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第五章 魔獣使いキーラ & 暗黒巫女アディソン
第7話 僕の戦い
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「パ、永久凍土だ」
目の前の光景に僕は思わずそう呟きを漏らした。
IRリングが吸収したアリアナの氷の涙が、失われた僕の右腕を氷の腕として再生したんだ。
そしてその右腕で握ったタリオで空を斬るように刀身を振るうと空中に巨大な凍土の固まりが現れた。
それはアリアナの上位スキルである永久凍土とまったく同じものだった。
「ど、どうして……」
唐突な現象に驚く僕だったけれど、その時、モニターの中で繰り広げられるジェネットと双子の戦いに大きな変化が訪れたためにハッとして顔を上げた。
ジェネットの体を襲う不調が先ほどまでより強くなり、ジェネットは片膝をその場について動けなくなる。
それはほんの束の間の出来事だったけれど、致命的な一瞬だった。
隙を突いたアディソンが口から放つ魔神の吐息がジェネットを襲う。
相手を溶解する恐ろしい毒霧をジェネットは避け損ねて、右足のつま先にわずかに浴びてしまった。
直撃は避けたためダメージは軽微だったけれど、バランスを崩したところにキーラが放った5、6羽の爆弾鳥が突っ込んだんだ。
爆音と爆風。
爆弾鳥の集中砲火を浴びてジェネットは大きなダメージを負い、その場に倒れ込んでしまった。
「ジェ、ジェネット!」
焦燥感に苛まれて僕は自分の右腕を見た。
不思議な力が宿ったその腕のことを僕は自分でもよく分かっていない。
だけど今はそれを悠長に考えている場合じゃなかった。
僕はこの閉ざされた部屋で孤立して何も出来なかったんだ。
でも今は違う。
今この手にある力を行使できるなら、僕がやることはひとつだ。
僕は岩肌の壁に正対して距離を取るとタリオを構えた。
「これならいける!」
倒れているアリアナに被害が及ばないよう慎重に狙いを定め、僕は思い切りタリオを振るった。
青白く染まった刀身が凍気を撒き散らしながら空を斬る。
すると空中に極寒の空気が集約されて巨大な氷と土の集合体を生み出した。
それは僕が振るった剣の勢いそのままに、岩肌の壁に激突したんだ。
大質量の物体が岩壁にぶち当たる音は想像を超えた轟音で、発生した振動が僕の全身をビリビリと震わせる。
壁はガラガラと音を立てて崩れ、半壊した。
崩れ落ちた箇所からわずかに向こう側の空間が見える。
「もう一度だ!」
僕は間髪入れずに再度タリオを振るった。
二度目の永久凍土が現れて半壊した壁にぶち当たる。
重量のある永久凍土の衝突によって、今度こそ壁は完全に崩れ去った。
僕は思わず息を飲む。
崩れた壁の向こう側には、やはり大広間が広がっていた。
そしてそこにいる双子が驚愕の表情でこちらを見つめている。
その足元には……ジェネットが倒れていた。
僕は弾かれたように叫び声を上げる。
「ジェネット!」
彼女のライフはもう残り10%ほどしか残されていなかった。
や、やばいぞ。
「テメー。どうやってそこから……その腕は何だ?」
双子の姉・キーラはその手にジェネットを捕縛する用の鎖を持ちながら、僕をキッと睨みつけた。
「袋のネズミは後でゆっくり始末すればよいかと思いましたが、まさか袋を破って出てくるとは誤算でした」
妹のアディソンも忌々しげに僕に目を向けてくる。
僕は倒れたままのジェネットを見つめた。
彼女はすぐには動けそうにない。
そして僕の背後の小部屋には、まだアリアナが横たわったまま眠り続けている。
2人を連れて双子を振り切り、この場から脱出するのは到底不可能だ。
ここで僕に打てる手はひとつ。
僕はタリオを構えて蛇たちを解放し、双子を見据えた。
そんな僕を見てキーラがその顔に嘲笑を浮かべる。
「へぇ。オマエ1人でアタシらとやる気か。聖女様ですらこのザマだってのに、オマエごときに何が出来る。この勘違い野郎が」
キーラの言い草に僕は我慢できずに声を上げた。
「このザマ? このザマって何だ!」
