異界の異邦人〜俺は精霊の寝床?〜

オルカキャット

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4章 鉱山都市グランデ

33話 到着

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 ロサードさん率いるラトーナ商会隊商は次の朝早く激戦の野営地を出立し、拍子抜けするくらいに何事もなく鉱山都市に向けて進んでいった。

 最後の野営地もなんもイベントは起こらず、俺たちは鉱山都市に向けて最後の工程に入った。

 道はだんだん勾配がきつくなり、俺たちは御者を残して徒歩移動となる。
 この道の先に本当に都市と呼ばれる場所があるんだろうか。

 鬱蒼とした大森林を進んでいると思ったが、勾配がきつくなるにつれ空が開け針葉樹林の中を進むようになる。
 最後尾の幌付きの馬車に並行して俺は進む。愛刀はか肩から外して手に持って、周りを警戒しながら進んでいる。

 ちなみにブエナさんは、怪我もしてるし体重も軽いからと馬車に乗っている。多分携帯食をかじりながら寝ているんだろう。
 ついでに闇精霊の眷属猫はジャケットの中に入っている。だから俺のお腹は中年太りのように膨らんでいる。時々胸前から顔を出して周囲を確認し、またごそごそと潜り込んで眠ってる。

 ロサードさんが見回りがてらやってきた。
 俺と並んで歩き出す。

「トーマ、話がある」
「なんですか?」
「なぜ魔法陣が壊せた?」
「じーさん魔道士が精霊獣を呼び出したあの魔法陣ですか、それは……ブエナさんがルナステラさんを攻撃するとき『契約魔獣と戦うときは契約者を倒すのが一番にゃ』って言ってたのを思い出して、じゃあ契約精霊獣を倒すのなら……と」
「それを聞いてなぜ『契約精霊と戦うときは魔法陣を壊せばいい』ってなるんだ? 飛躍しすぎだろう」
「あのじーさん魔道士、俺が近づいたらニヤッと笑って杖構えたし、なんか近接戦闘強そうだなあって、はは……」

「そうじゃなくて! なせ魔法陣が壊せたかと聞いている。普通は上位魔道士の描いた魔法陣などただの鉄剣で壊せるわけがないんだよ」

 なぜかイラついているロサードさん。

「は?それはこの剣が優秀だから。あと、身体強化魔法をかけたいなあと、ついでに刀にもかけたいなあと思って……それでぶん殴ったら壊れた?」
「ちょっと待て。身体強化を剣にかける? 付与魔法か。お前、付与魔法も使えるのか?」
「ムリです。ムリです。思っただけです。攻撃魔法系は使えないです。身体の中でマナをぐるぐる回すだけで……」
「それが身体強化の極意だ」
「は?」

「ロサードそろそろだよー」

「ったくこっちの想像を外しまくるやつだなあ、まあいい。終わり良ければすべて良し、ということにしておこう」
「すいません」

 とりあえず謝っておこう。

「それから……お前、それと契約したのか?

 いつの間にか俺の懐から顔を出している子猫を見る。

「契約? いやこれただの野良猫です、なんか妙に懐いちゃって。はは……」
「気をつけろ、そいつは精霊獣の子だ」

 ロサードさんはそのまま隊列の前の方へ帰っていった。

 ……でしょうね。
 闇精霊の眷属、黒豹の子供、三馬鹿トリオその三。野良猫のわけがない。

 なんでお前付いてきたんだ? あの闇精霊のおねーさんに捨てられたのか? ムーとふてくされた声を出しながら、また服の中に潜り込む馬鹿猫。


 山の頂上に向かって進んでいると思っていたのにいつの間にか左右に岩山がそびえる渓谷に出た。
 そしてその渓谷を塞ぐように大きな壁が我々の前に立ちふさがる。

 それは城壁だった。太い丸太がびっしりと並んだ城壁。
 大きな観音開きの門がゆっくりと開く

「着いたにゃ。これが鉱山都市グランデにゃ」

 一人だけ十分休息の取れたブエナさんが馬車から降りて紹介してくれた。
 都市というよりも隠し砦みたいな感じがする。悪人が巣食っているのだろうか。

 馬車と共にを大きく開いた門をくぐるとそこは別世界だった。

 ど真ん中に石畳の道路が続き、大小石造りの白い建物が左右にずらっと並んでいる。
 隊商が到着したのを知ったのか住人たちが集まってくる。
 俺たちは馴染みある青い鳥のマークを掲げた大きな白い建物、ラトーナ商会の出張所の前、道の駅の駐車場みたいなところに馬車を止める。

