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しおりを挟むある日、天使軍の監視下のもと地球政府総会議が開かれた。そこで下された決定はこうだ。“日本国は天使族を癒し、天使族へ休息の場を与えよ”。なぜ我が国なのか。天使族の美的感覚は人類とは異なるようで、『この地球において最も美しいのはニッポンジン』と口を揃えたからだ。
繰り返すが天使族は宇宙最高峰の戦闘力を持つ。そんな彼らに刃向かえばどうなるのか馬鹿でも分かるだろう。天使族のご機嫌取りとして、我が国は地球政府の命令に従い、天使族を癒すこととなった。
“癒し”というのは広義である。
「アンズ……」
「んぅっぁあ…」
「アンズぅ、もっとキツく締めてぇ…」
「はぁっぁあ…っ」
「あぁ~、そうっ、僕のを搾り取って?僕の子種欲しいでしょ?」
体の最奥がじくじく熱い。与えられるすべての刺激が快感へと変わっていた。もう何度絶頂を迎えたのだろうか。下から突き上げる快楽が止まらない。鼓膜を揺らすのは淫音だ。
「ほ~ら、アンズ、もっと腰振って」
「ぁん…んぅっ」
天井、壁、床、全てが純白の大理石で造られた空間。此処は人類が天使族を癒す聖なる場所だ。何千年も前に建てられた此処は“シンデン”という名前で呼ばれてたらしい。
「…可愛い。僕が支えてないと腰砕けちゃいそう」
「ト、トワぁ…もう…やだぁ…」
広い空間の中央には豪華な天蓋付きベッドが置かれている。壁は美しい彫刻と厳かな宗教画で装飾されている。そんな禁欲的な空間で、ぐちゅんぐちゅんと粘液が絡み合う音が響いていた。
「っ、アンズもう限界?…ぁあっ、僕のを搾り取ろうとすっっごく締まってる…っ」
「トワぁ…」
「はあっ…もうかわいすぎ………。アンズ…好きだよ…好き好き好き……ねえもっと腰振って……僕を求めてよ」
「トワぁあ…、ぁ、もう、だめ…ぇ、え、え」
俺はこの美しい天使に犯されてる。狂ったように。毎日、毎日、天使の性器を挿入されているのだ。そう、挿入されている。天使族は人間の男も孕ませることができるらしい。俺の体は天使族の子を孕むよう作り変えられていた。
「ぁあ、ぁぁ」
トワは軍服を着たままだ。ズボンの前を寛げて陰茎を露わにしているだけ。殆ど乱れてない。しかし俺の格好はぐちゃぐちゃだった。ズボンと下着は脱がされていたが、裸というわけでもない。上半身に纏う黒の軍服はボタンだけ外され、中途半端に乱れていた。下から突き上げられる振動で、それが肩から落ちて、腰のあたりで留まる。胸元が露わになったとき、トワの少し筋張った長い指が俺の乳首を弾く。「んぁっ」と腰を大きく痙攣させれば、衣擦れの音がやけに大きく聞こえた。
「ふふ。アンズは乳首が弱いね。でもぷっくり尖らせて『もっと触って』っておねだりしてる。堪らないな」
「ぁ、あ、乳首、ゃだ…ぁ」
俺はトワの上に跨り、彼の肉棒を尻の孔で咥え込んでいた。もっと奥に、もっと奥に、と腰を揺らす。もはや自分の意思で動いてるのか、操作されてるのか、分からない。ただひたすらに快楽を貪ることしか考えられない。もっと刺激が欲しい。空いた手で自身の性器を擦る。先端から溢れた汁はぬちゅぬちゅと泡立ち、指の間に流れた。
「ああ…、アンズ…、自分で触っちゃうの?…可愛い…」
うっとりとトワは目を細める。絶景を眺めるかのような瞳だ。俺の体を抱き締めるように、上体を起こして、耳元で囁いた。
「…可愛すぎて狂いそう」
途端、ずちゅッ、と最奥を突き上げられた。「あァっ…」と背を仰け反らせる。気持ち良いッ。びゅくびゅくと自身の肉棒の先端から精液が溢れ出る。
「ねえ僕のこと好き?」
「…ぅ…ああ、ああぁ」
「好きって言って」
「す、すきぃ…すき…!」
「もっと」
「すきぃ、すきっ、すきぃっ…!」
ばちゅんばちゅんという淫音と喘ぎ声が激しさを増す。
ナカにある肉棒がどくどくと太さを増した。天使族の性器は人類のものと少し異なる。先端に細い触手のようなものがついているのだ。それがウネウネと動き、前立腺を刺激する。