「あん? なに一人前に怒ってやがんだテメー」
「ジェネットをウイルスでそんなふうにしておいて……そんな状態でなければジェネットが君達なんかに負けるはずないんだ!」
僕がそう怒りの声を上げると、キーラはその顔を憤怒の色に染めたけど、アディソンは逆に冷たい笑みを浮かべる。
「なるほど。ワタクシたちのアジトからモニターで一部始終を見ていたのですね。ということは……見てしまいましたね? 決して見てはいけないものを」
アディソンの目に冷徹な殺意が浮かび、僕は背すじが寒くなるのを感じずにはいられなかった。
見てはいけないもの。
それがあの古いパソコンに収められた黒幕の報告書であることは明白だった。
アディソンの暗い底なし沼のような目で睨まれると恐ろしかったけれど、僕の体の中に流れる冷たく清らかな流れが、アリアナが流していた悲しい涙を思い出させる。
それが僕の心を奮い立たせた。
もうアリアナをあんなふうに泣かせたくない。
僕はタリオを握り締めると決死の覚悟で双子と相対する。
緊張はしていたけれど、体の中を流れるアリアナの冷気のおかげか、思考はクリアーで落ち着いていた。
そして僕は考える。
双子の戦いをこれまで幾度となく見てきた僕は、彼女らとどう戦うべきかを頭の中に思い描いた。
双子のステータスは個々を見るとミランダやジェネットやアリアナに比べ、それほど強くはない。
タリオによってステータス・アップした今の僕ならキーラもしくはアディソンと1対1で戦えれば、勝てるとは言わないまでもすぐには負けないだろう。
だけど今の僕には勝利が絶対必要条件だし、相手は2人だ。
この2人は二人三脚で戦うからこそ、その強さを発揮するんだ。
だからもしこちらが2人なら、双子を分散させて戦うのが勝利への近道なんだろう。
でも今は僕1人だ。
ならばどうする?
僕の頭の中でひとつの答えがぼんやりと見えてきた。
やるしかない。
まずは倒れているジェネットの傍から双子を離さないと。
右腕は戻ってきた。
IRリングも復活している。
今使える自分の能力を全て効果的に駆使して双子と渡り合うんだ。
そう自分に言い聞かせると僕はタリオを右手で握りしめ、頭の中で黒蛇に指示を送り、2本のステルス・ナイフを左手で受け取った。
黒蛇が口から吐き出したナイフの色を見て、僕はホッと安堵する。
それは今のタリオの刀身の色と同じ青白い色だったんだ。
今までは刺さった者に眠りをもたらす桃色のナイフだったけれど、キーラはすでに誘眠効果に対する対抗措置を施していて、さっきは蛇に噛み付かれても眠りに落ちなかった。
妹のアディソンも当然、同様の対策をしてきているだろう。
桃色のナイフでは彼女らを止めることは出来ない。
だけど今、僕が手にしているナイフは青白い。
これは明らかに眠りの効果とは異なる性質を秘めているはずだ。
間違いなく僕の右腕が氷の腕となっている影響だろう。
僕が双子に勝つためには彼女らの裏をかかなきゃならない。
僕は氷の右手でタリオを握ったまま、左手で2本のステルス・ナイフを握る。
そして双子が身構える前に2本のナイフをキーラ、アディソンの順に投げつけた。
「はあっ!」
僕の目には青白く映るそのナイフは双子には見えていないはずだ。
これがヒットするとどんな効果を相手に与えるのか分からないけれど、僕にしか見えないという優位性は大いに活用すべきだった。
「フンッ! ド素人が」
「ナメられたものですね」
双子はナイフを目で見ることが出来なくても、僕がそうしたスキルを持っていることは知っている。
だから彼女たちは僕がナイフを投げたと同時に、僕の動作から射線を読んで真横へと飛んだ。
ナイフはそのまま後方の壁に突き立つ。
途端に壁がパキパキと音を立てて白く凍りついたんだ。
「なにっ?」
「これは……」
双子は背後の壁を見やって驚きの声を上げている。
驚いたのは僕自身も同じだ。
やっぱりアリアナの力を元にしているから氷系の効果が出ると思ったけれど、その威力は想像以上だった。
壁は本来の岩肌が見えなくなるほどの分厚い氷に覆われている。
あれに当たった相手は体が凍結して動けなくなるだろう。
