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5章 領都プリンシバル
54話 学園ドラマで戦闘を
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目が覚める。ポケットから腕時計を出す。午前六時。
緊張しているのか、あれほど苦手だった早起きが旅の間はできるようになっている。
ベッドから上半身を起こして周りを見る。
お腹の上で寝ていた黒猫がゴロンとベットまで落ちる。
ムー……不満の声を出しながらそのまま寝る精霊猫ムー。
今日はムーの当番か。
とりあえず起きて柔軟体操をする。腹筋、腕立て伏せ、スクワット。しばらくできなかった基礎訓練をまた始めようと思う。体を鍛えなければ死に直結するなと思って始めたストレッチ。かなり動くようになった。
次にそばに立てかけていた鬼切丸を抜く。
左手で握り左肩に担ぐ。右手を添えて袈裟斬り。手首を返して逆袈裟。切っ先を降ろして水平になぐ。そして右脇に構えて突き。
今の所これが一番楽して振れる刀の動き。
鉱山都市ラトーナ商会会頭のビスタさんに調整はしてもらったけど、やはり振り続けるとかなり重さが腕に来る。
旅の間は鍛える暇なかったもんなあ。
刀を青眼に構える。今度は体内のマナを身体中に駆け巡らせたいと思う。思うだけでなく、おへその下あたりに溜まったマナを手足の先まで巡らせるように意識をする。
ロサードさん曰く、身体強化の極意。
「身体強化」
もう一度刀を振る。これはすごい、刀が風のようだ……などということはなく、ちょっと楽になったかなあという程度か。う~ん、先は長い。
「トーマさーん、朝ですよー起きてくださーい」
リビングからルナステラさんの声がする。
汗を拭いてリビングへ。
テーブルにパンとスープが並んでいる。
「これどうしたの」
「はい、食堂へ行って朝食もらってきたです。もちろん無料でした」
うん、よくできた従者だ。
水場で顔を洗って着替えて出かけようと思ったが、部屋に鍵がかかるので荷物と防具は置いていくとして、やはり武器は持っていくことにした。懐にムーを入れてローブを着る。
アクア棟の教務室まで事務官さんを訪ねて行くと、すでに書類にまみれて仕事をしている事務官さん。
「あ、おはようございます。早かったですね。とりあえずこれをお渡ししておきます。通行証です」
といって冒険者カードと同じ大きさの青いカードを2枚もらった。
「これで学園内の施設は普通に出入りできますので。あくまでも仮ですが」
そう言いながら書類をひとまとめにして出て行こうとする。
「ちょっと事務官さん、どこへいくんですか?」
「魔導科主任の所ですが、朝から研究棟にいるという情報が入りましたので」
はあ……。
ルナステラさんと顔を見合わせ、仕方がないので急ぎ足で事務官さんの後についていく。
学舎を離れ、公園のような森の中を抜けると研究棟があるらしい。
早足で歩きながら主任講師の情報を教えてくれる事務官さん。
「魔導科の主任講師はアジュール・ファンローズ教授です。召喚魔法研究の第一人者ですが個性的というか独創的というか……」
ドガガガガ! グオオオオン!
その時研究棟の方で大きな破壊音が聞こえる。
「ダメだー制御が効かん」
「警備兵を呼べー」
「わあああああ」
なんだー! と尻餅をつく事務官。
「いくぞ!」
「はい」
ルナステラさんに声をかけて事務官をほったらかしにして現場に向かう。
鉄柵で囲まれた石造りの建物、これが研究棟なんだろうか。
しかしそこには阿鼻叫の世界が展開していた。
グオオオオオッ!
そこで大見得を切っているのはクマ? フォレストベアよりも大きく前足が発達している茶褐色の大型獣。
「なんだこいつは?」
「ガイアベアです。なんでこんなところに……」
ルナステラさんが唖然としている。それをかばうようにザイラが戦闘態勢をとる。ムーは寝ている。
『ガイア……テリウム……狂乱?』
あ! 起きたのか叡智の精霊。あいつはなんなんだ、おい、なんとかしてくれ。
『Unknown……zzz』
寝るなー!
