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仮称ベヒモス迎撃作戦
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仮称ベヒモス。
アンダカーラ教団が造りあげた決戦合成獣。
多脚を備えた岩山と形容するべき生物兵器である。いわば、移動する要塞である。
体内で鴆毒を生成し、石弾にて射出する。
カルシウム化合物を弾殻として十キログラムの鴆毒液が封入されている。着弾すると破裂して気化し、周囲一帯の土壌を汚染する。
万能薬で毒を無効化できれば、たいした兵器ではない。
亜音速で射出される十キログラムの弾体。
最大射程は魔術を併用しても二里、有効射程は半里がせいぜいだろう。
まじめに戦争してほしいものだ。
カロル・ダルヴァロス少佐は指揮壕から兵たちの前進を眺めながら考える。
仮称ベヒモスを移動要塞として運用するならば、まともな砲を備えていてしかるべきだ。移動可能で強固に防御された重砲陣地。
いうなれば、陸上戦艦。
少佐は知らなかった。
まさにそのような存在が、地中を潜航しているという事実を。
《合衆国》東インド艦隊旗艦。
原子力戦列艦エンタープライズ。
しかし、その地上出現はまだすこし先のはなしである。
聖都最終防衛中隊は四台の鉄甲車を鏃とする鋒矢の陣を敷いた。
矢柄部分に位置する歩兵は盾兵と工兵が主である。盾兵は巨大な盾を構えて前進する。仮称ベヒモスに搭乗した兵の銃撃を防ぐためである。
オーソドックスな攻城戦だ。
カロル・ダルヴァロス少佐は常識的な作戦を好む。そうでなければ、治安維持部隊の現場指揮官など務まらない。
防衛側が攻城戦を仕掛けているところにおもしろみを感じないではなかった。
鉄甲車が二百間の距離に迫った。
およそ四百メートル。
身体強化上手の古強者どもにとって、二百間は指呼の距離である。
中隊主力は鉄騎小隊を先頭に突撃にうつった。
鬨の声をあげ、大楯を構えた盾兵が、円匙や鶴嘴を手にした工兵が躍進する。
鉄甲車が速度をあげる。
全周を鉄板で囲んだ装甲馬車と言うべき兵器だった。これを攻城兵器として運用する。
鉄甲車の前面に衝角が備えられている。
ただの衝角ではない。
騎爆槍である。
さらに、めいっぱい爆薬を積んでいる。
四台の鉄甲車が仮称ベヒモスの右半身に攻撃を指向する。岩に亀裂が入る。
鉄甲車が後退すると工兵が取りつく。
亀裂を広げ、発破を仕掛ける。
爆炎と轟音とともに、仮称ベヒモスの岩鎧がふきとんだ。
「吶喊!」
鉄甲車が騎爆槍を突きいれる。
後部扉から、魔馬と騎士たちが脱出する。
直後、鉄甲車に満載した爆薬が炸裂する。
仮称ベヒモスの血と毒が降りそそぐ。
「抜刀!」
騎士たちは騎兵刀を抜いた。
腹部を切り裂き、毒嚢を潰し、心臓を穿つ作戦である。ふたつあるとされる心臓のすくなくとも片方を破壊する。
「知恵捨!」
叫び、騎士たちは上段に構えた騎兵刀を遮二無二振りおろす。
万能薬がなければ玉砕必至、必死必殺の戦法であった。
だが、いまや空に天女が舞っている。
騎士たちは血と毒にまみれ、身体を灼かれ、激痛にさいなまれながらも、仮称ベヒモスの体内を斬りすすんでいった。
◆◆◆
六機の牽引気球が聖都グンルーンに浮かんでいる。それぞれに四名の天女が乗っている。
枢機卿イザヴェル・ウルヴァリエルが吠える。
「細胞を組め! 貴様ら天女は死兵である! 七度死して復活し、女神様に報恩せい!」
この世界の航空戦力は物理防御をほとんど持たない。龍でさえ噴進弾の飽和攻撃を防ぐことができない。
結成されたばかりの天女隊は、仮称ベヒモスの石弾はともかく、跨乗兵の銃撃は避けられまい。
降下天女は斬新な方法でこの問題を解決する。
銃で撃たれたら万能薬で癒せば良いじゃない。
狂気である。
しかし、天女に任じられた巫女たちが狂信者でないわけがなかった。
二十四名の降下天女が気球から飛び立った。
彼女たちは魔道具で滑空し、決戦場上空に侵入した。
◆◆◆
アンジェ・クオンと六人の火縄銃兵は帝国軍の臼砲と行動をともにしている。
仮称ベヒモスに跨乗するアンダカーラ教団の兵の頭を抑えるのが目的である。仮称ベヒモスに打撃を与えるには火力不足だった。だからこそ、鉄騎小隊と歩兵たちが突撃しなければならなかったともいえる。
「どんどん撃っちゃって」
アンジェは仮称ベヒモスの上で動きまわる人影を狙撃するように命じた。
鉄州の火縄銃兵には秘伝がある。
火縄銃と言い条、火縄はない。引き金もない。
火魔術で撃発するからである。
銃身と銃床だけがある。
前装式である。黒色火薬を基本として独自に調合した火薬を用いる。
弾丸も特殊だ。
火縄銃よりも抱え筒と呼ぶほうが適当かもしれない。
しかし、彼らは火縄銃兵なのだった。
銃を構える。
火魔術による燃焼速度の制御が秘伝である。
爆轟を生じない。
発煙量が少ない。
すべて狙撃精度を安定させるための方策である。
「《転校生》は撃っちゃだめだからね」
人相書きは配ってある。セーラー服と学ランで判別を行う手筈だ。
まだ、《転校生》と直接対決するわけにはいかない。
「マム、イエス、マム」