それを見て取った双子もその顔に警戒心を露わにしている。
戦える。
戦えるぞ。
一縷の望みがより強い炎となって僕の胸に宿った。
目の前の光景に僕は思わずそう呟きを漏らした。
IRリングが吸収したアリアナの氷の涙が、失われた僕の右腕を氷の腕として再生したんだ。
そしてその右腕で握ったタリオで空を斬るように刀身を振るうと空中に巨大な凍土の固まりが現れた。
それはアリアナの上位スキルである永久凍土とまったく同じものだった。
「ど、どうして……」
唐突な現象に驚く僕だったけれど、その時、モニターの中で繰り広げられるジェネットと双子の戦いに大きな変化が訪れたためにハッとして顔を上げた。
ジェネットの体を襲う不調が先ほどまでより強くなり、ジェネットは片膝をその場について動けなくなる。
それはほんの束の間の出来事だったけれど、致命的な一瞬だった。
隙を突いたアディソンが口から放つ魔神の吐息がジェネットを襲う。
相手を溶解する恐ろしい毒霧をジェネットは避け損ねて、右足のつま先にわずかに浴びてしまった。
直撃は避けたためダメージは軽微だったけれど、バランスを崩したところにキーラが放った5、6羽の爆弾鳥が突っ込んだんだ。
爆音と爆風。
爆弾鳥の集中砲火を浴びてジェネットは大きなダメージを負い、その場に倒れ込んでしまった。
「ジェ、ジェネット!」
焦燥感に苛まれて僕は自分の右腕を見た。
不思議な力が宿ったその腕のことを僕は自分でもよく分かっていない。
だけど今はそれを悠長に考えている場合じゃなかった。
僕はこの閉ざされた部屋で孤立して何も出来なかったんだ。
でも今は違う。
今この手にある力を行使できるなら、僕がやることはひとつだ。
僕は岩肌の壁に正対して距離を取るとタリオを構えた。
「これならいける!」
倒れているアリアナに被害が及ばないよう慎重に狙いを定め、僕は思い切りタリオを振るった。
青白く染まった刀身が凍気を撒き散らしながら空を斬る。
すると空中に極寒の空気が集約されて巨大な氷と土の集合体を生み出した。
それは僕が振るった剣の勢いそのままに、岩肌の壁に激突したんだ。
大質量の物体が岩壁にぶち当たる音は想像を超えた轟音で、発生した振動が僕の全身をビリビリと震わせる。
壁はガラガラと音を立てて崩れ、半壊した。
崩れ落ちた箇所からわずかに向こう側の空間が見える。
「もう一度だ!」
僕は間髪入れずに再度タリオを振るった。
二度目の永久凍土が現れて半壊した壁にぶち当たる。
重量のある永久凍土の衝突によって、今度こそ壁は完全に崩れ去った。
僕は思わず息を飲む。
崩れた壁の向こう側には、やはり大広間が広がっていた。
そしてそこにいる双子が驚愕の表情でこちらを見つめている。
その足元には……ジェネットが倒れていた。
僕は弾かれたように叫び声を上げる。
「ジェネット!」
彼女のライフはもう残り10%ほどしか残されていなかった。
や、やばいぞ。
「テメー。どうやってそこから……その腕は何だ?」
双子の姉・キーラはその手にジェネットを捕縛する用の鎖を持ちながら、僕をキッと睨みつけた。
「袋のネズミは後でゆっくり始末すればよいかと思いましたが、まさか袋を破って出てくるとは誤算でした」
妹のアディソンも忌々しげに僕に目を向けてくる。
僕は倒れたままのジェネットを見つめた。
彼女はすぐには動けそうにない。
そして僕の背後の小部屋には、まだアリアナが横たわったまま眠り続けている。
2人を連れて双子を振り切り、この場から脱出するのは到底不可能だ。
ここで僕に打てる手はひとつ。
僕はタリオを構えて蛇たちを解放し、双子を見据えた。
そんな僕を見てキーラがその顔に嘲笑を浮かべる。
「へぇ。オマエ1人でアタシらとやる気か。聖女様ですらこのザマだってのに、オマエごときに何が出来る。この勘違い野郎が」
キーラの言い草に僕は我慢できずに声を上げた。
「このザマ? このザマって何だ!」
「あん? なに一人前に怒ってやがんだテメー」
「ジェネットをウイルスでそんなふうにしておいて……そんな状態でなければジェネットが君達なんかに負けるはずないんだ!」