前足が長めのガイアベアが二本足で立ち、その両手でガツーンズガーンと周りの建物や並木を破壊している。
「ダメだー契約魔法が効かん。なんとかしろー」
白衣の女の人が喚いている。
「なんとかってできるわけないでしょ。警備兵はまだですか、このまま鉄柵を超えたら学園になだれ込みますよ!」
「私が許す、誰でもいいから攻撃して奴を倒せー」
「俺たち研究生ですよ、倒せるわけないでしょー」
ガイアベアは自分の進行を邪魔する鉄柵に、よほど腹が立っているのかガツンガツンと殴る。大きくひしゃげる鉄柵。
やばい、逃げたい、どうしよう……
「いけ!ザイラ!」
ウオオオオオオルル!
ザイラがウォークライとともにガイアベアに向かって走る。折れかけている並木に飛び上がり、三角飛びでガイアベアの顔面に攻撃を加える。
腕の一振りでザイラを攻撃、それをかわして体を捻って腕を蹴り、反転して着地、距離を取るザイラ。
「何してるんだルナステラさん!」
「このままでは学園になだれ込みます。学生たちにどれだけ被害が出るか」
「だからってザイラ一頭じゃ無理だろ」
「はい、だから……」
だから? ルナステラさんが俺をじっと見ている……うるっとした目で仲間になりたそうに……ふざけている場合ではない。
「わかったよ!」
俺は懐からムーを取り出しルナステラさんに放り投げ、愛刀鬼切丸を抜く。
二本足で立って前足で攻撃するやり方、フォレストベアと同じような気がする。
あの時のロサードさんの戦い方……。
俺は体内のマナを身体中に駆け巡らす。そして左手から鬼切丸にマナを流し……たいなあと思う。
「ザイラ、牽制しろ!」
俺の命令を聞くかどうかわからないがザイラに気を引いてもらい、鬼切丸を左肩に担ぎながら走る。
「ザイラ、敵を挑発して!」
途端にアイラがガイアベアの周りを走り、隙あらば攻撃しようとする。
イラついたガイアベアが立ち上がり両腕を振り回す。
俺は鬼切丸に両手を添えて、すり抜けざま左足を叩き斬る!
ガツッ!
大腿骨を断ち切る手応えはあったが切断することはできなかった。
グオオアアアアアッ!
しかしガイアベアが悲鳴をあげながら横倒しになる。
その隙を逃さず、ザイラが跳躍し顔面をかきむしる。
俺は態勢を立て直し、鬼切丸を脇構えに取り、後ろから延髄へ突き刺す。
ガアッ……
断末魔の声とともに痙攣し、地面に倒れるガイアベア。
剣を抜き残心をとるつもりだったのに、引き抜いたその反動で尻餅をつく俺。最後の最後で……かっこ悪い。
しばらく息を整え鬼切丸を杖代わりに立ち上がろうとすると。
「動くな!」
「は?」
落ち着いて周りを見ると、遠巻きに野次馬がわんさかと集まってきている。青いローブを着ているので学生なんだろうか。
そして俺の周りにはようやく駆け込んで来たのか、警備兵と思われる人たちが、槍を俺に向けて威嚇している。
「はあ?」
喧嘩売ってるのかお前ら! と心の中で言ってみる。
なんとザイラが俺の目の前にきて警備兵をガルルと威嚇している。
珍しいと思ったら、
「トーマさん大丈夫ですか、お怪我はありませんか」
あ、ルナステラさんの命令ね。
両手に抱かれたムーが飛び降りてきて俺の前にすくっと立ち、シャーッと耳を伏せ、尻尾を膨らまして警備兵を威嚇する。
おおっ、俺を守ろうとしているのか? 全然怖くないけど。
「待て! 何をしている。その者は魔獣を倒して学園を守った功労者だぞ!」
「あ、ファンローズ教授!」
現れたのはさっきから周りの人に命令をしていた汚れてボロボロになった白衣を着ている女性。背は高く銀色のボサボサの髪そして……そこから見える尖った耳、またエルフか。
この人が主任講師?
