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第四章 城下町紛争狂騒曲
第2話 ミランダ たったひとりの戦い
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身動きを封じられた僕の眼下で戦いは始まってしまった。
ミランダが舞い降りると、広場に集まっていた群集のうち市民である一般NPCたちが慌てて逃げ惑い始めた。
そして残ったプレイヤーたちとそのサポートNPCたちがミランダを迎え撃つ。
ある者は猛り昂ぶった表情で、ある者は緊張に引きつった顔で。
そうした彼らを相手にミランダは大地を滑るように身軽に移動しながら、次々と下位魔法である黒炎弾を乱射する。
すぐに多くの悲鳴が上がり、黒い火球に焼かれたプレイヤーたちが倒れていく。
そして一部のプレイヤーたちが避けた黒い炎の塊が広場にある市民の家に燃え移った。
広場はすぐに火の手が上がり始める。
市民NPCたちは必死に水を撒いて消火活動にあたっているけど、焼け石に水だった。
こういうところがすでにおかしいんだ。
気が付かないのかミランダ。
本当ならプレイヤーとの戦闘が街の建造物や一般のNPCに影響を与えることなんてない。
今のミランダに起きている大きな問題がこれだった。
このままじゃ例えミランダにキャラクターとしての魅力があったとしても、システム障害として処分されちゃうぞ。
「ミランダ……」
僕は唇を噛んで拳を握り締めるけど、出来ることは何もない。
無力感に苛まれながら遠方を見つめたその時、視界に映るその様子に僕は思わず息を飲んだ。
「あ、あれは……」
僕は目を凝らして街の外に広がる草原に敷かれた街道を見つめる。
城下町に至るその街道を大勢の人の列がこちらに向かってきていた。
その数はこの広場に集まっているプレイヤーのおよそ3倍以上と思われ、おそらく1000人を超える大群だ。
あ、あれはまさかミランダ討伐隊の増援?
こんな時にあれだけの人員がこの街に向かってくるなんて、そうとしか考えられない。
「いくらなんでも多勢に無勢すぎる」
僕は焦ってそうつぶやくと、下を見下ろして必死に声を張り上げた。
「ミランダー! もうやめるんだ! 大群が向かってきてるぞ!」
それはもうあらん限りの声だった。
だけど、ミランダの放つ黒炎弾が大地を焼き焦がす轟音やプレイヤーたちの上げる怒号と悲鳴が入り混じって広場は騒然としているため、僕の声なんかまったく届かない。
すでにミランダは嬉々とした表情でプレイヤーたちを順調に葬り続けていた。
彼女の上位魔法・悪神解放に呼応し、巨大な漆黒の獅子が大地の中から現れた。
黒い獅子はプレイヤーたちに襲い掛かり、その牙や爪で次々と彼らを葬り去っていく。
ミランダは戦闘に夢中になって、大群の接近には気付いていないようだった。
そして僕はあることに気が付いてしまった。
さっきのあの神殿で僧侶のドレイクを一撃で葬り去ったような強さがミランダの体から薄れていることに。
そしてシェラングーンで見せた、体から放出する闇の霧もずいぶんと弱い。
もちろんそれでもミランダは恐ろしいくらいに強い。
でも、高レベルのプレイヤーたちを有無も言わせず一撃で倒せるほどの異常性は今はもう影を潜めていた。
その証拠に多くのプレイヤーたちが倒される中、それでも果敢にミランダに挑みかかり、多少なりとも彼女にダメージを与えるプレイヤーもいる。
少しずつミランダは疲労を蓄積させていた。
「多分、さっきこれに触れたせいだ」
僕はそうつぶやいて自分の腰に下げられたままの呪いの剣『タリオ』を見やった。
彼女の身に起きた変化の原因は、それ以外に考えられなかった。
何にせよ、このままあの大群が合流したら、いくらミランダでも圧倒的な物量の前に敗北は免れないだろう。
僕はリードの言葉を思い返した。
討伐隊にはミランダの修正プログラムが施されている。
もし彼らに敗れればミランダはもう二度と復活することなく永遠に消えてしまう。
焦りが全身を駆け巡り、嫌な汗が噴き出してきた。
僕は動かせない体の代わりに必死に頭を働かせる。
ちっとも賢くなんかないけれど、ミランダの戦い方を誰よりも熟知しているのは、他ならぬこの僕だ。
だからこそ現実的に考えることが出来る。
自分の願望とは別に。
このまま戦い続ければいずれミランダは負ける。
ダメージがもう少し蓄積されれば、彼女は得意の死の魔法・死神の接吻を連発し始めるだろう。
ミランダによってすでに50人以上のプレイヤーが倒されているけど、死神の接吻が炸裂すればその3倍4倍のプレイヤーが葬られると思う。
けれどそこまでだ。
数人が倒されている間に一人はミランダに攻撃を仕掛けることが出来る。
それが積み重なればいずれ彼女のライフゲージは空になってしまう。
広場に集まった300人ほどのプレイヤーを倒すまでには至らないだろう。
もし僕が思った以上にミランダが奮闘してその300人を倒せたとしても、今や城下町の外には1000人近い増援が押し寄せてきている。
万事休すだ。
いてもたってもいられず僕は自分の体を思い切り揺すってみた。
漆黒の鎖は僕の手首足首をしっかり固定してビクともしない。
それはただ固く結ばれているだけの鎖じゃなかった。
ミランダの魔力が込められていて、僕の力なんかじゃ断ち切ることはできない。
でもこのままじゃミランダにこの呪いの剣を渡すことも出来ない。
焦燥感ばかりを抱えて広場の戦いを見つめるほかに僕に出来ることなんてあるだろうか。
