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第二章 『盗賊団のアジト』
第13話 追いつめたその先に
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パメラの放った迅狼流星刃は凄まじい突き技で、それを喉に浴びた巨岩鬼はたまらずに吹っ飛ばされて仰向けに倒れた。
大技を放ったパメラはすでに疲労度が赤く染まり、地面に倒れ込むと息も絶え絶えになりながら必死の叫び声を上げた。
「バ、バレット殿! 後は頼むでござる!」
肺病の発作が出たパメラはもう限界だろう。
だがその瞬間、すでにパメラの背中からパッと離れたティナが巨岩鬼の真上に舞い上がっていた。
「バレットさん!」
そう叫ぶとティナは自分の胸を指差した。
あいつ、俺の戦いを見ていて巨岩鬼のバグの秘密に気付いたのか。
なかなか勘がいいじゃねえか。
俺は自分の頭を指差すと飛び上がった。
そのまま俺は右足を振り上げると、巨岩鬼の頭の真ん中にある一つ目を目がけて振り下ろした。
奴のバグごと目玉を踏み潰してやる!
「噴熱間欠泉!」
だが、俺の足が届くよりも早く、奴の岩の目蓋が再び閉じた。
俺の足の裏は岩の目蓋をむなしく叩く。
弱点である目を守るための目蓋は固く分厚い。
だが俺のこのスキルは固い岩盤でも関係ない、
「ギガアアアッ!」
奴の目蓋の裏側から、噴熱間欠泉で俺が送り込んだ炎が噴き出した。
目から桃色の炎が噴き上がり、奴が初めて悲鳴らしい悲鳴を上げた。
そして頭に揺らぐバグが消滅する。
同時にティナが巨岩鬼の胸を狙って得意の神聖魔法を放射した。
「高潔なる魂!」
ティナの姿を象った桃色の光が巨岩鬼の胸に炸裂する。
胸のバグが消滅した。
すると頭と胸のバグを失った巨岩鬼の体全体が激しく明滅し始めた。
そして岩石で構成されている奴の頭から大量の羽虫が飛び出してきて、ユラユラと蜃気楼のように揺らめくそれらが消え去っていく。
そうか……ヒルダの羽虫が頭と胸の中に巣食って、巨岩鬼は飼い慣らされていたってことか。
途端に岩石の集合体であるその体が細かい岩石へとバラバラに砕けていく。
そして閉じられたままの目蓋の上に【戒】の文字が刻み込まれる。
正常化完了の証だ。
「ギ……ギギ……ギガァァァァッ!」
だが、徐々に崩れていく体の中で、俺の足に踏みつけられて横たわる頭の部分だけはまだ生きていた。
目蓋を開けた巨岩鬼の目は、俺の炎を受けて真っ赤に充血していた。
そして次の瞬間、その充血した目がさらに赤く光った。
「うおっ!」
光線が俺を焼くかと思われた瞬間、俺は体を捻って光線をギリギリのところで避けた。
この攻撃を俺は知っていた。
だからこそ回避することが出来たんだ。
巨岩鬼の奥の手は、弱点であるその目から発する赤色光線だった。
そしてこの光線は連射が利かない。
ゾーラン隊にいた頃に俺がこの巨岩鬼という魔物を知っていたことが、こいつにとっての不運だったってわけだ。
「目蓋を開けたままでいいのか? 目玉をほじくり出すぞ!」
俺はその場で体をドリル状に急速回転させて、螺旋魔刃脚で一気に巨岩鬼の目を狙った。
だが俺の爪先がその目に到達する寸前、またしても巨岩鬼は岩盤の目蓋を閉じる。
俺は構わずに目蓋に爪先を叩きつけて削り始めた。
硬質化した俺のつま先が石板を削る音がギィィィィンと響き渡る。
俺はひたすら回転力を高めて、全体重をつま先に乗せた。
それでも巨岩鬼の固い目蓋は決して俺の爪先を通さない。
だが俺はそこで体内の魔力を最大限まで高めた。
桃色の炎が俺の体から吹き上がり、同時に青い稲妻が俺の体から迸る。
「焔雷!」
その状態で俺は螺旋魔刃脚をもう一段上のスキルに切り替えた。
回転する俺の体の周囲を激しい桃色の炎が渦巻いていく。
俺の体が炎の竜巻と化した。
「炎獄螺旋魔刃脚!」
パキッという音が鳴り響き、巨岩鬼の目蓋に見る見るうちに亀裂が広がっていく。
そしてついに俺の爪先が奴の目蓋をぶち破り、弾力のある目玉をえぐった。
「くたばっちまいなぁぁぁぁ!」
「ギガアアアッ!」
ひときわ高い巨岩鬼の悲鳴は、断末魔のそれだった。