 次々と降ろされた積み荷は、一頭立ての荷馬車や大八車みたいなものに小分けされ、あちこちへ運び出されていく。

 書類を持ったロサードさんとディーさんが、テキパキと采配を振るっている。

 俺は少し感動している。

 人間に混じって獣耳や尻尾のある人がいる、耳のとんがった痩せた人がいる、そして背は低いがずんぐりむっくりとしたガタイのいい髭もじゃの人がいる。

 ドワーフだ。やっぱ鉱山都市というからにはドワーフがいなくっちゃ。
 さすがファンタジー。押さえるところははずさない。

 ようやく一段落したとき、

「ごくろうさんですロサードさん」

 大きな白い建物から一人の男がやってきてロサードさんと握手をした。
 こっちにも握手の習慣はあるんだ。

「お久しぶりです会頭。なんとか無事にたどり着きました。馬車が二台が損しましたが、主要な積荷はなんとか」
「まあいろいろあったみたいですね。詳しい話は改めて」

 会頭っていうことはラトーナ商会の代表? ということは出張所を仕切っているというディオネさんの旦那さん?
 でもなんでアドラーブルの商会より出張所の方がでかくて立派なの? なんで俺よりでかかったディオネさんの旦那が、ひょろっとして文学青年のような人なの? これで趣味で俺の愛刀鬼切丸を鍛えたって……。

「冒険者のみなさーん! お疲れ様でしたー! これで護衛依頼は一旦完了です。事務所で報酬をお渡ししますので受付で手続きしてくださーい」

うん、声は大きい。

「おおおおおおっ」

 歓声をあげる冒険者たち。

「宿泊所にささやかな宴会を用意しておりますので、今日はゆっくり疲れを癒してください」
「うおおおおっ、飲むぞー」
「食うぞー」
「飲んで食うぞー」

 ウキウキとラトーナ商会の事務所に駆けて行く冒険者たち。

「あれもう報酬がもらえるの、嬉しいけど……往復の依頼じゃなかったの?」
「護衛依頼は片道精算が基本にゃ。いつ何が起こるかわからないからなのにゃ」

 と言いながら駆けていくブエナさん。うん、荷下ろしの時はいなかったので元気だ。


 ラトーナ商会事務所の受付に、ずらりと並ぶ列の最後尾に並ぶ俺。
 出遅れてしまった。

「おいトーマちょっと来い」
「はい?」

 ロサードさんが呼んでいる。

「あの俺まだ報酬を……」
「そんなもん後でいいから来い」
「はーい」

 そんなもんて、命がけの報酬なのに。

「……ブツブツ」

 俺はブツブツと声を出しながら不満を表明しつつロサードさんの元へ。
 そして事務所の奥へ連れていかれる。

「君がトーマくんかあ、さあこっちきてこっち」

 事務所の応接室に入ると文学青年風の会頭さんが歓迎してくれた。
 アドラーブルの事務所よりはるかに豪華な応接セットに座ると、いきなり会頭さんは体を乗り出して俺に言った。

「どうだった?」
「は?」

 なんの話?

「会頭、慌てすぎです」
「あごめんごめん、嬉しくてつい」
「会頭さんは自分が作った武器の使用感を聞きたいんだよ、聞いたことないからな、誰も使わねーから」
「ロサードさん?」
「あ、すいません」

 そうか、鬼切丸の制作者として使用感を聞きたいのか。
 俺は手に持った愛刀鬼切丸を机の上に乗せた。

「ありがとうございました:ディオネさんから冒険者になったお祝いにいただきました」
「あれ? なんで布に包んでいるの? 使えなかった?」

 ちょっと悲しい顔の会頭さん。

「使えました使えました。これは鞘を作る暇がなかったのでこんな感じになってます」

 ほんとはお金がなかったんだけど。

「そうかいそうかい」

 会頭さんは刀を縛っていた革ひもを器用に外して鬼切丸を片手で持ち上げた。

「え?」

 そう、片手で刀を、この重い刀を片手で持ち上げたんだ。

「お、かなり使ってくれたんだね、うん刃こぼれもないみたいだ、もう少し手入れはした方がいいね、うんそれでそれで、使用感は?」

 俺はそれとなくロサードさんを見る。

「お世辞なんか言わなくていいぞ、何言われても嬉しい変態さんだから」
「ウンウン」

 ニコニコしてる会頭さん。
 さりげなくデスられてるんですけど……。

「わかりました。使用感をお伝えします」
「ウンウン」

「まず重たい、重すぎる。いろんなパターンが揃えるのなら別ですが、武器は使う人の身体に合わせて作るべきです。次に最大の欠点、刃が起きていない。切れないんです。直刀のように叩きつけたり突き刺したりするのなら別ですが、引き切る武器ならもっとキレをよくするべきです。それと柄がむき出しの鉄って、汗や血糊で滑って……それから」
「ちょっとまて。さすがに言い過ぎだ」

 ロサードさんが俺を止める。
 しまった興奮して思いっきり製作者に失礼なことを、お祝いタダでもらったのに……。

 やば、会頭さんがプルプル震えてる。やばい。

「すいません、言い過ぎました この武器のおかげで何度命を助けてもらったか」
「素晴らしい!」
「「え?」」

 ガバッと立ち上がり俺の両手を握る会頭さん。

「私は感動した、素晴らしい。これほどの使用者の声を聞けたのは初めてだ」
「そりゃそうだろ、だれっも使えねーんだから」
「ロサードさん?」
「すいあせん」

「よし決めた。このラトーナ商会会頭ビスタ・ラトーナは、この少年の武器をオーダーメイドで開発することを誓おう。鍛冶魂をかけて!」
「ええっ?」
「……あんたは商会の代表、刀鍛冶は趣味だろう、魂かけるなよ」
「ロサードさん?」
「さーせん」

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