異界の異邦人〜俺は精霊の寝床?〜

オルカキャット

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5章 領都プリンシバル

58話 朝の授業風景

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 『召喚魔法基礎Ⅱ』の授業はしょっぱなから担当教授不在のままスタートした。

 「また休んでんの?」という声が学生達から出ているが、そのまま授業は進められていく。よほどサボりぐせのある教授らしい。

 凸凹コンビのボタジェさんとカフナさんが授業の説明をし、後ろでオレが踏ん反り返ってるという構図。
 別に偉そうにしてるわけではない。彼らは助手なので、講師がいないと授業は成立しないらしい。
 つまりオレは休講にならないために雇われた臨時講師。というかファンローズ教授がサボるための穴埋め?
 うん、それなら冒険者でもできる。なぜか肩の荷が降りる。

 鉄柵で囲まれた野外教室と思われる広場に、小動物の入った檻が並べられている。それを取り囲む学生達と講師陣。

「さあ皆さん、好きな動物を選んで。前期で学んだ契約魔法を使って契約してみましょう。契約魔法の呪文は覚えてますか」

 ずんぐりむっくりのカフナさんが授業を進める。

「忘れたー覚えてないー」
「知ってるー」
「覚えてるー」
「ええ~こんな動物を従魔にすんの~」
「もっとかっこいいやつがいい」

 ワラワラと十数人の学生が文句を言いながらも授業を受けている。
 一応全員短めの青いローブを着ている。学生用の制服か? 他の色も見たような気がする。一年生用かも。

「人数分の動物がいないような気がするんだけど……」

 黙って立っているのも芸がないので、それとなく俺は手の空いているポタジェさんに話しかけてみる。

「充分じゃないっすか。全員が契約なんてできるわけないから、数人が契約できたらいい方だろうね」
「今日中に?」
「後期が終わるまでにだよ。それに小動物は知能が低いし野生本能が強いので、契約できてもすぐ解除される。その分使い回しもできるしね」

 ふーん、そんなものなのかと檻の前で必死になってる学生達を見る。

「汝の身は我が元に、我が心は汝の元に、聖なる掟に従い、我が身に従うならば応えよ!」

 ウサギに向かって呪文を唱える学生がいる。
 変なポーズをとって小鹿に呪文を唱える学生がいる。
 うわあ、恥ずかしい。

「可愛いですね。昔を思い出します」

 ニコニコしながら俺の隣で学生の奮闘を見ているルナステラさん。

「ルナステラさんもあんな呪文を唱えてザイラを従えたの?」
「あれは従魔契約の基礎訓練なのです。小動物で成功すれば次は本格的に魔獣契約に挑戦します。まあ、数日で契約できる子もいれば一年経ってもできない子もいますので」
「小動物で契約できない子は才能がないと?」
「いえ、みんなその前に諦めます。自分に向かないんだと。諦めなければ能力は後からついてくるのですけど……」
「ルナステラさんは諦めなかったということか」
「はい、憧れでしたから……」

 従者として従魔に憧れるってどういうことなんだろう。そういや従者のこともルナさんのことお何にも聞いていない。聞いても従者の矜持ってやつでごまかされるし。この領には従者ギルドってあるんだろうか。


「センセーセンセー、うまく契約できないのー、なんかいい方法ないのー?
「ハハハ、いきなりは無理ですよ。何度も繰り返したらそのうちできるんじゃないですか」
「使えないわねーだから助手止まりなのよー」
「な、何!」

 あの子は確か昨日のガイアベアの騒動をばらした子だ。茶髪でショートヘアの名前は……知らん。カフナさんが言い込められている。

「あ、そっちの新入り先生。なんかいい方法教えてよ。その猫、どうやって契約したのー?」

 といって俺の肩で寝ている契約獣? ミーにトコトコと近づいて手を出してくる。

 シャー!
 お怒りのミー。

「何よ、怖いのね、ただの猫なのに」

 いえ、ただの猫じゃないんです。

「やっぱり何度も何度も挑戦することじゃないんですか」
「そんな当たり障りのない意見は聞いてないわ。ねえ、あんたはどうやって契約したの?」

 う~ん、他人の受け売りで誤魔化すのは通じないか。呼び名がセンセーからあんたになっている。
 自称闇の上位精霊が俺のマナを吸うために三馬鹿トリオを交代で派遣しているのは知っている。でもこいつらと最初に関わりになったのは……確か、イノシシに襲われてたのを助けたんだ。
 ルナステラさんも怪我をしたザイラを助けたというし……。

「恩を売る?」
「はあ、何それ」

 両手を腰に、眉の間にシワを寄せる女の子。

「いや、仲良くすることかな、困ってたら助けるとか、お腹が空いてたら餌をやるとか……」
「餌だ! 餌をやって仲良くするんだね!」

 そう言いながらカフナさんのところへ走っていく茶髪ショートヘアの女の子。
 餌の在り処を聞いたのか倉庫へ走っていく。それをこっそり聞いてたのか他の学生さん達も追いかけていく。盗み聞きしてたのかな。

 そうこうしてるうちに、二時限目。
 時間の単位は『刻』と訳されている。
 時間割によると、授業は午前五刻から六刻が一限目 六刻から七刻が二時限目となる。
『召喚魔法基礎Ⅱ』は実技の時間なので一二限ぶっ通しで行われる。

 わかりやすくいうと朝八時から十時までが一時限目、十時から十二時までが二時限目となる。
 一刻二時間と考えればいいかというとそうでもない。
 問題は日の出が午前四刻、日の入りが午後四刻。つまり、季節によって一刻の長さが違うんだ。夏は長くなり冬は短くなる。ええい、ややこしい。

 野外教室の周りには所々に木製のテーブルと長椅子が備え付けられている。
 俺たちはそこに座ってダラーーと学生さん達を見ている。
 実技の時間だからこれでいいらしい。
 学生さん達は小動物の入った台車付きの檻をあっちこっちに持って行って、気に入った小動物の檻に集まり、契約魔法を使ってる……というか倉庫から持ってきた餌をやりながら仲良くなろうと頑張っている。うん、可愛いもんだ。

「わああ、逃げたー!」
「誰だ檻開けたのー!」

 逃げたのは小鳥。自由を得た鳥達は、そのまま空へ向かって飛んで行った。

「あーあ、また捕まえてこなくちゃ。でもまあ鳥だからあっさり逃げたけど、獣だったら捕まえるのに大騒になったところだ」

 ポタジェさんはいつものことのように軽く流している。逃げる方が問題じゃないのか。

「なあんで檻開けるのよー」
「だって、ビビッときたんだ。餌も食べたし、契約魔法かけたら俺のこと見つめてたし、これはいけると檻開けたら……逃げちゃった」
「餌が欲しかっただけじゃないのー使えないわねー」

 ワイワイガヤガヤと『召喚魔法基礎Ⅱ』は続く。
 うん、この授業内容なら何とか続けられるかなと心の中で安堵した。
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