いつの間にか横に事務官が立っている。
「き、教授、この魔獣は! 一体何があったんですか!」
「いやあ、新しい召喚魔法陣を開発してな、召喚したらとんでもない奴が召喚されたんだ。私の契約魔法も全く役に立たんかった。どこが間違ってたんだろうか、自信はあったのになあ、いやあ失敗失敗」
と言いながらあっけらかんとしている教授。
「「「またあなたですか」」」
全員が合唱する。
やばい、また残念エルフだ。
この人が魔導科主任? 大丈夫なのかこの学園。
緊張しているのか、あれほど苦手だった早起きが旅の間はできるようになっている。
ベッドから上半身を起こして周りを見る。
お腹の上で寝ていた黒猫がゴロンとベットまで落ちる。
ムー……不満の声を出しながらそのまま寝る精霊猫ムー。
今日はムーの当番か。
とりあえず起きて柔軟体操をする。腹筋、腕立て伏せ、スクワット。しばらくできなかった基礎訓練をまた始めようと思う。体を鍛えなければ死に直結するなと思って始めたストレッチ。かなり動くようになった。
次にそばに立てかけていた鬼切丸を抜く。
左手で握り左肩に担ぐ。右手を添えて袈裟斬り。手首を返して逆袈裟。切っ先を降ろして水平になぐ。そして右脇に構えて突き。
今の所これが一番楽して振れる刀の動き。
鉱山都市ラトーナ商会会頭のビスタさんに調整はしてもらったけど、やはり振り続けるとかなり重さが腕に来る。
旅の間は鍛える暇なかったもんなあ。
刀を青眼に構える。今度は体内のマナを身体中に駆け巡らせたいと思う。思うだけでなく、おへその下あたりに溜まったマナを手足の先まで巡らせるように意識をする。
ロサードさん曰く、身体強化の極意。
「身体強化」
もう一度刀を振る。これはすごい、刀が風のようだ……などということはなく、ちょっと楽になったかなあという程度か。う~ん、先は長い。
「トーマさーん、朝ですよー起きてくださーい」
リビングからルナステラさんの声がする。
汗を拭いてリビングへ。
テーブルにパンとスープが並んでいる。
「これどうしたの」
「はい、食堂へ行って朝食もらってきたです。もちろん無料でした」
うん、よくできた従者だ。
水場で顔を洗って着替えて出かけようと思ったが、部屋に鍵がかかるので荷物と防具は置いていくとして、やはり武器は持っていくことにした。懐にムーを入れてローブを着る。
アクア棟の教務室まで事務官さんを訪ねて行くと、すでに書類にまみれて仕事をしている事務官さん。
「あ、おはようございます。早かったですね。とりあえずこれをお渡ししておきます。通行証です」
といって冒険者カードと同じ大きさの青いカードを2枚もらった。
「これで学園内の施設は普通に出入りできますので。あくまでも仮ですが」
そう言いながら書類をひとまとめにして出て行こうとする。
「ちょっと事務官さん、どこへいくんですか?」
「魔導科主任の所ですが、朝から研究棟にいるという情報が入りましたので」
はあ……。
ルナステラさんと顔を見合わせ、仕方がないので急ぎ足で事務官さんの後についていく。
学舎を離れ、公園のような森の中を抜けると研究棟があるらしい。
早足で歩きながら主任講師の情報を教えてくれる事務官さん。
「魔導科の主任講師はアジュール・ファンローズ教授です。召喚魔法研究の第一人者ですが個性的というか独創的というか……」
ドガガガガ! グオオオオン!
その時研究棟の方で大きな破壊音が聞こえる。
「ダメだー制御が効かん」
「警備兵を呼べー」
「わあああああ」
なんだー! と尻餅をつく事務官。
「いくぞ!」
「はい」
ルナステラさんに声をかけて事務官をほったらかしにして現場に向かう。
鉄柵で囲まれた石造りの建物、これが研究棟なんだろうか。
しかしそこには阿鼻叫の世界が展開していた。
グオオオオオッ!
そこで大見得を切っているのはクマ? フォレストベアよりも大きく前足が発達している茶褐色の大型獣。
「なんだこいつは?」
「ガイアベアです。なんでこんなところに……」
ルナステラさんが唖然としている。それをかばうようにザイラが戦闘態勢をとる。ムーは寝ている。
『ガイア……テリウム……狂乱?』
あ! 起きたのか叡智の精霊。あいつはなんなんだ、おい、なんとかしてくれ。
『Unknown……zzz』
寝るなー!