僕がそう怒りの声を上げると、キーラはその顔を憤怒の色に染めたけど、アディソンは逆に冷たい笑みを浮かべる。
「なるほど。ワタクシたちのアジトからモニターで一部始終を見ていたのですね。ということは……見てしまいましたね? 決して見てはいけないものを」
アディソンの目に冷徹な殺意が浮かび、僕は背すじが寒くなるのを感じずにはいられなかった。
見てはいけないもの。
それがあの古いパソコンに収められた黒幕の報告書であることは明白だった。
アディソンの暗い底なし沼のような目で睨まれると恐ろしかったけれど、僕の体の中に流れる冷たく清らかな流れが、アリアナが流していた悲しい涙を思い出させる。
それが僕の心を奮い立たせた。
もうアリアナをあんなふうに泣かせたくない。
僕はタリオを握り締めると決死の覚悟で双子と相対する。
緊張はしていたけれど、体の中を流れるアリアナの冷気のおかげか、思考はクリアーで落ち着いていた。
そして僕は考える。
双子の戦いをこれまで幾度となく見てきた僕は、彼女らとどう戦うべきかを頭の中に思い描いた。
双子のステータスは個々を見るとミランダやジェネットやアリアナに比べ、それほど強くはない。
タリオによってステータス・アップした今の僕ならキーラもしくはアディソンと1対1で戦えれば、勝てるとは言わないまでもすぐには負けないだろう。
だけど今の僕には勝利が絶対必要条件だし、相手は2人だ。
この2人は二人三脚で戦うからこそ、その強さを発揮するんだ。
だからもしこちらが2人なら、双子を分散させて戦うのが勝利への近道なんだろう。
でも今は僕1人だ。
ならばどうする?
僕の頭の中でひとつの答えがぼんやりと見えてきた。
やるしかない。
まずは倒れているジェネットの傍から双子を離さないと。
右腕は戻ってきた。
IRリングも復活している。
今使える自分の能力を全て効果的に駆使して双子と渡り合うんだ。
そう自分に言い聞かせると僕はタリオを右手で握りしめ、頭の中で黒蛇に指示を送り、2本のステルス・ナイフを左手で受け取った。
黒蛇が口から吐き出したナイフの色を見て、僕はホッと安堵する。
それは今のタリオの刀身の色と同じ青白い色だったんだ。
今までは刺さった者に眠りをもたらす桃色のナイフだったけれど、キーラはすでに誘眠効果に対する対抗措置を施していて、さっきは蛇に噛み付かれても眠りに落ちなかった。
妹のアディソンも当然、同様の対策をしてきているだろう。
桃色のナイフでは彼女らを止めることは出来ない。
だけど今、僕が手にしているナイフは青白い。
これは明らかに眠りの効果とは異なる性質を秘めているはずだ。
間違いなく僕の右腕が氷の腕となっている影響だろう。
僕が双子に勝つためには彼女らの裏をかかなきゃならない。
僕は氷の右手でタリオを握ったまま、左手で2本のステルス・ナイフを握る。
そして双子が身構える前に2本のナイフをキーラ、アディソンの順に投げつけた。
「はあっ!」
僕の目には青白く映るそのナイフは双子には見えていないはずだ。
これがヒットするとどんな効果を相手に与えるのか分からないけれど、僕にしか見えないという優位性は大いに活用すべきだった。
「フンッ! ド素人が」
「ナメられたものですね」
双子はナイフを目で見ることが出来なくても、僕がそうしたスキルを持っていることは知っている。
だから彼女たちは僕がナイフを投げたと同時に、僕の動作から射線を読んで真横へと飛んだ。
ナイフはそのまま後方の壁に突き立つ。
途端に壁がパキパキと音を立てて白く凍りついたんだ。
「なにっ?」
「これは……」
双子は背後の壁を見やって驚きの声を上げている。
驚いたのは僕自身も同じだ。
やっぱりアリアナの力を元にしているから氷系の効果が出ると思ったけれど、その威力は想像以上だった。
壁は本来の岩肌が見えなくなるほどの分厚い氷に覆われている。
あれに当たった相手は体が凍結して動けなくなるだろう。
それを見て取った双子もその顔に警戒心を露わにしている。
戦える。
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