心臓である目玉を貫かれたことで、バグが修正され元の表示に戻っていた奴のライフゲージはゼロを指し示している。
ゲームオーバーだ。
頑健な巨躯を誇る巨岩鬼の体は頭まで完全に崩れ去り、ただの砕けた岩石として地面に積み上がった。
「フンッ! 手こずらせやがって」
俺は積み上がった石を蹴り飛ばして振り返る。
だが、そこにヒルダの姿はなかった。
俺たちが巨岩鬼にトドメを刺している隙にあの女はこの広い居室の奥まで逃げていたんだ。
焦ったティナが声を上げる。
「ヒルダが逃げます!」
「チッ! 逃がさねえぞ!」
奥にもう扉はなく行き止まりだが、あの女なら不正プログラムで岩の中でもどこでも逃げられる。
「あんたたちなんかに殺されてたまるか!」
そう叫んだヒルダが部屋の奥の行き止まりの岩壁に手を触れると、そこが揺らぐ。
思った通りだ。
ここまで追い詰めて逃げられてたまるか!
【天魔融合プログラム 有効時間残り0:05】
俺は最後に残った力で灼熱鴉を放った。
しかし一足早くヒルダの奴が岩の中に体を埋め込んで行きやがった。
桃炎の鴉はその岩壁に炸裂し、壁ごと不正プログラムを吹き飛ばす。
すると岩壁の中にポッカリと穴が開きやがった。
それは奥に続く通路であり、すぐ先に小さな部屋があるようだ。
隠し部屋か。
俺はすぐに駆け出す。
「往生際が悪いんだよ!」
俺はそう叫ぶとそのまま隠し部屋の中へと駆け込む。
倒れているパメラを残し、ティナも俺の後に続いてきた。
そこは奥行きが数メートル程度しかない狭い部屋だが、何やらいくつもの宝箱が置かれている。
ヒルダが略奪した財産でも隠してやがったんだろうよ。
だが、部屋に駆け込んだ俺はそこで思わず足を止めた。
すぐ後をついてきたティナの奴も同時に足を止め、怪訝そうに俺の脇から顔を出して前方を見やる。
「バレットさん? 何が……えっ?」
そう言ったきりティナは目の前の光景に絶句する。
「こいつは……どうなってやがる?」
そこに確かにヒルダはいた。
だが、壁に背をもたれて座り込んでいたヒルダはすでに動かなくなっていた。
その喉に深々とナイフが突き刺さり、口から血を吐き出したヒルダは……すでに死んでいた。
「おい。フザけてんのか?」
壁にもたれかかったまま息絶えているヒルダの遺体を見下ろして俺はそう呟いた。
ヒルダはその手に握り締めたナイフを自分の喉に突き刺した状態で死んでいる。
俺は苛立ちに歯を食いしばった。
憎らしい相手をこの拳で打ち倒すことが出来ずに、戦いは不完全燃焼に終わっちまったんだ。
つい先ほどまでこの胸に燃え上がっていた戦意の炎は、すっかり冷えて消え失せている。
巨岩鬼を打ち倒し、女堕天使ヒルダをいよいよブチのめすところまで追い込んだ。
だが、今こうして俺の前で動かなくなっているヒルダの体は、ところどころバグで揺らぎ、ライフはゼロとなったまま止まっている。
追い詰められた末に自暴自棄になって自殺……だが……。
「おい。てめえ。そんな三文芝居を見て俺が喜ぶとでも思ってやがるのか?」
俺の言葉にもヒルダはピクリとも動かない。
カッと目を見開いたまま末期の表情は微動だにしなかった。
だが相手はヒルダだ。
今、こうして目に見えている光景を額面通りに受け取るわけにはいかねえ。
死んだふりをしているだけかもしれねえしな。
だが、そこで俺はヒルダが自分の喉に突き刺したその刃を見てハッとした。
それは紫色のあやしい光を放っている。
その忌々しい光を忘れるはずはない。
こいつは……。
「断絶凶刃……」
大技を放ったパメラはすでに疲労度が赤く染まり、地面に倒れ込むと息も絶え絶えになりながら必死の叫び声を上げた。
「バ、バレット殿! 後は頼むでござる!」
肺病の発作が出たパメラはもう限界だろう。
だがその瞬間、すでにパメラの背中からパッと離れたティナが巨岩鬼の真上に舞い上がっていた。
「バレットさん!」
そう叫ぶとティナは自分の胸を指差した。
あいつ、俺の戦いを見ていて巨岩鬼のバグの秘密に気付いたのか。
なかなか勘がいいじゃねえか。
俺は自分の頭を指差すと飛び上がった。
そのまま俺は右足を振り上げると、巨岩鬼の頭の真ん中にある一つ目を目がけて振り下ろした。
奴のバグごと目玉を踏み潰してやる!