前足が長めのガイアベアが二本足で立ち、その両手でガツーンズガーンと周りの建物や並木を破壊している。
「ダメだー契約魔法が効かん。なんとかしろー」
白衣の女の人が喚いている。
「なんとかってできるわけないでしょ。警備兵はまだですか、このまま鉄柵を超えたら学園になだれ込みますよ!」
「私が許す、誰でもいいから攻撃して奴を倒せー」
「俺たち研究生ですよ、倒せるわけないでしょー」
ガイアベアは自分の進行を邪魔する鉄柵に、よほど腹が立っているのかガツンガツンと殴る。大きくひしゃげる鉄柵。
やばい、逃げたい、どうしよう……
「いけ!ザイラ!」
ウオオオオオオルル!
ザイラがウォークライとともにガイアベアに向かって走る。折れかけている並木に飛び上がり、三角飛びでガイアベアの顔面に攻撃を加える。
腕の一振りでザイラを攻撃、それをかわして体を捻って腕を蹴り、反転して着地、距離を取るザイラ。
「何してるんだルナステラさん!」
「このままでは学園になだれ込みます。学生たちにどれだけ被害が出るか」
「だからってザイラ一頭じゃ無理だろ」
「はい、だから……」
だから? ルナステラさんが俺をじっと見ている……うるっとした目で仲間になりたそうに……ふざけている場合ではない。
「わかったよ!」
俺は懐からムーを取り出しルナステラさんに放り投げ、愛刀鬼切丸を抜く。
二本足で立って前足で攻撃するやり方、フォレストベアと同じような気がする。
あの時のロサードさんの戦い方……。
俺は体内のマナを身体中に駆け巡らす。そして左手から鬼切丸にマナを流し……たいなあと思う。
「ザイラ、牽制しろ!」
俺の命令を聞くかどうかわからないがザイラに気を引いてもらい、鬼切丸を左肩に担ぎながら走る。
「ザイラ、敵を挑発して!」
途端にアイラがガイアベアの周りを走り、隙あらば攻撃しようとする。
イラついたガイアベアが立ち上がり両腕を振り回す。
俺は鬼切丸に両手を添えて、すり抜けざま左足を叩き斬る!
ガツッ!
大腿骨を断ち切る手応えはあったが切断することはできなかった。
グオオアアアアアッ!
しかしガイアベアが悲鳴をあげながら横倒しになる。
その隙を逃さず、ザイラが跳躍し顔面をかきむしる。
俺は態勢を立て直し、鬼切丸を脇構えに取り、後ろから延髄へ突き刺す。
ガアッ……
断末魔の声とともに痙攣し、地面に倒れるガイアベア。
剣を抜き残心をとるつもりだったのに、引き抜いたその反動で尻餅をつく俺。最後の最後で……かっこ悪い。
しばらく息を整え鬼切丸を杖代わりに立ち上がろうとすると。
「動くな!」
「は?」
落ち着いて周りを見ると、遠巻きに野次馬がわんさかと集まってきている。青いローブを着ているので学生なんだろうか。
そして俺の周りにはようやく駆け込んで来たのか、警備兵と思われる人たちが、槍を俺に向けて威嚇している。
「はあ?」
喧嘩売ってるのかお前ら! と心の中で言ってみる。
なんとザイラが俺の目の前にきて警備兵をガルルと威嚇している。
珍しいと思ったら、
「トーマさん大丈夫ですか、お怪我はありませんか」
あ、ルナステラさんの命令ね。
両手に抱かれたムーが飛び降りてきて俺の前にすくっと立ち、シャーッと耳を伏せ、尻尾を膨らまして警備兵を威嚇する。
おおっ、俺を守ろうとしているのか? 全然怖くないけど。
「待て! 何をしている。その者は魔獣を倒して学園を守った功労者だぞ!」
「あ、ファンローズ教授!」
現れたのはさっきから周りの人に命令をしていた汚れてボロボロになった白衣を着ている女性。背は高く銀色のボサボサの髪そして……そこから見える尖った耳、またエルフか。
この人が主任講師?
いつの間にか横に事務官が立っている。
「き、教授、この魔獣は! 一体何があったんですか!」
「いやあ、新しい召喚魔法陣を開発してな、召喚したらとんでもない奴が召喚されたんだ。私の契約魔法も全く役に立たんかった。どこが間違ってたんだろうか、自信はあったのになあ、いやあ失敗失敗」
と言いながらあっけらかんとしている教授。
「「「またあなたですか」」」
全員が合唱する。
やばい、また残念エルフだ。
この人が魔導科主任? 大丈夫なのかこの学園。
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