だって僕はNPCだから 3rd GAME

枕崎 純之助

文字の大きさ
85 / 89
最終章 決戦! 天樹の塔

第19話 集結する力

しおりを挟む
「ううううあああああっ!」
「くぅぅぅぅっはぁぁぁ!」

 ミランダとジェネットの苦痛の叫び声が中央広場に響き渡る。
 十字架にはりつけにされた彼女たちは、キャメロンの左右の手で情報編集ゲノム・エディットを受けてしまっていた。

「や、やめろ! 2人を放せ!」

 本来とてつもなく我慢強いあの2人があれだけ苦しんでいる。
 その苦痛は想像を絶するほどなんだ。
 僕は弾かれたように上昇してキャメロンに飛びかかっていった。
 だけどキャメロンは鬼の形相ぎょうそうで足だけを流体化させて振るう。

「邪魔だっ!」
「うぎぃっ!」

 キャメロンが振るった足から超高熱の溶岩流が放たれて、僕をそれを浴びてしまった。
 天樹の衣トゥルルがなければ即死レベルの大ダメージだっただろう。
 撃ち落とされて床に叩きつけられた僕は、息が詰まるほどの痛みに顔をしかめながら懸命に身を起こす。
 だけど時すでに遅く、ミランダとジェネットのお腹の中からキャメロンは感情プログラムを取り出してしまったんだ。
 途端に2人の表情が消えるのを見た僕はたまらず声を上げた。

「ミランダ! ジェネット!」

 だけど心を失ってしまったかのように彼女たちは反応を見せない。
 くそっ!
 悔しくて僕は拳を床に叩き付けた。
 そんな僕を見下ろしながらキャメロンはフンッと鼻を鳴らし、手にした2枚の基盤を僕に見せつける。

「この2人の感情プログラムは万が一の場合の保険として残しておいたんだが、今となってはそれが正解だったな。本来はもっとじっくり丸裸にしてやりたかったんだが」
「な、何だって?」

 敵意をむき出しにして歯を食いしばる僕に、キャメロンは牙を見せて笑い、その基盤を自分の胸にゆっくりと埋めていく。

「ミランダとジェネットは他の女たちと違い、貴様との付き合いも長い。この感情プログラムの変質具合はアリアナ達の比ではないだろう。それにジェネットは神とかいう運営重鎮の直属の部下だ。数多くの有益な情報を握っているはず。そういう意味でこの2人は実験に使う価値が高いから、ここで感情プログラムを使わずに持ち帰れれば良かったんだがな。アルフレッド。貴様の小賢こざかしい抵抗のおかげで俺の計画は変更を余儀なくされてしまった。とことん邪魔な奴だよ。貴様は」
「ふ、ふざけるな!」
「それはこちらのセリフだ。だが俺は寛大な心でおまえのとがを許そう。なぜなら……」

 そう言うキャメロンの体に、見た目にも明らかな変化が起きた。
 子供サイズだったその体が肥大化し、大人サイズの……いや、それよりも遥かに大きく常人の2倍の背丈はあろうかという巨躯きょく変貌へんぼうを遂げたんだ。

「これほど素晴らしい力を手に入れられるとは思ってもみなかったからだ。こうなるとあの天使長への積年の恨みも無駄じゃなかったと言えるな。この怨念おんねんこそが上質の感情プログラムを手に入れた今の我が力の源だからだ」

 そう言うとキャメロンは急降下してきて僕の眼前に着地した。
 その見上げるほどの巨漢が落下してきた重さと衝撃で、キャメロンの踏みしめる床がひび割れる。
 その威圧感に身を固くした僕は、反射的に金環杖サキエルを構えて応戦態勢を取った。
 だけど……

「うがっ……」

 キャメロンが手に持っていた長槍を横から一閃したんだ。
 咄嗟とっさ金環杖サキエルで受け止めようとした僕は、気が付いたら空中に飛ばされていた。
 槍の柄で横から払われた僕の体は簡単に飛ばされてしまった。
 それはまるで太い丸太を横から叩きつけられたような、圧倒的理不尽な衝撃だった。
 
「うげっ!」

 床に叩きつけられた僕は脳震盪のうしんとうを起こしてしまったのか、グラグラと揺れる視界の中であえいだ。
 だけど左腕に走る激痛によって少し意識がハッキリしてきた。

「ぐぅぅ……」
 
 僕はわずかに身を起こした。
 痛みの走る左腕にはまるで力が入らない。
 な、何てことだ。
 左の腕が折れて動かなくなったみたいだ。
 ノアのうろこで強化された天樹の衣トゥルルまとっているはずなのに、それを上回るキャメロンの膂力りょりょくに僕は愕然がくぜんとする。