「い、イった…ばかり…だからぁ」
「ダメ。まだイかせる。アンズの可愛い姿を堪能させて」
「んぅぁぁ…」
「浮気したお仕置きだよ。あと100回以上はやろうね」
「…ひっ…ぃ」
小さく悲鳴を上げた。その声が不満だったのか、トワはぴくりと片眉を上げた。
「アンズが僕を拒むのなら、東のニンゲンを皆殺しにするよ?」
「…ぇ、っ…?」
「アンズは“昔の恋人のキーホルダーを大切に身に付けるくらい”優しいからそんな事しないよね?」
ニッコリと、トワはそう言った。
「…そ、そういうの…やめろ、ぉ…」
俺は目に涙を浮かべた。
天使族には天使族の価値観や倫理観がある。だから人間の常識から外れたことを言う。それは仕方がないことだ。しかし俺は命を軽視する発言は苦手だ。特にトワはよくこういう事を言う。『俺が目を合わせなかったから』『俺が素っ気なかったから』『俺が他人に触れてたから』と、些細な理由で人を殺す。さっきだってそうだ。
「アンズは立派だよ。東のニンゲンの生命を守ってるんだ」
「…ふんぅ、んぁ」
「この可愛いお尻でね」
ゆっくりと優しく尻を揉まれた。腰がびくびく跳ねる。その反応が気に入ったのか、「ふふ」と耳に熱い息がかかり、ねっとりと舌が這う。耳や首筋を舐められて、その感覚にぞわぞわと肌が粟立った。
「んうっ」
「アンズ……僕の可愛い人…」
「はぁっあっ…」
「アンズを狙ってた天使は全員殺してきたし、これからも殺す……だから安心してね……」
「ぁ…う…っ…?」
瞳の色は琥珀色だ。熱く蕩けている。
「僕たちはそういう生命体だ。繁殖能力は高いけど、生き残る天使はごく僅か。番の為に殺し合うか、番に選ばれなかった天使は自ら死ぬ……。番に身も心も捧げるくらいだ。気持ちが重いんだ」
「ンんんっ」
「勿論、僕も例外じゃないよ」
どちゅどちゅどちゅと奥を突き続け、器用にも喋りながら口付けを繰り返す。
俺は酸素を求めることしかできない。僅かな隙間も許さないほどに立て続けに唇が重なる。トワの胸を叩く。このままでは酸欠になりそうだ。しかし胸を叩き続けても、なかなか唇を解放してくれない。思わずギッと目を尖らせた。
するとトワは眉を上げる。そして“やれやれ”と言わんばかりに、くちゅ…とわざとらしく音を立て、唇を離した。その振る舞いは、恋人の我儘に仕方なく付き合うような感じで、“キスを止めるのは不本意だ”といった様子だった。
俺は息を整えながら口を開いた。
「トワ…ッ、何の話…っ」
胸を押すが、腰にまわった手に引き寄せられる。トワは銀色の糸を舌で掬ってから、優雅に微笑んだ。
「僕が東空統括官になったのはアンズを手に入れる為だってこと。アンズが手に入った今、東のニンゲンのことなんてどうでもいいんだ」
「なっ、なんてことを…っ言うんだッ…」
「僕はアンズに一目惚れした。ニッポンジンは皆美しいけど、アンズは別格。その細い目も低い鼻も、茶ばんだ肌も…なんて美しいのだろう……永遠に眺めていたいよ…」
「……」
いや貶してるだろう、と俺はジトリと眉を寄せた。天使族の美的感覚は本当に人類とは別物のようだ。日本人が美しいことはまあ分かる。美人はそれなりにいる。しかし俺を別格だと言うのは絶対に違う。
はっきり言おう。俺は不細工だ。
容姿になんか気を遣ったことがない。ボサボサの短い黒髪に、陽に焼けたボロボロの肌。スタイルも悪い。筋肉がつきにくいからヒョロガリだ。俺の唯一の長所といえば飛行技術くらいか。飛行士としてはそれなりに実績がある。先の天使軍との乱では、大敗を刻むことになったが、俺は天使軍に認められて飛行指導官という役目を仰せつかった。飛行は俺の人生だ。それだけを磨くことに人生を捧げてきた。
芋臭くて不細工でもいい。飛ぶことができるのなら、俺は満たされる。
「ああ、そうだ。せっかくだから、アンズがもっと興奮するところで交尾しようか?」
「ぅえっ…ぇえ?」
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