仮称ベヒモスの背中から兵が転がり落ちた。
「ナイスショット。ボーナス出すわよ」
アンジェは商売人らしく言った。
アンダカーラ教団が造りあげた決戦合成獣。
多脚を備えた岩山と形容するべき生物兵器である。いわば、移動する要塞である。
体内で鴆毒を生成し、石弾にて射出する。
カルシウム化合物を弾殻として十キログラムの鴆毒液が封入されている。着弾すると破裂して気化し、周囲一帯の土壌を汚染する。
万能薬で毒を無効化できれば、たいした兵器ではない。
亜音速で射出される十キログラムの弾体。
最大射程は魔術を併用しても二里、有効射程は半里がせいぜいだろう。
まじめに戦争してほしいものだ。
カロル・ダルヴァロス少佐は指揮壕から兵たちの前進を眺めながら考える。
仮称ベヒモスを移動要塞として運用するならば、まともな砲を備えていてしかるべきだ。移動可能で強固に防御された重砲陣地。
いうなれば、陸上戦艦。
少佐は知らなかった。
まさにそのような存在が、地中を潜航しているという事実を。
《合衆国》東インド艦隊旗艦。
原子力戦列艦エンタープライズ。
しかし、その地上出現はまだすこし先のはなしである。
聖都最終防衛中隊は四台の鉄甲車を鏃とする鋒矢の陣を敷いた。
矢柄部分に位置する歩兵は盾兵と工兵が主である。盾兵は巨大な盾を構えて前進する。仮称ベヒモスに搭乗した兵の銃撃を防ぐためである。
オーソドックスな攻城戦だ。
カロル・ダルヴァロス少佐は常識的な作戦を好む。そうでなければ、治安維持部隊の現場指揮官など務まらない。
防衛側が攻城戦を仕掛けているところにおもしろみを感じないではなかった。
鉄甲車が二百間の距離に迫った。
およそ四百メートル。
身体強化上手の古強者どもにとって、二百間は指呼の距離である。
中隊主力は鉄騎小隊を先頭に突撃にうつった。
鬨の声をあげ、大楯を構えた盾兵が、円匙や鶴嘴を手にした工兵が躍進する。
鉄甲車が速度をあげる。
全周を鉄板で囲んだ装甲馬車と言うべき兵器だった。これを攻城兵器として運用する。
鉄甲車の前面に衝角が備えられている。
ただの衝角ではない。
騎爆槍である。
さらに、めいっぱい爆薬を積んでいる。
四台の鉄甲車が仮称ベヒモスの右半身に攻撃を指向する。岩に亀裂が入る。
鉄甲車が後退すると工兵が取りつく。
亀裂を広げ、発破を仕掛ける。
爆炎と轟音とともに、仮称ベヒモスの岩鎧がふきとんだ。
「吶喊!」
鉄甲車が騎爆槍を突きいれる。
後部扉から、魔馬と騎士たちが脱出する。
直後、鉄甲車に満載した爆薬が炸裂する。
仮称ベヒモスの血と毒が降りそそぐ。
「抜刀!」
騎士たちは騎兵刀を抜いた。
腹部を切り裂き、毒嚢を潰し、心臓を穿つ作戦である。ふたつあるとされる心臓のすくなくとも片方を破壊する。
「知恵捨!」
叫び、騎士たちは上段に構えた騎兵刀を遮二無二振りおろす。
万能薬がなければ玉砕必至、必死必殺の戦法であった。
だが、いまや空に天女が舞っている。
騎士たちは血と毒にまみれ、身体を灼かれ、激痛にさいなまれながらも、仮称ベヒモスの体内を斬りすすんでいった。
◆◆◆
六機の牽引気球が聖都グンルーンに浮かんでいる。それぞれに四名の天女が乗っている。
枢機卿イザヴェル・ウルヴァリエルが吠える。
「細胞を組め! 貴様ら天女は死兵である! 七度死して復活し、女神様に報恩せい!」
この世界の航空戦力は物理防御をほとんど持たない。龍でさえ噴進弾の飽和攻撃を防ぐことができない。
結成されたばかりの天女隊は、仮称ベヒモスの石弾はともかく、跨乗兵の銃撃は避けられまい。
降下天女は斬新な方法でこの問題を解決する。
銃で撃たれたら万能薬で癒せば良いじゃない。
狂気である。
しかし、天女に任じられた巫女たちが狂信者でないわけがなかった。
二十四名の降下天女が気球から飛び立った。
彼女たちは魔道具で滑空し、決戦場上空に侵入した。
◆◆◆
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仮称ベヒモスに跨乗するアンダカーラ教団の兵の頭を抑えるのが目的である。仮称ベヒモスに打撃を与えるには火力不足だった。だからこそ、鉄騎小隊と歩兵たちが突撃しなければならなかったともいえる。
「どんどん撃っちゃって」
アンジェは仮称ベヒモスの上で動きまわる人影を狙撃するように命じた。
鉄州の火縄銃兵には秘伝がある。
火縄銃と言い条、火縄はない。引き金もない。
火魔術で撃発するからである。
銃身と銃床だけがある。
前装式である。黒色火薬を基本として独自に調合した火薬を用いる。
弾丸も特殊だ。
火縄銃よりも抱え筒と呼ぶほうが適当かもしれない。
しかし、彼らは火縄銃兵なのだった。
銃を構える。
火魔術による燃焼速度の制御が秘伝である。
爆轟を生じない。
発煙量が少ない。
すべて狙撃精度を安定させるための方策である。
「《転校生》は撃っちゃだめだからね」
人相書きは配ってある。セーラー服と学ランで判別を行う手筈だ。
まだ、《転校生》と直接対決するわけにはいかない。
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