 キャメロンの強さは絶望的なほどのレベルに達していた。
 ミランダやジェネットの感情プログラムを移植したことで、イザベラさんへ対する強い憎しみの感情を持つ彼は、もはや手の届かないほどの強さを手に入れてしまった。
 それを悟り、僕は恐怖と悔恨とで肩を震わせた。
 そんな僕を見据えてキャメロンは牙をむき出しにして笑う。

「アルフレッド。俺は欲しかったものを全て手に入れる。その仕上げは貴様だ。一番得体の知れない貴様の感情プログラムを手に入れたその時、俺という至高の存在が完成する」

 そう言うとキャメロンはゆがんだ笑みを浮かべながら、一歩また一歩とゆっくり僕に近付いてくる。
 それは巨大な肉食獣が弱った獲物にトドメを刺しに来るような無慈悲な歩みだった。
 だけどそんな彼の姿に、僕はひどく不自然でいびつな印象を受けたんだ。

変質した感情プログラムの実装によってそれほどの力を得たってことは、それだけ彼の心に渦巻うずまく負の感情が強かったってことだろう。
 それは彼がイザベラさんに対して持っている根の深い恨みの感情に他ならなかった。
 でも僕は……薄々だけど感付いていたんだ。
 その恨みの裏側にある感情に。

 僕は右手で金環杖サキエルを支えにしてようやく起き上がる。
 この身に受けたダメージが大き過ぎて体が震えてしまうけれど、それでも2本の足で踏ん張って必死に体を支えた。
 そして呼吸を整えながら言葉をつむぎ出す。

「違うよ……君が本当に欲しかったのはそんなものじゃない」
「……何だと?」
「君は分かってるんだ。自分が本当に欲しかったものが手に入らないことを。だから別の何かで自分の胸の空白を埋めようとしているんだよ」

 僕の言葉にキャメロンは歩みを止めてまゆを潜めた。
 
「貴様……何が言いたい」

 ノアのおかげで僕は知った。
 母を求める気持ちというのは他の何にも代えがたい渇望かつぼうなのだということを。

「君はだた、イザベラさんにそばにいてほしかったんだ。母親に自分のことを見ていてほしかったんだ」
「……気でも狂ったか? 世迷言よまいごとにもほどがあるぞ。アルフレッド。今すぐその口を閉じろ」

 キャメロンの声は今にも破裂しそうなほどの静かな怒りに満ちていた。
 それでも僕は震えそうになる声をしぼり出して言った。

「それが手に入らない以上、どんなに他の何かを手に入れても君が満たされることはない。自分でもそれが分かっているんだろう? だから……」
「黙れぇ!」

 突進してきたキャメロンの巨体が僕の全身を打つ。
 僕は後方へ大きく飛ばされ、中央広場の壁に叩きつけられた。

「があっ……かはっ」

 キャメロンの猛然とした突進からの体当たりをまともに受けた僕は、床に崩れ落ちて動けなくなってしまった。
 全身がバラバラになってしまったんじゃないかと思うほどの衝撃だった。
 痛みが強過ぎて体全体が麻痺まひしてしまっている。
 僕のライフがほとんど0になりかけていた。
 急激なライフの低下によって僕の体はショック状態におちいり、指一本すら動かせなくなってしまった。

「貴様のくだらん戯言ざれごとはもう聞き飽きた。そろそろ終わりにするぞ」

 そう言うとキャメロンは動かなくなった僕の髪をつかんで仰向けに倒す。
 そして彼の右手の周囲をまたもや黒い帯が回り始めた。

情報編集ゲノム・エディット

 キャメロンは僕のお腹に向けて右手をゆっくりと近付けてくる。
 ああ。
 いよいよ僕もオシマイだ。
 僕はキャメロンの肩越しに見える吹き抜けの天井を見つめた。
 その先には十字架にはりつけにされたまま動かない4人の少女たちの姿があった。

 ミランダ、ジェネット、アリアナ、ヴィクトリア。
 ごめんよ。
 みんなのこと助けてあげられなかった。
 僕の胸に無念の思いがこみ上げる。
 キャメロンに感情プログラムを抜かれたら、もうこんな気持ちも感じなくなるのかな。
 そう思うと僕の脳裏に彼女たちとの数々の思い出がよみがえる。
 
 ミランダにしかられたこと。
 ジェネットに抱きしめられたこと。
 アリアナの不安げな表情。
 ヴィクトリアの勇ましい戦いぶり。
 ノアの流した涙。
 
そんな全てが今、僕の心の中から失われようとしている。
 記憶としては残るけれど、そこに何の思いも感じられなくなるのであれば、それは忘れてしまったも同然のことだ。
そう思った途端、僕の胸に一つの思いが強烈に浮かび上がってきた。
 あきらめたくない!
 僕は……彼女たちとまた笑い合って過ごしたいんだ。
 そしてみんなに……僕はまたみんなに……。
  
