても、かるい殺意が芽生えるだけで、俺の答えは変わらない。
由良川とは、バイト先が同じってだけなので、交友関係はほとんどかぶっていない。だから、チカちゃんに会ったことはないし、当然、高篠ってやつとも面識がない。そんな関係性の俺だから、協力して欲しいのだという。
「だいたい、誘惑するなんて無理。俺に彼女がいたことないのは、由良川だって知ってんだろ?おまえの周りのモテメンにでも頼めよ」
「だ・か・ら、チカちゃんや高篠を知らない人間じゃないと、この作戦はうまくいかないんだって!それに、高篠は男だからモテメンである必要はない!俺が高篠を金曜日の飲み会で、ぐでんぐでんに酔わせてラブホに連れ込むから、才原は、証拠の写真にそいつとツーショットで収まってくれればいいんだよ」
「はあ?男?ラブホでツーショット?…意味不明だけど、それって誘惑でもなんでもないじゃん」
「まあ、聞けよ。補足するとだな、ロングのヅラでもつけて、高篠に添い寝するみたいなポーズをしてくれたらいい。まるで、酔っ払って致しちゃいました的な?こんなこと女の子には頼めないし、男に頼むにしろ、面割れしてない方がいいだろ?才原は男にしては華奢だしな。高篠は、あー見えても真面目だから、既成事実を作っちゃえばいけると思うんだよ」
由良川が、超ゲス顔を浮かべている。こわいし、キモい。
酔っ払って寝こけたやつと、一緒の写真に入るだけなら俺にもできる。最初にものすごく無理な要求をされたせいで、こんなのどうってことないと思えてくる。由良川って、頭悪そうに見えてけっこう策士なのか?あ、そういえば、こいつの大学、偏差値が高めだった。
「作ってどうするんだよ?いけるってどういうこと?」
「高篠はモテモテのくせに、現在フリーだ。だから、チカちゃんが、高篠にアタックしそうになっている。俺はそれを絶対に阻止しなければならない。なぜかって?あんなにかわいいチカちゃんを、高篠が断るわけがないから!チカちゃんの貞操を、あいつに散らされてたまるか!!」
「…ぜんぜん、俺の質問に答えてないから」
「そうか?ちょっとはヒントあったろ?さっきも言ったけど、高篠って根は真面目だから、一夜のあやまちと言えども責任を取って、致しちゃった子と付き合おうとすると思うわけ。実際のところ、致してもないし、女の子でもないけどな。存在しないその子を探している間は、誰に告白されても断ると思うんだ。結果、チカちゃんはフラれちゃうことになるけど、俺が心身ともに慰めるから万事オッケー!!」
「おまえ、本当によくしゃべるな…。写真を撮るだけならできるけど、知らない相手でも騙すのは気が引けるよ。由良川がチカちゃんに、さっさっと告れば済む話じゃん」
「済んでも、バッドエンドだったらどうすんの?ハッピーエンドじゃなきゃ、俺、泣くよ?号泣するよ?」
「思う存分泣けよ。そんで、自分の流した涙で溺れろ」
「やだ!やだ!溺れるなら、チカちゃんの愛に溺れたい!」
ちらちらと、「俺、うまいこと言ったろ?」みたいに見てくるけど、さっきより殺意が高まっただけだ。
「才原は、俺よりも、見ず知らずの男の肩を持つのか?こんなにも頼んでいるのに!!」
「肩を持つとか、そんな話じゃないだろ」
「だって!だって!チカちゃんを誰にも渡したくないんだよ~!」
目を背けたくなるような汚い顔で泣きつかれそうになって、結局、嫌々ながらも引き受けてしまった。
「一瞬だけだからな!他はすべて由良川がやれよ。あと、共犯っていう扱いはごめんだ。俺は巻き込まれた被害者の方だ」
「才原ありがとう!!そんなのわかってるって!金曜日は、駅前の居酒屋で飲むから、21時くらいにその辺でスタンバってて。連絡入れるから!」
しぶしぶ頷いた俺に、「男3人で入っても平気な、無人受付のラブホも見つけてあるから!」と、ウィンクつきのキメ顔を向けてきたので、唐揚げに付いていたレモンを、由良川の目の前で搾ってやった。悪霊退散!