「噴熱間欠泉!」
だが、俺の足が届くよりも早く、奴の岩の目蓋が再び閉じた。
俺の足の裏は岩の目蓋をむなしく叩く。
弱点である目を守るための目蓋は固く分厚い。
だが俺のこのスキルは固い岩盤でも関係ない、
「ギガアアアッ!」
奴の目蓋の裏側から、噴熱間欠泉で俺が送り込んだ炎が噴き出した。
目から桃色の炎が噴き上がり、奴が初めて悲鳴らしい悲鳴を上げた。
そして頭に揺らぐバグが消滅する。
同時にティナが巨岩鬼の胸を狙って得意の神聖魔法を放射した。
「高潔なる魂!」
ティナの姿を象った桃色の光が巨岩鬼の胸に炸裂する。
胸のバグが消滅した。
すると頭と胸のバグを失った巨岩鬼の体全体が激しく明滅し始めた。
そして岩石で構成されている奴の頭から大量の羽虫が飛び出してきて、ユラユラと蜃気楼のように揺らめくそれらが消え去っていく。
そうか……ヒルダの羽虫が頭と胸の中に巣食って、巨岩鬼は飼い慣らされていたってことか。
途端に岩石の集合体であるその体が細かい岩石へとバラバラに砕けていく。
そして閉じられたままの目蓋の上に【戒】の文字が刻み込まれる。
正常化完了の証だ。
「ギ……ギギ……ギガァァァァッ!」
だが、徐々に崩れていく体の中で、俺の足に踏みつけられて横たわる頭の部分だけはまだ生きていた。
目蓋を開けた巨岩鬼の目は、俺の炎を受けて真っ赤に充血していた。
そして次の瞬間、その充血した目がさらに赤く光った。
「うおっ!」
光線が俺を焼くかと思われた瞬間、俺は体を捻って光線をギリギリのところで避けた。
この攻撃を俺は知っていた。
だからこそ回避することが出来たんだ。
巨岩鬼の奥の手は、弱点であるその目から発する赤色光線だった。
そしてこの光線は連射が利かない。
ゾーラン隊にいた頃に俺がこの巨岩鬼という魔物を知っていたことが、こいつにとっての不運だったってわけだ。
「目蓋を開けたままでいいのか? 目玉をほじくり出すぞ!」
俺はその場で体をドリル状に急速回転させて、螺旋魔刃脚で一気に巨岩鬼の目を狙った。
だが俺の爪先がその目に到達する寸前、またしても巨岩鬼は岩盤の目蓋を閉じる。
俺は構わずに目蓋に爪先を叩きつけて削り始めた。
硬質化した俺のつま先が石板を削る音がギィィィィンと響き渡る。
俺はひたすら回転力を高めて、全体重をつま先に乗せた。
それでも巨岩鬼の固い目蓋は決して俺の爪先を通さない。
だが俺はそこで体内の魔力を最大限まで高めた。
桃色の炎が俺の体から吹き上がり、同時に青い稲妻が俺の体から迸る。
「焔雷!」
その状態で俺は螺旋魔刃脚をもう一段上のスキルに切り替えた。
回転する俺の体の周囲を激しい桃色の炎が渦巻いていく。
俺の体が炎の竜巻と化した。
「炎獄螺旋魔刃脚!」
パキッという音が鳴り響き、巨岩鬼の目蓋に見る見るうちに亀裂が広がっていく。
そしてついに俺の爪先が奴の目蓋をぶち破り、弾力のある目玉をえぐった。
「くたばっちまいなぁぁぁぁ!」
「ギガアアアッ!」
ひときわ高い巨岩鬼の悲鳴は、断末魔のそれだった。
心臓である目玉を貫かれたことで、バグが修正され元の表示に戻っていた奴のライフゲージはゼロを指し示している。
ゲームオーバーだ。
頑健な巨躯を誇る巨岩鬼の体は頭まで完全に崩れ去り、ただの砕けた岩石として地面に積み上がった。
「フンッ! 手こずらせやがって」