「みんなとの思い出を……僕の大事な日々を……おまえなんかに奪わせはしない! 僕は……絶対にあきらめない! 僕はまたみんなに笑ってもらいたいんだ!」

 残された全ての力を振りしぼるように叫んだその声が、中央広場に響き渡った。
 その途端に十字架にはりつけにされたミランダ達4人に驚くべき変化が起きたんだ。
 ミランダの体から黒の粒子が、ジェネットの体から白の粒子が、アリアナの体から青の粒子が、ヴィクトリアの体から赤の粒子がそれぞれあふれ出す。
 それは先ほどノアの体に起きたのと同じ現象だった。

 動かなくなった彼女たちの体がそれぞれ色の違う粒子に包まれて消えていき、その粒子が寄り集まって4つの玉になった。
 黒、白、青、赤の4つの玉は十字架のいましめから解き放たれて宙を舞い、急降下してくると僕の左手首のアザに吸い込まれていった。

「なにっ?」

 その現象にキャメロンは忌々いまいましげにまゆを潜めて手を止めた。

「また妙な真似まねを……だが今さら遅い!」

 そう言うとキャメロンは僕のお腹に右手を差し入れた。
 途端に筆舌に尽くしがたいほどの痛みが僕の腹部を襲った。

「がっ……うあああああああっ!」

 僕はたまらずに悲鳴を上げた。
 こ、これが……みんなが感じていた痛み。
 とてもじゃないけど耐え切れるものじゃない。
 正気を保っているのさえ難しいほどの激痛の嵐が体の中を吹き荒れている。

「これだ。これが貴様の感情プログラム。もらったぞ!」
 
 そう言うキャメロンの手が僕の体の中の何かをつかんで引きずり出そうとしているのを感じ、それがさらに痛みを増幅させる。
 
「っくはぁぁぁぁぁぁっ!」

 くっ……も、もうダメだ。
 僕は体中の力が急速に奪われていくのを感じた。
 だけどそれと同時に……体の奥底で何かが熱を発し始めたんだ。

命の泉ライフ・ファウンテン

 いきなり目の前に現れたそのコマンド・ウインドウにはそう記されていた。
 それは地下坑道でエマさんが僕にほどこしてくれた特別なスキルだった。
 その時はどんな効果があるのか分からなかったけれど、確かにエマさんは言ったんだ。
 僕が困った時に一度だけ助けてくれる秘密の魔法だと。
 そしてその話は本当だった。

「こ、これは……」

 体中に広がる温かな力が僕の尽きかけたライフをあっという間に回復していく。
 ライフが満タンに戻るまで、ものの数秒とかからなかった。
 そして体に力が戻ったことで、僕の中に息づく反撃の灯火ともしびが勢いよく燃え始めたんだ。
 途端とたんにキャメロンが表情を変えた。 

「な……何だ?」

 驚愕きょうがくに顔をゆがめてキャメロンがその手を僕の体から引き抜こうとする。
 だけどその手は何かに引っかかってしまったのか、彼が力を込めて引き抜こうとしても、まったく動かなくなってしまった。

「くっ! 放せ!」

 キャメロンは左手で僕の肩を押さえつけ、強引に僕の体から右手を引き抜いていく。
 だけどようやく抜けたその手には、僕の感情プログラムらしき基盤は握られていなかった。
 
「こ、これは……」

 僕は痛みに顔をしかめつつ、自分のお腹の中から出てきたそれに瞠目どうもくした。
 キャメロンの太い手首をつかむ5つの手が僕のお腹の中から出てきたんだ。
 僕はその手が誰のものかすぐに分かった。
 その5つの手はミランダ、ジェネット、アリアナ、ヴィクトリア、ノアのものだったんだ。
 か、彼女たちが……僕の体の中で僕を……僕を守ってくれたんだ。

「いったい何なんだ貴様は……何なんだ貴様らは!」

 キャメロンはワナワナと肩を震わせ、強引に手を振りほどこうとするけれど、ミランダたちの手はそれを許さない。
 そして僕の視界に再びあの表示が現れたんだ。
 そこには僕を助けてくれたみんなの名前が追加されていた。
 
【Band of Alfred】
【membership list】

【Noah / Victoria / Ariana / Jennette / Miranda】
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした

暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。 役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。 だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。 倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。 やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。 一方、病の裏で糸を引いていたのは………。 “無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

処理中です...