「クソッ! せっかくここまで来られたのに! ミランダのすぐ側まで来られたのに!」
僕は悔しさを吐き出すように声を張り上げた。
ミランダが舞い降りると、広場に集まっていた群集のうち市民である一般NPCたちが慌てて逃げ惑い始めた。
そして残ったプレイヤーたちとそのサポートNPCたちがミランダを迎え撃つ。
ある者は猛り昂ぶった表情で、ある者は緊張に引きつった顔で。
そうした彼らを相手にミランダは大地を滑るように身軽に移動しながら、次々と下位魔法である黒炎弾を乱射する。
すぐに多くの悲鳴が上がり、黒い火球に焼かれたプレイヤーたちが倒れていく。
そして一部のプレイヤーたちが避けた黒い炎の塊が広場にある市民の家に燃え移った。
広場はすぐに火の手が上がり始める。
市民NPCたちは必死に水を撒いて消火活動にあたっているけど、焼け石に水だった。
こういうところがすでにおかしいんだ。
気が付かないのかミランダ。
本当ならプレイヤーとの戦闘が街の建造物や一般のNPCに影響を与えることなんてない。
今のミランダに起きている大きな問題がこれだった。
このままじゃ例えミランダにキャラクターとしての魅力があったとしても、システム障害として処分されちゃうぞ。
「ミランダ……」
僕は唇を噛んで拳を握り締めるけど、出来ることは何もない。
無力感に苛まれながら遠方を見つめたその時、視界に映るその様子に僕は思わず息を飲んだ。
「あ、あれは……」
僕は目を凝らして街の外に広がる草原に敷かれた街道を見つめる。
城下町に至るその街道を大勢の人の列がこちらに向かってきていた。
その数はこの広場に集まっているプレイヤーのおよそ3倍以上と思われ、おそらく1000人を超える大群だ。
あ、あれはまさかミランダ討伐隊の増援?
こんな時にあれだけの人員がこの街に向かってくるなんて、そうとしか考えられない。
「いくらなんでも多勢に無勢すぎる」
僕は焦ってそうつぶやくと、下を見下ろして必死に声を張り上げた。
「ミランダー! もうやめるんだ! 大群が向かってきてるぞ!」
それはもうあらん限りの声だった。
だけど、ミランダの放つ黒炎弾が大地を焼き焦がす轟音やプレイヤーたちの上げる怒号と悲鳴が入り混じって広場は騒然としているため、僕の声なんかまったく届かない。
すでにミランダは嬉々とした表情でプレイヤーたちを順調に葬り続けていた。
彼女の上位魔法・悪神解放に呼応し、巨大な漆黒の獅子が大地の中から現れた。
黒い獅子はプレイヤーたちに襲い掛かり、その牙や爪で次々と彼らを葬り去っていく。
ミランダは戦闘に夢中になって、大群の接近には気付いていないようだった。
そして僕はあることに気が付いてしまった。
さっきのあの神殿で僧侶のドレイクを一撃で葬り去ったような強さがミランダの体から薄れていることに。
そしてシェラングーンで見せた、体から放出する闇の霧もずいぶんと弱い。
もちろんそれでもミランダは恐ろしいくらいに強い。
でも、高レベルのプレイヤーたちを有無も言わせず一撃で倒せるほどの異常性は今はもう影を潜めていた。
その証拠に多くのプレイヤーたちが倒される中、それでも果敢にミランダに挑みかかり、多少なりとも彼女にダメージを与えるプレイヤーもいる。
少しずつミランダは疲労を蓄積させていた。
「多分、さっきこれに触れたせいだ」
僕はそうつぶやいて自分の腰に下げられたままの呪いの剣『タリオ』を見やった。
彼女の身に起きた変化の原因は、それ以外に考えられなかった。
何にせよ、このままあの大群が合流したら、いくらミランダでも圧倒的な物量の前に敗北は免れないだろう。
僕はリードの言葉を思い返した。
討伐隊にはミランダの修正プログラムが施されている。
もし彼らに敗れればミランダはもう二度と復活することなく永遠に消えてしまう。
焦りが全身を駆け巡り、嫌な汗が噴き出してきた。
僕は動かせない体の代わりに必死に頭を働かせる。
ちっとも賢くなんかないけれど、ミランダの戦い方を誰よりも熟知しているのは、他ならぬこの僕だ。
だからこそ現実的に考えることが出来る。
自分の願望とは別に。
このまま戦い続ければいずれミランダは負ける。
ダメージがもう少し蓄積されれば、彼女は得意の死の魔法・死神の接吻を連発し始めるだろう。
ミランダによってすでに50人以上のプレイヤーが倒されているけど、死神の接吻が炸裂すればその3倍4倍のプレイヤーが葬られると思う。
けれどそこまでだ。
数人が倒されている間に一人はミランダに攻撃を仕掛けることが出来る。
それが積み重なればいずれ彼女のライフゲージは空になってしまう。
広場に集まった300人ほどのプレイヤーを倒すまでには至らないだろう。
もし僕が思った以上にミランダが奮闘してその300人を倒せたとしても、今や城下町の外には1000人近い増援が押し寄せてきている。
万事休すだ。
いてもたってもいられず僕は自分の体を思い切り揺すってみた。
漆黒の鎖は僕の手首足首をしっかり固定してビクともしない。
それはただ固く結ばれているだけの鎖じゃなかった。
ミランダの魔力が込められていて、僕の力なんかじゃ断ち切ることはできない。
でもこのままじゃミランダにこの呪いの剣を渡すことも出来ない。
焦燥感ばかりを抱えて広場の戦いを見つめるほかに僕に出来ることなんてあるだろうか。
「クソッ! せっかくここまで来られたのに! ミランダのすぐ側まで来られたのに!」
僕は悔しさを吐き出すように声を張り上げた。
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