話というのは、多分、由良川がずっと片想いをしている幼馴染の色々だろう。過去に何回も聞かされているからわかる。「断られたら気まずくなるから無理!」と、告白できないでいることも。
ドリンクバーで、2杯目を入れて戻ってきた由良川に、ポテトをつまみつつ、俺の方から切り出す。
「話って、チカちゃん関連?」
「なんでわかった!?」
「それしかないじゃん」
「才原は察しがよくて助かるわ~。そんな君には、今度の金曜日、高篠を誘惑してもらいたい」
「…高篠って誰?由良川やチカちゃんと同じ大学のやつ?誘惑って…。もう、これ以上の詳しい話を聞きたくないんだけど」
「これだけで、引き受けてくれるのか?!長期戦覚悟だったから、ちょr、拍子抜けだわ~!」
「なんでそっちの方だと思った!?断る方に決まってんだろ!今、ちょろいって言おうとしなかったか?」
「え~~!!してない!してない!」
上目遣いで「ダメ?」とか聞かれても、かるい殺意が芽生えるだけで、俺の答えは変わらない。
由良川とは、バイト先が同じってだけなので、交友関係はほとんどかぶっていない。だから、チカちゃんに会ったことはないし、当然、高篠ってやつとも面識がない。そんな関係性の俺だから、協力して欲しいのだという。
「だいたい、誘惑するなんて無理。俺に彼女がいたことないのは、由良川だって知ってんだろ?おまえの周りのモテメンにでも頼めよ」
「だ・か・ら、チカちゃんや高篠を知らない人間じゃないと、この作戦はうまくいかないんだって!それに、高篠は男だからモテメンである必要はない!俺が高篠を金曜日の飲み会で、ぐでんぐでんに酔わせてラブホに連れ込むから、才原は、証拠の写真にそいつとツーショットで収まってくれればいいんだよ」
「はあ?男?ラブホでツーショット?…意味不明だけど、それって誘惑でもなんでもないじゃん」
「まあ、聞けよ。補足するとだな、ロングのヅラでもつけて、高篠に添い寝するみたいなポーズをしてくれたらいい。まるで、酔っ払って致しちゃいました的な?こんなこと女の子には頼めないし、男に頼むにしろ、面割れしてない方がいいだろ?才原は男にしては華奢だしな。高篠は、あー見えても真面目だから、既成事実を作っちゃえばいけると思うんだよ」
由良川が、超ゲス顔を浮かべている。こわいし、キモい。
酔っ払って寝こけたやつと、一緒の写真に入るだけなら俺にもできる。最初にものすごく無理な要求をされたせいで、こんなのどうってことないと思えてくる。由良川って、頭悪そうに見えてけっこう策士なのか?あ、そういえば、こいつの大学、偏差値が高めだった。
「作ってどうするんだよ?いけるってどういうこと?」
「高篠はモテモテのくせに、現在フリーだ。だから、チカちゃんが、高篠にアタックしそうになっている。俺はそれを絶対に阻止しなければならない。なぜかって?あんなにかわいいチカちゃんを、高篠が断るわけがないから!チカちゃんの貞操を、あいつに散らされてたまるか!!」
「…ぜんぜん、俺の質問に答えてないから」
「そうか?ちょっとはヒントあったろ?さっきも言ったけど、高篠って根は真面目だから、一夜のあやまちと言えども責任を取って、致しちゃった子と付き合おうとすると思うわけ。実際のところ、致してもないし、女の子でもないけどな。存在しないその子を探している間は、誰に告白されても断ると思うんだ。結果、チカちゃんはフラれちゃうことになるけど、俺が心身ともに慰めるから万事オッケー!!」
「おまえ、本当によくしゃべるな…。写真を撮るだけならできるけど、知らない相手でも騙すのは気が引けるよ。由良川がチカちゃんに、さっさっと告れば済む話じゃん」
「済んでも、バッドエンドだったらどうすんの?ハッピーエンドじゃなきゃ、俺、泣くよ?号泣するよ?」
「思う存分泣けよ。そんで、自分の流した涙で溺れろ」
「やだ!やだ!溺れるなら、チカちゃんの愛に溺れたい!」
ちらちらと、「俺、うまいこと言ったろ?」みたいに見てくるけど、さっきより殺意が高まっただけだ。
「才原は、俺よりも、見ず知らずの男の肩を持つのか?こんなにも頼んでいるのに!!」
「肩を持つとか、そんな話じゃないだろ」
「だって!だって!チカちゃんを誰にも渡したくないんだよ~!」
目を背けたくなるような汚い顔で泣きつかれそうになって、結局、嫌々ながらも引き受けてしまった。
「一瞬だけだからな!他はすべて由良川がやれよ。あと、共犯っていう扱いはごめんだ。俺は巻き込まれた被害者の方だ」
「才原ありがとう!!そんなのわかってるって!金曜日は、駅前の居酒屋で飲むから、21時くらいにその辺でスタンバってて。連絡入れるから!」
しぶしぶ頷いた俺に、「男3人で入っても平気な、無人受付のラブホも見つけてあるから!」と、ウィンクつきのキメ顔を向けてきたので、唐揚げに付いていたレモンを、由良川の目の前で搾ってやった。悪霊退散!
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