俺は積み上がった石を蹴り飛ばして振り返る。
だが、そこにヒルダの姿はなかった。
俺たちが巨岩鬼にトドメを刺している隙にあの女はこの広い居室の奥まで逃げていたんだ。
焦ったティナが声を上げる。
「ヒルダが逃げます!」
「チッ! 逃がさねえぞ!」
奥にもう扉はなく行き止まりだが、あの女なら不正プログラムで岩の中でもどこでも逃げられる。
「あんたたちなんかに殺されてたまるか!」
そう叫んだヒルダが部屋の奥の行き止まりの岩壁に手を触れると、そこが揺らぐ。
思った通りだ。
ここまで追い詰めて逃げられてたまるか!
【天魔融合プログラム 有効時間残り0:05】
俺は最後に残った力で灼熱鴉を放った。
しかし一足早くヒルダの奴が岩の中に体を埋め込んで行きやがった。
桃炎の鴉はその岩壁に炸裂し、壁ごと不正プログラムを吹き飛ばす。
すると岩壁の中にポッカリと穴が開きやがった。
それは奥に続く通路であり、すぐ先に小さな部屋があるようだ。
隠し部屋か。
俺はすぐに駆け出す。
「往生際が悪いんだよ!」
俺はそう叫ぶとそのまま隠し部屋の中へと駆け込む。
倒れているパメラを残し、ティナも俺の後に続いてきた。
そこは奥行きが数メートル程度しかない狭い部屋だが、何やらいくつもの宝箱が置かれている。
ヒルダが略奪した財産でも隠してやがったんだろうよ。
だが、部屋に駆け込んだ俺はそこで思わず足を止めた。
すぐ後をついてきたティナの奴も同時に足を止め、怪訝そうに俺の脇から顔を出して前方を見やる。
「バレットさん? 何が……えっ?」
そう言ったきりティナは目の前の光景に絶句する。
「こいつは……どうなってやがる?」
そこに確かにヒルダはいた。
だが、壁に背をもたれて座り込んでいたヒルダはすでに動かなくなっていた。
その喉に深々とナイフが突き刺さり、口から血を吐き出したヒルダは……すでに死んでいた。
「おい。フザけてんのか?」
壁にもたれかかったまま息絶えているヒルダの遺体を見下ろして俺はそう呟いた。
ヒルダはその手に握り締めたナイフを自分の喉に突き刺した状態で死んでいる。
俺は苛立ちに歯を食いしばった。
憎らしい相手をこの拳で打ち倒すことが出来ずに、戦いは不完全燃焼に終わっちまったんだ。
つい先ほどまでこの胸に燃え上がっていた戦意の炎は、すっかり冷えて消え失せている。
巨岩鬼を打ち倒し、女堕天使ヒルダをいよいよブチのめすところまで追い込んだ。
だが、今こうして俺の前で動かなくなっているヒルダの体は、ところどころバグで揺らぎ、ライフはゼロとなったまま止まっている。
追い詰められた末に自暴自棄になって自殺……だが……。
「おい。てめえ。そんな三文芝居を見て俺が喜ぶとでも思ってやがるのか?」
俺の言葉にもヒルダはピクリとも動かない。
カッと目を見開いたまま末期の表情は微動だにしなかった。
だが相手はヒルダだ。
今、こうして目に見えている光景を額面通りに受け取るわけにはいかねえ。
死んだふりをしているだけかもしれねえしな。
だが、そこで俺はヒルダが自分の喉に突き刺したその刃を見てハッとした。
それは紫色のあやしい光を放っている。
その忌々しい光を忘れるはずはない。
こいつは……。
「断絶凶刃……」
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